
はじめに
二学期が始まると、給食の時間がまた戻ってきます。
配膳台の前で列が止まり、教室の中もざわついている。
気づくと、いただきますの時刻をとっくに過ぎている。
そんな光景に、心当たりはありませんか。
片付けの時間になっても、食器を運んでいるのは、いつも同じ子。
担任だけが時計を見ていて、早くしなさい、と声を張ってしまう。
その日は動くのに、次の日にはまた元に戻っている。
私にも、そんな覚えがあります。
給食の時間が長引く原因を、まだ慣れていないから、と考えてしまうと、担任にできることは待つことだけになります。
でも、給食は、いちにちに一度、必ずやってくる時間です。
ここを整えると、学級の日常そのものが変わります。
この記事では、二学期の給食を立て直す三つの仕組みをお伝えします。
給食を立て直す 3つの仕組み
給食は、食事の時間であると同時に、いちにちに一度、必ずやってくる自治の練習の時間です。
準備、食事、片付け。
この三つの場面には、今の学級の姿がそのまま出ます。
だから、給食の時間が整っている学級は、行事でも力を出せます。
逆に、行事の直前だけ頑張ろうとしても、日常がゆるんだままでは続きません。
これからお伝えする三つは、どれも明日の給食からそのまま試せるものばかりです。
- 仕組み1:「慣れ」ではなく「気持ち」:動けない原因を技術の問題にせず、最初に言い切る。
- 仕組み2:完食は学級の取り組み:ひとりの課題にせず、支え合う場面に変える。
- 仕組み3:気づいた人を名前で:陰で働く子を見つけ、学級に伝えて広げる。
ポイント1:「慣れ」ではなく「気持ち」
給食指導というと、手際よく配膳させる技術の話だと思われがちです。
けれど担任が最初にやるのは、動き方の指導ではありません。
時間内に動けない原因が、慣れではなく気持ちにあると、はっきり伝えることです。
準備が遅いクラスへの最初の一言を紹介します
時間内に動けない理由を、技術のせいにしない
準備が遅いとき、まだ二学期が始まったばかりだから、と考えたくなりますよね。
でも、その日の教室をもう一度思い出してみてください。
やり方がわからなくて止まっている子は、実はほとんどいないはずです。
多くは、誰かが動き出すのを待っているだけなんです。
ここを慣れの問題にしているかぎり、担任にできることは待つことだけになります。
私は子どもたちに、これは慣れではなく、みんながやろうとしていないからだ、と伝えてきました。
きびしい言葉に聞こえますが、原因が気持ちにあるとわかった瞬間に、子どもは自分の動きと向き合い始めます。
時間を守ることが、仲間を大切にする行為になる
そのうえで、取りに出発する時刻と、着席する時刻を決めます。
目安がひとつ黒板にあるだけで、遅れているかどうかを子ども自身が判断できるようになります。
そして、守れた日には、その場で言葉にしてください。
ここで大切なのは、意味づけを変えることです。
時間を守るのは、ルールだからではありません。
時間を守ることは、仲間の時間を大切にする行為です。
そう伝えると、早くしなさいという指示が、仲間を大切にしようという呼びかけに変わります。
担任が叱る場面は、確実に減っていきます。
先に決めておくほど、叱る場面は減っていく
動き出す前に決めておくことが多いほど、途中で止まる場面は減ります。
配膳台までの動線をひとつに決める。
食缶を置く位置を決める。
当番が並ぶ順番を決める。
どれも小さなことですが、決まっていないと、その場で相談が始まり、そこで時間が消えていきます。
担任が声を張ってしまうのは、たいてい、決まっていないことが原因です。
仕組みで防げるものを、気合いで乗り切ろうとしない。
これは、給食にかぎらず学級経営のあらゆる場面に共通する考え方です。
決めるのに必要なのは、たったの数分です。
その数分が、毎日うしなわれていた数分を取り戻してくれます。
- 時刻:取りに出発する時刻と、着席する時刻を決めておく。
- 動線:配膳台までの通り道と、食缶を置く位置を決めておく。
- 順番:当番が並ぶ順番と、おかわりの順番を決めておく。
この仕組みは、たった一日では変わりません。
けれど、時刻を決めて、意味を伝えて、守れた日にそれを言葉にする。
この三つを一週間続けると、教室の空気は確実に変わってきます。
ポイント2:完食は、学級の取り組み
給食のもうひとつのテーマが、完食です。
ただ、この扱い方をひとつ間違えると、給食の時間がつらい時間になってしまいます。
完食は、食べられない子ひとりの課題ではなく、学級全体の取り組みとして位置づけます。
完食を支え合いの場面に変える方法を紹介します
完食をひとりの課題にすると、苦しくなる
