
はじめに
釘を打とうとしたら、板の端がぱきっと割れてしまった。
ねじを回しても途中から入っていかない。
木工の実習で、そんな経験はありませんか。
その多くは、打つ力や回す力の問題ではありません。
その前にあけておくはずの「下穴」が、なかったか、太さが合っていなかったのです。
下穴は地味な工程ですが、割れるか割れないかを分けている、いちばん大事な一手間なんですよ。
この記事では、まず穴をあける道具を整理します。
手であけるきりと、機械で回すドリル。
それぞれに種類があって、用途で選ぶようにできています。
次に、下穴の太さを数字で決める方法を確かめます。
釘なら直径の八割、木ねじならおよそ七割。
この二つの数字を覚えると、その場で計算して選べるようになります。
最後に、まっすぐ・きれいにあけるための手順と、安全のきまりをまとめます。
授業を休んでしまった人も、テスト前にもう一度確かめたい人も、この記事だけで追いつけるように書きました。
途中に例題を二つ置いてありますので、ぜひ手を止めて、ノートに書きながら読んでみてくださいね。
穴あけを3つの視点で整理する
穴あけの学習は、「道具」「太さ」「手順」の3つに分けると迷わなくなります。
道具は、きりの三種類とドリルビットの三種類を、先端の形と用途で見分けることです。
太さは、これから入れる釘やねじの直径から計算して決めるということ。
手順は、固定・捨て板・深さの印という、失敗を防ぐ三つの一手間です。
この順番で追いかけると、実習でもテストでも、自分で判断できるようになりますよ。
- ポイント1:道具は先端の形で見分ける:きりは三種類、ドリルビットは木工用・鉄工用・皿もみです。
- ポイント2:下穴の太さは計算で決まる:釘は直径のおよそ8割、木ねじはおよそ7割が目安です。
- ポイント3:手順を守れば失敗しない:材料を固定し、捨て板を敷き、深さに印をつけます。
ポイント1:穴をあける道具を見分ける
最初は道具の整理からです。
名前を丸暗記するのではなく、先端の形と用途をセットで覚えていきましょう。
道具は先端の形を見れば、何の穴をあけるためのものか分かるようにできています。
穴をあける道具の種類を紹介します
きりは三種類、用途で使い分ける
手であける道具が、きりです。
柄を両手のひらではさみ、こするように回しながら押し込んでいきます。
もみぎりと呼ばれる動きですね。
中学校でおさえるのは三種類です。
刃先が四角い四つ目ぎりは、細い釘の下穴に使います。
三つ目ぎりは、それより少し太い木ねじの下穴用です。
つぼぎりは、深い穴をあけたいときに使います。
どれにも共通して大事なのが、材料に対して垂直に立てること。
少しでも斜めに入ると、あとから打つ釘やねじも、そのまま斜めに進んでしまうんです。
深さは、柄にテープを巻いて印にすると目で確かめられますよ。
- 四つ目ぎり:刃先が四角い形。細い釘の下穴をあけるときに使います。
- 三つ目ぎり:四つ目ぎりより太い穴。木ねじの下穴に向いています。
- つぼぎり:深い穴をあける用。まっすぐ深く進められるのが持ち味です。
ドリルビットは、先端の形で見分ける
機械で回してあけるのがドリルで、その先につける刃をビットといいます。
木にあける場面で登場するのは、大きく三つです。
木工用ビットは先端に小さなとがった芯があり、この芯が先に刺さって位置を決めてくれます。
だから、ねらった所からずれにくいんですね。
鉄工用ビットは先が平たい形をしていて、木にも使えますが、あけ始めに少し逃げやすくなります。
もう一つが皿もみです。
これは穴をあけるための刃ではありません。
あけた穴の入口だけを円すい形に広げて、ねじの頭を面より下に沈めるための刃なんですよ。
太さは、直径のミリ数で決まる
ビットの太さは、直径をミリで表します。
三ミリ、三点五ミリ、四ミリというように細かくそろっていて、この数字を呼び径といいます。
そしてあいた穴の大きさは、ほぼビットの直径どおりになります。
つまり、どのビットを選ぶかが、そのまま仕上がりを決めてしまうわけですね。
だからこそ、道具箱から適当に一本取るのではなく、これから入れる釘やねじの太さから逆算して選ぶくせをつけてください。
次のポイントで、その計算のしかたを確かめます。
数字で決められるようになると、失敗はぐっと減りますよ。
ポイント2:下穴の太さは計算で決まる
道具が分かったら、次はどの太さを選ぶかです。
ここは感覚ではなく、かけ算で決められるところなんですよ。
釘なら直径の8割、木ねじならおよそ7割。この二つの数字が判断のものさしです。
下穴の太さの決め方を紹介します
下穴が、割れとずれを防いでくれる
下穴というのは、釘やねじを入れる前に細くあけておく、案内の穴のことです。
なぜ必要なのかというと、いちばんの理由は割れを防ぐためなんです。
下穴がないと、釘は木の繊維を無理やり押し広げながら進んでいきます。
押し広げられた繊維は、限界を超えると裂けてしまう。
板の端の近くほど割れやすいのは、逃げ場が少ないからですね。
下穴があれば、あらかじめ場所が空いているので、繊維を押しのけずにすみます。
釘やねじが案内の穴に沿って進むので、ねらった位置からずれず、向きも狂いにくくなります。
少ない力で入るぶん、げんのうやドライバがすべる失敗も減りますよ。
