
はじめに
畑のうねが、黒いビニールでおおわれているのを見たことはありませんか。
あれは「マルチング」といって、土の表面をおおうことで作物を育てやすくする技術です。
中学技術の生物育成では、実習でも定期テストでもよく取り上げられます。
ただ、「マルチングの効果は?」と聞かれると、保温と保水と雑草防止の三つがごちゃまぜになりやすいんですよね。
さらに、黒や透明や白といった色のちがい、張り方の手順、必要な長さの計算まで出てくるので、整理しないまま覚えようとすると、テスト前に混乱してしまいます。
この記事では、マルチングの効果を三つに分けて、なぜそうなるのかというしくみから説明します。
そのうえで、資材の種類と色の使い分け、張り方、計算問題までを順番にたどります。
理由とセットで覚えれば、丸暗記しなくても答えられるようになりますよ。
- マルチングの三つの効果:保温・保水・雑草防止が、それぞれどんなしくみで起こるのか。
- 資材と色の使い分け:ポリマルチ・敷きわら・生分解性の特徴と、黒・透明・白の選び方。
- 張り方と計算:失敗しない張り方の手順と、必要なマルチの長さの求め方。
マルチングの全体像
マルチングとは、土の表面をマルチ資材でおおう技術のことです。
むき出しの土は、日が当たると乾き、雨が降ると泥がはね、すき間には雑草が生え、夜になると冷えてしまいます。
こうした困りごとを、土をおおうだけでまとめて減らせるのが、マルチングの強みなんです。
この記事では、次の三つの柱で整理していきます。
- 効果は三つ:保温で地温を上げ、保水で乾きを防ぎ、雑草防止で草取りの手間を減らします。
- 資材と色を選ぶ:目的と季節に合わせて、ポリマルチ・敷きわら、黒・透明・白を使い分けます。
- 張り方を守る:整地と水やりを先に済ませ、ぴんと張って端を土に埋めて固定します。
ポイント1:保温と保水で根を守る(マルチングの効果)
まずは、マルチングの効果のうち、根を守る二つを見ていきます。
地面の中は目に見えないので、つい気にしなくなりがちですが、根は温度と水分にとても敏感です。
マルチは、その二つを安定させる働きをしてくれます。
保温と保水のポイントを紹介します
保温:地温が上がると発芽と根の生長が進む
マルチングの一つ目の効果は保温です。
マルチ資材で土の表面をおおうと、昼間に日光で温まった土の熱が空気中へ逃げにくくなり、地温が数度高くなります。
種の発芽も根の生長も、温度が低いと進みにくいものです。
そのため、まだ冷える春先の定植では、マルチを張った畑のほうが苗の根づきがよくなるんです。
地温が上がることで、植えた苗が動き出すまでの時間も短くなります。
とくに、定植したばかりの苗は根が弱いので、土が冷たいままだと生長が止まったように見えてしまいます。
地温を保つことは、苗の最初の一歩を助けることでもあります。
保温の効果は、昼間の温度を上げるだけではありません。
夜になると地面は空へ向かって熱を逃がしますが、マルチがあるとその逃げ方がゆるやかになります。
昼と夜の地温の差が小さくなると、根が落ち着いて育つので、急な冷え込みで苗が弱る失敗も減らせます。
テストでは「保温」と「地温を上げる」をセットで覚えておくと安心です。
保水:土の乾きを防いで水やりの回数が減る
二つ目の効果は保水です。
むき出しの土は、日が当たるたびに表面から水が蒸発して、少しずつ乾いていきます。
マルチ資材でおおうと、水が空気中へ逃げる道がふさがれて、土の湿り気が長持ちします。
土が乾きにくくなる分、水やりの回数を減らすことができて、世話の手間も軽くなるんですよ。
水を与えるタイミングを逃して根を傷めてしまう失敗も、少なくなります。
とくに、夏の強い日ざしが続く時期は、土の表面がすぐに白く乾いてしまいます。
マルチでおおっておけば、根のまわりの湿り気が保たれて安心です。
ここで気をつけたいのは、マルチを張れば水やりが不要になるわけではない、という点です。
