
はじめに
二学期が始まって少しすると、必ずやってくる困りごとがあります。
出すはずの提出物が、そろわない。
夏休みの課題も、日々のワークも、集めてみるといつも同じ顔ぶれが出していない。
そんな朝が続いていませんか。
朝の会で「まだ出していない人」と名前を読み上げる。
その時間が毎日続くと、教室の空気がだんだん重くなっていきます。
しかも、読み上げても状況は変わりません。
出す子はいつも出すし、出さない子はいつも出さない。
叱った翌週に、また同じ顔ぶれがそろってしまう。
ここで「やる気が足りない」と考えてしまうと、打てる手は叱ることだけになります。
でも実際に教室で起きているのは、まったく別のことなんです。
この記事では、二学期の提出物を叱らずに回していくための三つの手順をお伝えします。
どれも担任がひとりで決められることばかりなので、始業式のあとすぐに試せます。
提出物が回り出す3つの手順
先に結論からお伝えします。
提出物がそろうかどうかを決めているのは、先生の叱り方ではありません。
出す道の短さと、確かめる早さと、忘れたあとの戻り方。
この三つです。
ひとつ目は、出す場所と時間を固定して、出すまでの道を短くすること。
ふたつ目は、出ていない子をその日のうちに小さく確かめること。
みっつ目は、忘れてしまった子が戻ってこられる道を、先に決めておくことです。
どれも仕組みの話なので、気合いは要りません。
この順番でそろえると、朝の会で名前を読み上げる時間そのものが要らなくなります。
- 手順1:出す道を短くする:場所・時間・見え方の三つを固定して、迷う時間を消す。
- 手順2:その日のうちに確かめる:叱るのではなく、三十秒の確認をたまる前に入れる。
- 手順3:戻り方を決めておく:「なぜ」ではなく「いつ」を決め、量を切ってやり直させる。
ポイント1:出す道を短くする
提出物がそろわないとき、多くの先生は「どう言えば出すようになるか」を考えます。
けれど、変えるべきなのは言葉ではありません。
出すまでの道のりが長いほど、途中で落ちる子は増えていきます。
出す道を短くするポイントを紹介します
「出す気がない」は、たいてい誤解です
出さない子を見ていると、やる気がないのだと思えてきます。
けれど教室で実際に起きているのは、少し違うことです。
出す場所が教科ごとに変わり、出す時間もその日によって違う。
そうなると子どもは、毎回どこへ出すのかを考えることになります。
この考える手数が、思っている以上に重いんです。
とくに中学生は、休み時間に友達と話しているうちに提出のことを忘れます。
忘れないための意志を求めるより、忘れても出せる道を作るほうが確実です。
出す気がないのではなく、出す道が長い。
そう考え直すだけで、打てる手立てはぐっと増えていきます。
- 場所を固定する:教科が変わっても、提出はうしろのかご一か所だけにする。
- 時間を固定する:出すのは朝の会の前の一回。「いつでもいい」を作らない。
- 見え方を固定する:名簿番号の順に並べ、抜けた番号がそのまま分かる形にする。
提出は「1か所・1回」に固定する
まず提出先を、教室のうしろのかごひとつに決めます。
国語も数学も、日直の連絡ものも、出す場所は同じにします。
置き場所が変わらないと、子どもは考えずに体が動くようになります。
次に出す時間を、朝の会の前の一回に決めます。
いつでも出していい、という形はやさしく見えますが、実は締め切りがない状態です。
締め切りがないものは、どうしても後回しになります。
そして、かごの中は名簿番号の順にそろえておきます。
そうすれば、抜けている番号がそのまま出していない子です。
先生が名前を探して回る時間も、ここで消えます。
出したかどうかが、自分で見える形にする
提出の管理を先生の手元だけに置くと、子どもは自分の状態が分かりません。
分からないまま数日たつと、出したつもりで終わってしまう子が出てきます。
おすすめは、教室に小さな一覧を貼ることです。