- 割れない:繊維を押し広げずにすむので、端の近くでも裂けにくくなります。
- ずれない:釘やねじが案内の穴に沿って進むので、位置も向きも狂いません。
- 楽に入る:少ない力で入るため、げんのうやドライバがすべる失敗も減ります。
釘の下穴は、直径のおよそ8割
では、どのくらいの太さにすればよいのでしょうか。
釘の場合の目安は、釘の直径のおよそ八割です。
たとえば直径二点五ミリの釘なら、二点五かける零点八で二ミリ。
二ミリのビットを選べばよいことになります。
八割という数字にも、ちゃんと理由があります。
太すぎると釘の周りにすきまができて抜けやすくなり、細すぎると割れを防ぐ効果が足りない。
その間をとった値が、およそ八割なんですね。
細い材料や硬い材料ほど下穴の効果は大きくなりますから、迷ったらあけておきましょう。
板の端の近くは繊維の逃げ場が少なく割れやすいので、十五ミリほどは離してくださいね。
木ねじは、下穴とばか穴の二段構え
木ねじの下穴は、ねじの太さのおよそ七割が目安です。
太さ四ミリのねじなら、四かける零点七でおよそ三ミリ。
釘より少し太めにとる、と覚えてください。
深さは、ねじが入る長さの三分の二ほどで十分です。
もう一つ大切なのが、二枚の板を重ねてとめるときの考え方です。
上の板は、ねじがすっと素通りする太さにあけます。
そして下の板だけを、細い下穴にするんです。
こうすると、ねじが下の板を引き寄せて、二枚がぴたりと密着します。
両方を細くあけてしまうと、板の間にすきまが残ってしまうんですよ。
ポイント3:まっすぐ・きれいにあける手順
最後は実習の手順です。
特別な技術ではなく、三つの一手間を足すだけで仕上がりが変わります。
固定して、捨て板を敷いて、深さに印をつける。この三つが失敗を防いでくれます。
まっすぐきれいにあける手順を紹介します
材料は、必ず固定してからあける
手順の一つ目は固定です。
穴あけの事故でいちばん多いのが、材料がビットに引っかかって振り回されるというもの。
とくに小さな材料や薄い板は、勢いよく回されて手を切ってしまいます。
ですから、必ずクランプか万力で、作業台ごと押さえてください。
卓上ボール盤でも同じで、台の上にしっかりのせて押さえてから、ハンドルを下ろします。
手で持ったまま穴をあけるのは、どんなに小さな材料でもやめましょう。
固定は面倒に見えて、実は仕上がりの精度も上げてくれます。
材料が動かなければ、けがきの印からずれずに、まっすぐ垂直に進められるからですね。
捨て板と深さの印で、仕上がりが変わる
手順の二つ目は、捨て板と深さの管理です。
捨て板というのは、材料の下に敷く、いらない板のことですね。
穴が貫通する瞬間、裏側の繊維は支えを失ってめくれ、大きく欠けてしまいます。
下に板が一枚あるだけで、その繊維が支えられて、きれいに抜けるんです。
作業台に穴をあけずにすむ、という利点もありますよ。
途中で止める止まり穴のときは、ビットにテープを巻いて深さの印にします。
卓上ボール盤なら、深さ調整の目盛りで止められます。
貫通させるのか、途中で止めるのか。
あける前にどちらなのかを決めておくと、手が止まらずにすみますよ。
どちらも一手間ですが、効果はとても大きいです。
安全のきまりと、失敗したときの直し方
最後は安全です。
まず、手袋は必ず外してください。
回転するビットに巻き込まれると、手ごと引き込まれて大けがになります。
長いそではまくり、髪は結び、保護めがねをかけましょう。
切りくずを払いたくなっても、回転が完全に止まるまで手を出さないこと。
ここだけは必ず守ってくださいね。
そして、位置がずれてしまったときも、あきらめなくて大丈夫です。
木くずと接着剤を混ぜたものを穴に詰め、乾いてからあけ直せば、ほとんど目立たなく直せます。
同じ材料から出た木くずを使うと、色までなじんで分からなくなりますよ。
直し方を知っていると、思いきって作業できるようになりますね。
- 固定:クランプか万力で押さえたか。手で持ったままにしていないか。
- 捨て板:材料の下にいらない板を敷いたか。裏側の欠けを防げるか。
- 安全:手袋を外し、保護めがねをかけたか。そでと髪をまとめたか。
おわりに
今日たどってきたのは、道具・太さ・手順の3つでした。
きりは四つ目ぎり、三つ目ぎり、つぼぎりの三種類。
ドリルビットは、木工用と鉄工用、そして皿もみでしたね。
下穴の太さは、釘なら直径の八割、木ねじならおよそ七割。
そして固定・捨て板・深さの印という一手間が、割れも欠けも防いでくれます。
最後に一つだけお願いです。
記事の中に出てきた例題を、もう一度ノートで解き直してみてください。
直径二点五ミリの釘の下穴と、太さ四ミリの木ねじの下穴。
それぞれ何ミリになるか、式まで書けるでしょうか。
読んで分かった気になるのと、自分の手で計算できるのとでは、実習でもテストでも手ごたえが変わりますよ。
ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。
中学技術【きりとドリル】下穴の意味とビットの太さの選び方をわかりやすく解説
中学技術の授業でつまずきやすいところを、一つずつ動画にしています。
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