水は資材のすき間や植え穴から入るため、雨が少ない時期には、株元に向けて水を与える必要があります。
土の湿り具合は、ときどき指で少し掘って確かめましょう。
水を与えすぎると根が酸素不足になるので、表面だけでなく、中の湿り気を見るのがコツです。
泥はね防止と土の固まり防止で病気も予防
保水と並んで覚えたいのが、土を守る効果です。
雨や水やりの水が直接土に当たると、泥がはねて下の葉や実についてしまいます。
泥には病原菌がふくまれていることがあり、そこから病気が広がる原因になります。
マルチでおおっておけば、水が土に直接当たらないので泥はねが減り、病気の予防にもつながるんです。
収穫する実が泥でよごれにくくなるのも、うれしい点ですね。
イチゴのように、実が土の近くにつく作物では、とくに効果を感じやすいでしょう。
葉や実をきれいに保つことは、見た目だけでなく、病気を防ぐ意味でも大切です。
もう一つ、雨の力で土の表面が固まるのも防げます。
土がかたく締まると、すき間が減って空気が通らなくなり、根が呼吸しにくくなります。
また、強い雨で肥料の成分が流れ出てしまうのも抑えられます。
やわらかく、肥料がしっかり残った土が保たれるので、作物が元気に育ちやすくなるのです。
こうして見ると、マルチは土にかけるふとんのような役目を果たしているんですね。
ポイント2:雑草防止とマルチ資材・色の選び方
続いて、三つ目の効果である雑草防止と、資材や色の選び方です。
ここは、テストで「どれを選ぶか」を問われやすい部分です。
効果のしくみとつなげて理解しておくと、選択問題でも迷いません。
雑草防止と資材・色の選び方のポイントを紹介します
雑草防止:光をさえぎると草が生えにくい
三つ目の効果は雑草防止です。
雑草の種は、土の中で光を受けると芽を出すものが多く、光をさえぎれば発芽しにくくなります。
黒いマルチ資材は光をほとんど通さないので、おおわれた部分には雑草が育ちにくいんです。
草取りの手間が大きく減るだけでなく、雑草に水や養分を取られることもなくなり、作物が育ちやすくなります。
暑い季節の草取りは重労働なので、助かる効果ですね。
雑草は成長が早く、放っておくと作物より背が高くなってしまうこともあります。
はじめから生えにくい環境をつくっておくことが、いちばん楽な対策です。
ただし、雑草がまったく出なくなるわけではありません。
苗を植える穴のまわりは土が見えているため、そこから草が顔を出します。
また、透明なマルチは光を通すので、下で雑草がよく育ってしまいます。
植え穴のまわりの草は、小さいうちに手で抜いておきましょう。
実習のときは、穴の大きさを苗に合わせて小さめにあけることも、草を減らす工夫になります。
ポリマルチ・敷きわら・生分解性マルチの特徴
マルチ資材には、いくつかの種類があります。
最も広く使われているのは、ポリエチレンなどでできたビニールの膜、ポリマルチです。
安くて軽く、広い面積にすばやく張れるうえ、保温も保水も雑草防止もしっかりできます。
そのほかに、わらや枯れ草を土の上に敷きつめる敷きわらがあります。
敷きわらは身近な材料でできて、夏の暑さをやわらげたり、土をふかふかに保ったりするのが得意です。
また、わらは時間がたつと分解して、土の栄養にもなります。
どちらも一長一短があるので、育てる作物や季節、畑の広さに合わせて選ぶことになります。
ポリマルチの弱点は、収穫が終わったあとに、はがして処分する手間がかかることです。
土の中に破片が残らないよう、きちんと片づける必要があります。
この手間を減らすために作られたのが、生分解性マルチです。
土の中の微生物が分解してくれるので、はがさずにすき込めますが、値段が高めで、分解の速さにも差があります。
資材は、費用や手間、環境への影響を比べて選ぶのがポイントです。
黒・透明・白(銀)の色の使い分け
マルチは、色によって得意なことが変わります。
黒は、日光を受けて地温を上げながら、光をさえぎって雑草も抑えられるので、最も使いやすい色です。
