
はじめに
技術の授業でエネルギー変換の単元を教えていると、「モーターの回転が、なぜ機械の色々な動きに変わるのか」というところで止まってしまう生徒、よく見かけませんか。
歯車やベルトで速さや向きを伝える仕組みは学んだけれど、回転をまっすぐな動きや、行ったり来たりする動きに変える仕組みは、また別の考え方が必要になるんですよね。
実はその答えが、リンク機構と呼ばれる、棒と継ぎ目を組み合わせた仕組みなんです。
ミシンの針の上下運動も、車のワイパーの動きも、折りたたみ傘の骨組みも、すべてこのリンク機構の応用でできています。
今回は、クランク機構とカム機構という2つの代表的な仕組みを中心に、回転運動が別の動きへ変わっていく様子を、身近な例と一緒に整理していきます。
運動変換の3つの動き
機械の動きは、大きく分けると3つのパターンに整理できます。
くるくると回り続ける回転運動、まっすぐ行ったり来たりする往復運動、そして支点を中心にゆらゆらと振れる揺動運動です。
モーターがつくるのは基本的に回転運動ですが、実際に使いたい動きはそれぞれ違いますよね。
だからこそ、リンク機構やカム機構を使って、必要な動きへと変換する工夫が生まれたんです。
- 回転運動:軸を中心に、くるくると回り続ける動き。
- 往復運動:まっすぐな方向に、行ったり来たりする動き。
- 揺動運動:支点を中心に、決まった範囲でゆらゆらと振れる動き。
ポイント1:クランク機構のしくみ
クランク機構は、回転運動を一定のリズムの往復運動に変える、もっとも基本的な仕組みのひとつです。
軸を中心にした棒がぐるりと回転するだけで、別の部分がまっすぐ前後に動くようになるんですよ。
クランク機構のポイントを紹介します
クランク機構とは何か
クランク機構は、軸を中心にした棒をぐるりと回転させることで、その動きを別の部分へ伝える仕組みです。
歯車やベルトが回転の速さや向きを変えるのに対して、クランク機構は回転運動そのものを、まったく別の種類の動きへと変えてしまう点が大きな違いなんですよ。
自転車のペダルを踏む動きをイメージすると分かりやすく、足の上下運動が、クランクを通してタイヤの回転運動に変わっているんです。
授業で模型を回してみると、生徒自身の手で動きが変わる瞬間を実感できるので、理解がぐっと深まりますよ。
- クランク機構:回転運動を一定のリズムの往復運動に変える仕組み。
- スライダクランク:連結棒とすべる部品で直線的な往復運動に変換する構造。
- 身近な例:ミシンの針や手回し発電機のハンドルに使われている。
スライダクランク機構で直線運動に
クランクに連結棒とすべる部品を組み合わせたものを、スライダクランク機構と呼びます。
軸を中心に回転する棒の動きが連結棒を通じて伝わり、すべる部品がまっすぐな往復運動をするようになるんです。
この仕組みは、回転運動を直線的な往復運動へきれいに変換できるため、エンジンのピストンやポンプ、圧縮機など、様々な機械の心臓部で欠かせない役割を果たしています。
写真のように、クランクの回転がまっすぐな動きへ変わっていく様子を模型で確認すると、力の伝わり方が目で見えるので、生徒にもとても伝わりやすい単元なんですよ。
クランク機構の身近な例
クランク機構は、教室のすぐそばにある道具の中にもたくさん隠れています。
ミシンの針が上下に動くのも、クランク機構によって回転運動が往復運動へ変換されているからなんですよ。
手回し発電機のハンドルをぐるぐる回す動きも、内部の軸を回転させることでモーターを発電機として働かせる仕組みにつながっています。
昔ながらの井戸のポンプや、手動の洗濯機の脱水ハンドルにも、同じ考え方が使われているんですよ。
身の回りの製品を分解して考えるだけでも、クランク機構がどれほど活躍しているかが見えてきますよ。
授業で紹介するときは、身の回りにある似た仕組みを生徒自身に探してもらうと、クランク機構への理解がぐっと深まりますよ。
ポイント2:カム機構のしくみ
カム機構は、形の変わった板や部品を回転させることで、クランクよりも自由で複雑な動きを作り出せる仕組みです。
カムの形さえ変えれば、同じ回転運動から、まったく違うリズムの動きを生み出せるのが最大の特徴なんですよ。
カム機構のポイントを紹介します
カムとフォロワの関係
カム機構では、形の変わった板や部品をカム、そのカムに合わせて上下に動く部品をフォロワと呼びます。