横に日付、縦に出席番号を並べた表に、出した子が自分でチェックを入れていきます。
ここで大切なのは、未提出を目立たせないことです。
赤で囲んだり色を変えたりすると、掲示がさらし者の道具に変わってしまいます。
出した印だけが増えていく形にしておく。
それだけで、自分の状態を自分で確かめられる子が増えていきます。
- 増える印だけ書く:出した記録だけを残し、未提出は空欄のままにしておく。
- 色で強調しない:赤丸や色替えは、掲示をさらし者の道具に変えてしまう。
- 本人が書く:先生が付けるのではなく、出した子が自分でチェックを入れる。
手順1でやることは、これだけです。
場所をひとつ、時間をひとつ、見え方をひとつ。
この三つを決めた日から、朝の教室の動きは目に見えて変わります。
ポイント2:その日のうちに、小さく確かめる
出ていない子に、いつ、どう声をかけるか。
ここで多くの先生が、言い方の工夫を探してしまいます。
けれど効くのは言い方ではなく、どれだけ早く声をかけたかです。
その日のうちに、小さく確かめるポイントを紹介します
未提出は「叱る」ではなく「確認」で扱う
出ていない子に声をかけるとき、多くの先生は注意の言葉から入ります。
どうして出さないの、何回言えば分かるの。
気持ちはよく分かりますが、この入り方だと、子どもは提出ではなく叱られたことのほうを覚えます。
そこで、確認のトーンに変えます。
出ていないみたいだけど、どうなってる。
これだけで、話す目的が責めることから、状況を知ることに移ります。
状況が分かれば、次の一手も決まります。
持ってきていないのか、そもそもやっていないのか、やったけれど分からず止まっているのか。
手立ては、それぞれまったく違うからです。
- 家に忘れた:やってはある。持ってくる場面を一緒に決めれば終わる。
- やっていない:量を切って、今日出せる分だけをその場で決める。
- 分からず止まった:勉強のつまずき。先に教える時間を取る必要がある。
三日たまると、出せなくなる理由
未提出は、放っておくと三日でようすが変わります。
一枚なら出せたものが、三枚になった時点で手が止まるんです。
量が壁になって、どこから手をつければいいのか分からなくなります。
そしてここから先は、もう本人の意志だけの問題ではありません。
だから、たまる前に動きます。
その日のうちに三十秒だけ、その子のところへ行く。
聞くのは理由ではなく、いつ出せそうか、それだけです。
三十秒の確認を一回入れておくと、次の日に出てくることがよくあります。
早い確認は、叱る回数を減らすための投資でもあります。
名前を読み上げない、確認のしかた
朝の会で未提出の名前を読み上げるのは、いちばん手早い方法に見えます。
けれど、あれはほとんど効きません。
名前を呼ばれた子は、提出の中身よりも、人前で言われた気まずさのほうを持ち帰ります。
そしてまわりの子も、その重い空気を少しずつ覚えていきます。
確認は、その子のところへ行って、短く小さくが原則です。
机の横に立ち、こちらから体をかがめて話す。
まわりに聞こえない声で、十秒で終わらせる。
この形なら、子どもは責められたと感じずに、次の行動だけを受け取れます。
手間が増えるように見えますが、朝の会が短くなる分で、じゅうぶん元は取れます。
言い方を磨く必要はありません。
早く、短く、その子だけに。
この三つがそろえば、確認はもう指導の時間ではなくなります。
ポイント3:忘れた後の戻り方を決めておく
どんなに仕組みを整えても、忘れる子はかならず出てきます。
大事なのは、忘れたあとにどう戻ってくるかです。
戻り方が決まっていない教室では、一度落ちた子が落ちたままになります。
忘れた後の戻り方を決めておくポイントを紹介します
「なぜ」ではなく「いつ」を決める
なぜ出さなかったの、という問いは、先生としては理由を知りたいだけの言葉です。
けれど子どもの耳には、責める言葉として届きます。