透明は、光を通すぶん地温がいちばんよく上がりますが、雑草も育ってしまうため、雑草対策が別に必要になります。
白や銀色は、光を反射するので地温が上がりすぎず、銀色には虫を寄せにくくする働きもあります。
目的に合わせて色を選ぶことが、使い分けの基本です。
テストでは、色の名前と、その色の得意なことを結びつける問題がよく出ます。
黒・透明・白の三つを、特徴とセットで言えるようにしておきましょう。
季節によっても選び方が変わります。
まだ寒い春先は、地温を上げたいので黒がよく使われます。
反対に真夏は、地温が高くなりすぎて根が弱るため、白い面を上にした白黒のマルチや、敷きわらで温度を抑えます。
白黒のマルチは、白い面で光を反射し、黒い面で雑草を抑える二層の作りになっています。
マルチは温めるだけの道具ではない、という点も覚えておいてください。
ポイント3:マルチの張り方と必要な長さの計算
最後は、実習で役に立つ張り方と、テストに出やすい計算です。
効果を知っていても、張り方が雑だと保温も保水も弱くなってしまいます。
手順の理由まで理解しておくと、作業中に迷いません。
張り方と計算のポイントを紹介します
張り方は4つの手順で進める
張り方の手順は四つです。
まず、うねの土を平らに整え、土が乾いていたら先にしっかり水を与えます。
マルチを張ったあとでは、水が土にしみこみにくいからです。
次に、マルチをうねの上にかぶせて、ぴんと張ります。
それから、両側と両端を土に埋めて固定し、最後に苗を植える位置に穴をあけます。
この順番を守るだけで、仕上がりも作業のしやすさも大きく変わります。
順番を入れかえてしまうと、あとからやり直しになることが多いので、手順は声に出して確認しながら進めましょう。
順番には、それぞれ理由があります。
手順の中で特に大切なのは、整地と水やりを先に済ませることです。
うねの表面にでこぼこや大きな土のかたまりがあると、マルチが浮いてすき間ができ、風でめくれやすくなります。
二人一組で作業すると、片方が引っ張り、もう片方が土をかけられるので、きれいに張れます。
実習では、引っ張る人と土をかける人の役割を先に決めておくと、作業がスムーズに進みます。
失敗しやすい点:たるみ・端の固定・植え穴
張るときの失敗で多いのは、たるみです。
マルチがたるんでいると、風を受けて大きくばたつき、めくれたりやぶれたりします。
風がマルチの下に入りこむと、土が温まる保温の効果も弱まってしまいます。
ぴんと張ることに加えて、端を土にしっかり埋めて固定することが、めくれを防ぐ決め手です。
端の土は、足で踏み固めるか、手で押さえて、すき間を作らないようにしましょう。
端が浮いていると、そこから風が入って、マルチ全体がはがれてしまうことがあります。
固定は、地味ですが張り方の中でいちばん大切な作業です。
植え穴のあけ方にも注意が必要です。
穴が大きすぎると、そこから土の熱や水分が逃げ、雑草も出やすくなります。
苗の根元がちょうど通る程度の、小さめの穴にしておきましょう。
また、穴のふちに苗の葉が触れると、日ざしで熱くなった資材で葉が傷むことがあります。
苗を植えたら、穴のまわりに土を寄せて、すき間をふさいでおくと安心です。
必要なマルチの長さを求める計算(例題)
テストや実習で出やすいのが、必要な長さの計算です。
例題です。長さ6メートルのうねにマルチを張り、両端を30センチずつ土に埋めて固定します。
このとき、必要なマルチの長さは何メートルでしょう。
考え方は、うねの長さに、埋める分を両端の2か所ぶん足すだけです。
単位をそろえるため、30センチは0.3メートルに直します。
式は6+0.3+0.3で、答えは6.6メートルです。
この形の問題は、数字が変わっても考え方は同じです。
埋める長さが両端で40センチずつなら、6+0.4+0.4で6.8メートルになります。
計算のコツは、単位をそろえてから足すことです。