カムが回転すると、フォロワはカムの表面の形をなぞるように押し上げられたり、下がったりするんです。
クランク機構が一定のリズムで動くのに対して、カム機構は形しだいで動きのタイミングや大きさを自由に設計できるところが大きな魅力なんですよ。
主動節であるカムと、従動節であるフォロワという役割の違いを意識すると、複雑に見える機構もぐっと理解しやすくなります。
授業では、実際にカムを手で回しながらフォロワの動きを観察すると、形と動きのつながりが直感的に理解できます。
- カム:決まった形の板や部品を回転させる主動節。
- フォロワ:カムの形に合わせて上下に動く従動節。
- 動きの自由度:形を変えるだけで動きのリズムが変わる。
カムの形と動きの関係
カムの形は、そのままフォロワの動きの大きさやタイミングに直結します。
出っぱりが大きいカムほど、フォロワは大きく押し上げられ、出っぱりがゆるやかであれば、フォロワの動きもゆっくりとなだらかになるんです。
カムの形を工夫すれば、動きを止めておく時間を作ったり、ゆっくり動かしてから急に押し上げたりと、細かい動きの設計も可能になるんですよ。
写真のように、カムの軸が回転することでフォロワが押し上げられる瞬間を見ると、形の設計がそのまま機械の動きの個性になることがよく分かります。
同じ回転でも、カムの形を変えるだけでまったく違う動きが作れるのは設計の面白さです。
カム機構の身近な例
自動車のエンジンには、バルブを決まったタイミングで開け閉めするために、カムを使った仕組みが組み込まれています。
自動ドアがスムーズに開閉する動きや、昔ながらのおもちゃに入っている独特な動きの仕組みにも、カムが活躍しているんですよ。
プリンターの給紙ローラーや、自動巻き取り式の機械にもカムのしくみが応用されています。
複雑な動きを一つの部品の形だけで再現できるため、限られたスペースでも工夫しやすい仕組みとして、様々な機械に取り入れられています。
身近な機械を思い浮かべながら探してみると、意外なところにカムが見つかるかもしれませんね。
カム機構は自由度が高い分、形の設計や加工の精度がそのまま動きの正確さに直結する仕組みでもあります。
模型のカムと実際の動きを見比べながら、どんな形にすればどんな動きになるかを考えてみると、より深い理解につながりますよ。
ポイント3:リンク機構の身近な使用例
クランク機構やカム機構のほかにも、リンク機構には向きを変えずに動かす仕組みや、様々な製品に応用された形があります。
目的の動きに合わせて仕組みを選ぶという視点が、技術の設計ではとても大切なんですよ。
身の回りのリンク機構のポイントを紹介します
平行リンクで向きを保ったまま動かす
平行リンクは、複数のリンクを平行に組み合わせることで、部品の向きを変えずにそのまま平行移動させられる仕組みです。
デスクライトの腕の部分をイメージすると分かりやすく、明かりの向きを保ったまま、腕全体を上下や前後に動かせるようになっているんですよ。
昇降テーブルの脚の部分や、工場で使われるパンタグラフ式の昇降装置にも同じ考え方が使われていて、天板や作業台の水平を保ったまま高さだけを変えられるようになっています。
向きを保つという発想は、家具や医療機器、産業機械など、幅広い製品の設計に生かされているんです。
- 平行リンク:向きを変えずに平行移動させる仕組み。
- 身近な例:折りたたみ傘や車のワイパーに利用されている。
- 選び方の視点:必要な動きから最適な機構を逆算する。
折りたたみ傘やワイパーの中の仕組み
折りたたみ傘の骨組みは、複数のリンクが連動して開いたり閉じたりする、リンク機構の身近な代表例です。
車のフロントガラスを拭くワイパーも、モーターの回転運動をリンク機構によって左右の往復運動に変換して動いているんですよ。
リンクの長さの比率を変えることで、ワイパーが拭く角度の広さも自由に調整できるんです。
写真のように、ワイパーの根元にあるリンクが回転を往復に変える様子を見ると、身近な道具の中の工夫がよく伝わります。
普段何気なく使っている道具にも、これまで学んできた運動変換の考え方がしっかり生かされているんです。
目的に合わせて機構を選ぶ視点
ここまで見てきたクランク機構、カム機構、平行リンクは、それぞれ得意な動きの種類が違います。
一定のリズムで往復させたいならクランク機構、複雑で自由な動きを作りたいならカム機構、向きを保ったまま動かしたいなら平行リンクが向いているんですよ。