そして理由を聞かれた瞬間、頭の中で始まるのは言い訳を探す作業です。
言い訳から入った話は、たいてい途中で止まってしまいます。
そこで、いつ出すかを聞く形に変えます。
今日の放課後か、明日の朝か、その場で一緒に決めてしまう。
日付ではなく、場面で決めるのがこつです。
明日までに、よりも、明日の朝の会の前に、のほうが、子どもには実行しやすい形になります。
- 場面で決める:「明日までに」ではなく「明日の朝の会の前に」と言い切る。
- 一緒に決める:先生が指定せず、本人に出せそうな場面を選ばせる。
- 約束は短く:先の予定は守れない。決めるのは、長くても翌日までの範囲。
量を切って、やり直しを成功させる
たまってしまった子に、全部やっておいで、と言うのは酷な話です。
できない量を渡された子は、最初の一歩そのものをあきらめます。
だから、こちらから量を切ります。
今日は一ページだけ、今日はこの一枚だけ、と先生のほうで決めてしまう。
ねらいは、終わらせることではありません。
出せた、という事実をもう一度その子に持たせることです。
一度でも出せると、次のときの心理的な重さが変わります。
残りは翌日また一枚ずつ渡していけば間に合います。
やり直しは、成功する大きさから始めるのが確実です。
出せた瞬間に、必ず気づく
いちばんもったいないのは、やっと出したのに先生が気づかないことです。
その子にとっては、勇気を出した一回です。
それが素通りされると、次はもう出さなくていいと学んでしまいます。
だから、出た瞬間に返します。
大げさなほめ言葉は要りません。
届いたよ、と一言だけ、その場で伝わればじゅうぶんです。
そして、続いたときにもう一度だけ触れます。
今週は三回とも出ていたね、と事実で返す。
評価の言葉よりも、見ていたという事実のほうが、本人には確かに届きます。
小さな一言でも、見てもらえたことは子どもがちゃんと覚えています。
忘れることを、なくそうとしなくて大丈夫です。
忘れても戻ってこられる道があるかどうか。
その一点だけが、二学期の終わりに大きな差になって表れます。
おわりに
三つの手順は、それぞれ独立したものではなく、つながっています。
道が短いから出せて、早く気づくからたまらず、戻り方があるからやり直せる。
ひとつでも欠けると、どこかで止まってしまいます。
明日ひとつだけやるなら、提出のかごを教室のうしろに、ひとつだけ置いてください。
そこに名簿番号のシールを貼るだけで、誰が出していないかを探す時間がなくなります。
手順2と手順3は、そのあとからで間に合います。
提出物がそろう教室は、まじめな子が集まった教室ではありません。
出しやすい道が用意されている教室です。
叱る回数が減ると、先生の言葉はもっと大事な場面のために取っておけますよ。
ご視聴ありがとうございました。
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何度言っても出ない子に、次に何をするか
仕組みを整えても、それでも出さない子は残ります。そんなときに次に何をするかを紹介します。叱る回数を増やすのではなく、出しやすさそのものを見直す関わり方です。

何度言っても出ない子への対応を紹介します
量を減らしてでも、まず一回出させる
溜まった提出物を全部出させようとすると、量の多さに心が折れてしまいます。
「今日はこの一枚だけでいい」と量を減らしてでも、まず出す経験を作ります。
出せた経験の積み重ねが、次の提出物への抵抗を減らします。
一枚出せたら、その場で「出せたね」と事実だけを短く伝え、大げさに褒めすぎないことも大切です。
少しずつ出せる量を増やしていくことで、無理なく普段のペースへ戻していくことができます。

提出できない理由を、責めずに一度だけ聞く
毎回理由を聞くと、言い訳を考える練習になってしまいます。
けれど一度だけは、責めずに「何が難しかった?」と丁寧に聞きます。
そこで分かった理由が、その後の関わり方を決める手がかりになります。