センチのままメートルに足してしまう間違いが、とても多いので気をつけましょう。
また、うねの長さぴったりのマルチでは、端を埋めて固定できません。
必ず、埋める分の余りを見込んでおくことが大切です。
幅についても、うねの幅に両側の埋め込み分を加えて、少し余裕のあるものを選びます。
テスト前の確認リスト
ここまでの内容を、テスト前に見直せる形でまとめます。
マルチングの問題は、効果の名前を書かせるもの、色の使い分けを選ばせるもの、必要な長さを計算させるものが中心です。
一つずつ、声に出して言えるかどうかを確かめていきましょう。
答えにつまった項目があれば、その部分の説明をもう一度読み返してください。
理由まで言えるようになっていれば、問い方が変わっても対応できます。
- 効果は三つ。保温は地温を上げ、保水は蒸発を防ぎ、雑草防止は光をさえぎることで草を抑える。
- 泥はねを防ぐと病気の予防になり、雨による土の固まりや肥料の流出も抑えられる。
- 黒は保温と雑草防止、透明は保温はできるが雑草も育つ、白や銀は地温の上げすぎを防ぐ。
- 張り方の順番は、整地と水やり、ぴんと張る、端を埋めて固定、植え穴をあける。
- 必要な長さは、うねの長さに両端の埋め込み分を足す。センチはメートルに直してから計算する。
よくある質問
マルチはいつ張ればよいですか
結論から言うと、苗を植える前に張るのが基本です。
先に張っておくと、日光で地温が上がり、植えた苗がすぐに根を張りやすくなります。
目安としては、定植の数日前から一週間ほど前に張ると、土が温まっていて安心です。
ただし、先に土を整えて水を与えておくことを忘れないでください。
張ってから植え穴をあけて苗を植える順番が、実習でも基本になります。
土が冷えている時期ほど、早めに張って土を温めておく効果が大きくなります。
反対に、地温が高い真夏に張るときは、植える直前でもかまいません。
黒マルチと透明マルチはどちらを選べばよいですか
迷ったときは、黒を選べば間違いありません。
黒は保温の効果があり、光をさえぎって雑草も抑えられるので、ほとんどの場面で使いやすいからです。
透明は地温を最も上げられるため、寒い時期に地温を確保したい場合などに使われますが、雑草が下で育つ欠点があります。
テストでは、黒は雑草防止に強い、と答えられれば十分です。
目的が保温だけなのか、雑草も抑えたいのかを先に考えて選びましょう。
季節も判断の材料になります。
夏の暑い時期には、黒だと地温が上がりすぎることがあるので、白黒のマルチや敷きわらも候補になります。
マルチを張ると水やりはしなくてよいですか
いいえ、水やりは必要です。
マルチは水の蒸発を防いで湿り気を長持ちさせるだけで、雨や水やりの水が資材の下まで届かない場合は、土が乾いてしまいます。
ですから、水やりの回数が減るのであって、ゼロになるわけではありません。
植え穴の根元に向けて水を与え、ときどき土を少し掘って、湿り具合を確かめましょう。
とくに苗を植えた直後は、たっぷりの水を忘れずに与えてください。
根がまだ土になじんでいない時期は、乾きの影響を受けやすいからです。
マルチの上から水をかけても下に届きにくいので、植え穴の根元をねらいましょう。
おわりに
マルチングの効果は、保温、保水、雑草防止の三つです。
さらに、泥はねを防いで病気を予防し、土の固まりや肥料の流出も抑えてくれます。
色は、黒が最も使いやすく、白や敷きわらは夏向きです。
張るときは、整地と水やりを先に済ませ、ぴんと張って端を土に埋める。
効果は理由とセットで覚えることが、テストでも実習でも一番の近道です。
実習では、うねに触れて地温のちがいを感じたり、マルチの下の湿り気を確かめたりしてみてください。
体で感じたことは、テストの場面でも思い出しやすいものです。
応援しています。
ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。