機械を設計するときは、まずどんな動きが必要かを考え、そのうえで最適な仕組みを選ぶという順番がとても大切です。
仕組みの名前だけを覚えるのではなく、なぜその形が選ばれているのかまで考えられるようになると、身の回りの機械の見え方が大きく変わってきますよ。
次にリンク機構やカムを使った製品を見かけたら、どんな動きをどんな仕組みで作っているのか、少し立ち止まって観察してみてくださいね。
仕組みが分かると、身の回りの機械がぐっと面白く見えてくるはずですよ。
おわりに
今回は、リンク機構を中心に、回転運動が往復運動や揺動運動へと変わっていくしくみを見てきました。
クランク機構は一定のリズムの往復運動、カム機構は自由で複雑な動き、平行リンクは向きを保ったままの移動と、それぞれに得意な役割があります。
定期テストでは、それぞれの機構の名前と特徴、身近な例を結びつけて覚えておくと、応用問題にも対応しやすくなりますよ。
まずは身の回りの道具を1つ選んで、どの機構が使われているか探してみることから始めてみてくださいね。
ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。
中学技術【リンク機構】クランク・カムのしくみと運動変換をわかりやすく解説
リンク機構の種類一覧|てこクランク・両てこ・両クランク・平行クランク
リンク機構の基本は、4本の棒(節)をピンでつないだ「4節リンク機構」です。4本のうち1本を固定し、残りの3本が動きます。固定した棒の向かい側の棒を連接棒、その両側で動く棒を、1回転するなら「クランク」、決まった角度の範囲で往復して揺れるなら「てこ」と呼びます。両側の棒がクランクかてこかの組み合わせで、次の4種類に分けられます。
- てこクランク機構:片方がクランク(回転)、もう片方がてこ(揺動)。回転と揺れる動きを変換する
- 両てこ機構:両側ともてこ(揺動)。揺れる動きを別の揺れる動きに伝える
- 両クランク機構:両側ともクランク(回転)。回転を別の回転に伝える
- 平行クランク機構:向かい合う棒の長さが等しく、平行四辺形の形を保ったまま動く

名前の後ろ半分が「何と何の組み合わせか」を表しています。てこ=揺れる、クランク=回る、と覚えると迷いませんよ
てこクランク機構と身近な使用例
てこクランク機構は、回転運動を揺動運動に、または揺動運動を回転運動に変える仕組みです。足踏みミシンは、足で踏み板を揺らす動き(てこ)を、はずみ車の回転(クランク)に変えています。反対に、扇風機の首振りや自動車のワイパーは、モータの回転を左右に揺れる動きに変える例として紹介されます。テストでは「どちらが回転して、どちらが揺れているか」を図から読み取る問題がよく出ます。
両てこ機構と身近な使用例
両てこ機構は、両側の棒がどちらも決まった範囲で揺れる仕組みです。どちらも1回転はしないので、揺れる動きの角度や向きを変えて伝える場面で使われます。代表的な例として、自動車の前輪の向きを変えるかじ取りの装置がよく挙げられます。ハンドルを切ったときに左右のタイヤの向きを連動して変えるところに、この仕組みの考え方が生かされています。
両クランク機構と平行クランク機構
両クランク機構は、両側の棒がどちらも1回転する仕組みで、回転を別の回転として伝えます。その中でも、向かい合う棒の長さが等しく、いつも平行四辺形の形を保ったまま動くものが平行クランク機構です。蒸気機関車の動輪どうしをつなぐ連結棒は、平行クランク機構の例としてよく紹介されます。この記事の前半で取り上げた「平行リンク」も、向きを保ったまま動かすという同じ考え方の仲間です。
リンク機構が使われているもの一覧(身近な例のまとめ)
ここまでに出てきた例と、よく教科書や問題集に出てくる例を、機構ごとに一覧にまとめます。製品の中の仕組みは、メーカーや型によって違うこともあるので、テストでは「どの動きをどの動きに変えているか」を説明できることを大切にしてください。
- てこクランク機構:足踏みミシン・扇風機の首振り・自動車のワイパー
- 両てこ機構:自動車のかじ取り装置
- 平行クランク機構:蒸気機関車の動輪の連結棒・デスクライトの腕
- スライダクランク機構:ミシンの針の上下運動・エンジンのピストンとクランク軸
- カム機構:エンジンのバルブの開け閉め・動くおもちゃ
回転運動を直線運動に変える仕組みの見分け方