理由が家庭の事情に関わる場合は、無理に聞き出さず、分かる範囲で受け止めるだけで十分です。
聞いた理由は担任の中だけに留め、必要な範囲でのみ他の教職員と共有します。
提出のハードルそのものを、個別に下げてみる
紙のプリントが苦手な子には、写真で提出するなど、別の出し方を用意する方法もあります。
「出す形」を選べるようにするだけで、出せる子が増えることがあります。
全員に同じ方法を求めなくてよい、という発想が、提出物指導の幅を広げます。
出し方の選択肢を増やすことは、特別扱いではなく、出せる子を増やすための工夫だと考えます。
提出物のことを、保護者にどう伝えるか
提出物が続けて出ないとき、家庭にどう伝えるかで、その後の協力の得やすさが変わります。最初の伝え方を間違えなければ、家庭も落ち着いて協力してくれることがほとんどです。

保護者への伝え方を紹介します
最初の連絡は、電話より連絡帳を選ぶ
いきなり電話をすると、保護者は身構えてしまいます。
まずは連絡帳で「最近提出物が滞っています。家庭でも様子を見ていただけますか」と軽く伝えます。
最初の一報は、重すぎない伝え方を選びます。
連絡帳での一言がきっかけで、家庭側から状況を教えてもらえることも少なくありません。
軽い伝え方から始めることで、その後のやり取りも自然と続けやすくなります。
- 最初は軽く:連絡帳で様子を伝える。
- 事実だけ:枚数や日数など事実を伝える。
- 感謝を添える:協力への感謝を必ず一言添える。
改善したときは、必ず良い報告もする
困ったときだけ連絡すると、保護者にとって担任からの連絡は悪い知らせになってしまいます。
提出が戻ったときは、「最近きちんと出せています」と良い報告も忘れずに伝えます。
良い報告があってこそ、次の相談もしやすくなります。
良い知らせと困りごとの両方が届く担任には、家庭も安心して本音を話しやすくなります。
良い報告を先に伝える習慣があると、困りごとを伝えるときの受け止められ方も柔らかくなります。

電話が必要なときは、事実と対応の順で話す
軽い連絡で改善しない場合は、電話での相談が必要になることもあります。
そのときも、起きている事実と、学校で行っている対応の順で淡々と伝えます。
感情を交えず事実から話すことで、保護者も落ち着いて受け止めやすくなります。
最後に「一緒に見守っていきましょう」と添えると、対立ではなく協力の関係として話を終えられます。
早く出す子への声かけ
提出物指導は出ない子への対応に目が向きがちですが、早く出す子への声かけも忘れてはいけません。当たり前に見える行動こそ、意識して認めていく関わり方を紹介します。

早く出す子への声かけを紹介します
早さを、当たり前として流さない
いつも早く出す子は、その行動が評価されていると意外と気づいていません。
「いつも早いね、助かるよ」と、たまにでいいので言葉にして伝えます。
当たり前に見える行動こそ、意識して認める必要があります。
早く出した子に、待たせすぎない
早く出した子が、他の子が出し終わるまで長く待たされる場面はよくあります。
早く出した子には、次の活動に進める工夫を用意しておくと、早さが損にならずに済みます。
早さが報われる仕組みが、提出物への前向きな姿勢を支えます。
早い子にも、質の面で伸びしろを示す
早さだけが評価されると、内容が雑になってしまう子も出てきます。
「早いだけじゃなくて、ここがさらに良くなるとなお良いね」と、質の面での声かけも忘れずに添えます。
早さと質、両方を見ていることが伝われば、提出物の質全体も上がっていきます。
早く出す子の工夫を、他の子にさりげなく共有するのも一つの方法です。
早く出す子を、見本として押し付けない
「あの人を見習いなさい」と名指しで比べてしまうと、早く出す子自身が気まずい思いをします。
本人の了承を得たうえで、やり方を紹介する程度にとどめておきます。
見本にする配慮も、早く出す子を大切にする関わり方の一つです。