「回転運動を直線運動に変えるのはどれか」という問いでは、スライダクランク機構とカム機構の2つを思い出しましょう。スライダクランク機構は、すべる部品が決まった幅でまっすぐ往復します。カム機構は、カムの形しだいで、上下する高さやタイミングを自由に決められます。どちらも回転から往復の動きを作りますが、「動きの形を自由に決めたいならカム、一定のリズムで往復させたいならスライダクランク」と区別すると、記述問題でも説明しやすくなります。
リンク機構の理解を深める授業の工夫
クランク機構やカム機構は、言葉での説明だけでは動きのイメージがつかみにくい単元です。実際に動く様子を見せたり、生徒自身の手を動かしたりする工夫を取り入れることで、理解のつまずきを減らすことができます。

リンク機構の授業で工夫しているポイントを紹介します
クランクとカムの違いが混同される生徒への説明
クランク機構とカム機構はどちらも回転を別の動きに変える仕組みのため、生徒の中で混同されがちです。「クランクは決まったリズムで一定に動く、カムは板の形を変えれば自由な動き方にできる」というように、規則性の有無を対比させて説明すると、それぞれの特徴が整理しやすくなります。
動きを言葉で表現させる活動
機構の動きを見せたあとに、「回転運動」「往復運動」といった用語を使って自分の言葉で説明させる活動を挟むと、見ているだけでは気づかない理解の抜けが見えてきます。友達同士で説明し合う時間を取ると、教える側の生徒の理解もより確かなものになります。
模型を分解・組み立てさせる体験学習
簡単なクランク模型を実際に分解し、また組み立て直す活動を取り入れると、部品同士がどうつながって動きを生み出しているかが手を通して理解できます。図や写真だけでは伝わりにくい「軸」と「棒」のつながり方が、実物を触ることで一気に腑に落ちる生徒が多く見られます。
リンク機構をテストで問われる視点
リンク機構の単元は、用語の意味を正確に使い分けられるかどうかがテストでの得点を左右します。授業の中でどこを意識させておくべきかを整理しておきます。
- 用語の使い分け:回転運動・往復運動を正しく区別する。
- 図の読み取り:機構の種類を図から判断する。
- 身近な例:製品名を挙げて説明できる。
「往復運動」と「回転運動」の用語を正しく使わせる
テストでは、図に示された機構がどんな運動を生み出しているかを用語で答えさせる問題がよく出題されます。日常会話の「行ったり来たりする動き」という言い方ではなく、「往復運動」という正確な用語で答えられるよう、授業中から用語を使う練習を重ねておくことが得点につながります。
図から動きの種類を判断させる問題
クランク機構とカム機構の図を見比べさせ、どちらがどんな動きを生み出すかを判断させる問題は定番です。軸の位置や部品の形の違いに注目させる練習を重ねておくと、初めて見る図が出題されても落ち着いて判断できるようになります。
身の回りの製品を例に挙げさせる記述問題
「クランク機構が使われている製品を1つ挙げ、その理由を説明しなさい」といった記述問題では、知識だけでなく身の回りへの応用力が問われます。授業の中で具体例をたくさん扱っておくことが、こうした記述問題への対応力を高めます。
身の回りに広がるリンク機構の世界
リンク機構は工業製品だけでなく、生徒の身近な物にも数多く使われています。具体例を知ることで、単元全体への関心がぐっと高まります。
おもちゃや家電に使われているリンク機構
ミシンの針を上下させる仕組みや、扇風機の首振り機構など、身の回りの家電にはリンク機構が数多く使われています。分解できるおもちゃがあれば、内部の棒や軸のつながりを実際に見せると、リンク機構が特別なものではなく身近な技術であることが伝わります。
自動車のワイパーに使われる仕組み
自動車のフロントガラスを拭くワイパーは、モータの回転運動をリンク機構によって左右の往復運動に変換しています。1つのモータで2本のワイパーを同時に同じリズムで動かせるのも、リンク機構の組み方の工夫によるものです。身近な乗り物の例として、生徒の興味を引きやすい題材です。
ロボット技術とリンク機構のつながり
ロボットの腕や脚の関節にも、リンク機構の考え方が応用されています。複数の棒と継ぎ目を組み合わせることで、少ないモータの数でも複雑な動きを再現できる仕組みは、ロボット工学の基本的な発想のひとつです。単元の最後にこうした発展的な話題を紹介すると、将来の技術への関心にもつながります。