完食を目指すこと自体は、悪いことではありません。
問題は、それを食べられない子ひとりの課題にしてしまうことです。
まわりが食べ終わっているのに、自分だけ席に残る。
その時間は、大人が思っている以上につらいものです。
やがて給食が嫌いになり、学校そのものが重くなっていきます。
だから、完食は学級全体の取り組みとして置き直します。
食べる人は、食べられない人のためにも食べる。
減らした人は、食べてくれた人に感謝する。
同じ完食でも、意味がまったく変わってきます。
担任が変えるのは、食べる量ではなく、意味づけのほうです。
それだけで、給食の時間の空気はやわらかくなります。
- 食べる人へ:食べられない人のためにも食べてくれて、ありがとう。
- 減らす人へ:食べられる量まで減らしていい。それも決める力です。
- 学級全体へ:完食できた日は、みんなでつくった結果として喜び合う。
「減らしていい」と先に言えるかどうか
いただきますの前に、減らしていいこと、そして減らす手順を決めておいてください。
食べ始めてから交渉が始まると、そこで時間が消えていきます。
減らす自由があると、子どもは自分の食べられる量を、自分で決める練習ができます。
これは逃げではなく、判断です。
おかわりの順番も同じで、先に決めておけば、列の前でざわつくこともありません。
減らしていいよ、それも決める力だよ。
減らすことを責めない担任のもとでは、子どもは安心して自分の量を決められます。
そして、決めた量を食べきったという経験が、次の自信になっていきます。
終わりを全員でそろえると、時間が戻ってくる
もうひとつ効くのが、終わりの時刻を全員でそろえることです。
食べ終わった子から動き出すと、教室がだんだんばらけて、片付けが長引きます。
ごちそうさまを全員で言い、そこから片付けに入る。
この形にすると、遅い子を待つ時間ではなく、みんなで区切る時間になります。
そして、完食できた日は、学級全体で喜び合ってください。
ひとりの記録ではなく、みんなでつくった結果として残していくと、次の日の動きが目に見えて変わります。
区切りがそろうと、そのあとの掃除の時間にも余裕が生まれます。
時間は、増やすものではなく、取り戻すものです。
完食は、量の話ではありません。
食べる人と減らす人が、たがいを気にかけているかどうかの話です。
そこが伝わると、給食は支え合いが目に見える場面になります。
ポイント3:気づいた人を、名前で
給食指導のいちばん深いところは、片付けの場面にあります。
ここで何が起きているかを、担任がどれだけ見ているか。
気づいて動いた子を名前で伝えることが、学級の文化をつくっていきます。
片付けの時間に担任が見ておきたいことを紹介します
陰で働く子は、放っておくと見えなくなる
給食の片付けでは、当番でなくても食器を運ぶ子、こぼれたものを黙って拭く子が必ずいます。
けれど、その働きは、とても見えにくいものです。
誰かが困っていたわけでもなく、事件が起きたわけでもないので、担任の目にも残りません。
そして、見つけてもらえない行動は、少しずつ減っていきます。
だから、最初にやることは指導ではなく、観察です。
片付けの時間だけ、教室のうしろに立って、動いている子の名前を心の中で拾ってみてください。
三日も見ていれば、同じ名前が何度も出てくることに気づくはずです。
その子たちが、学級を静かに支えてくれている子です。
名前で伝えると、行動が学級に広がる
見つけたら、名前を出して学級に伝えます。
学級通信でも、帰りの会のひとことでもかまいません。
名前で伝えると、三つのことが同時に起こります。
助けた子は、自分の行動に価値があったと知ります。
助けられた子は、ありがとうを学びます。
そして、それを聞いたほかの子が、自分もやってみようと動き始めます。
誰かに言われて動くのではなく、気づいて動く。
これが学級の文化として広がっていくと、片付けの時間は驚くほど短くなります。
特別なほめ言葉はいりません。
名前と、やってくれたことを、そのまま伝えるだけでじゅうぶんです。
- 運ぶ:当番でないのに、食器やお盆を運んでいる子。
- 拭く:こぼれたものや配膳台の汚れに気づいて、黙って拭いている子。
- そろえる:食器の向きや残った牛乳パックを、最後にそろえている子。
担任が一歩引くと、係の言葉が届き始める
ここまで続けていくと、ある日、変化が起こります。
話し声が大きくなったとき、担任が口を開くより先に、係や代表の子が、静かにしてね、と声を出すようになるのです。
そうなったら、担任は一歩引いてください。
子どもの言葉の上から、同じ内容を重ねてしまうと、せっかく出た声が消えてしまいます。
担任の役目は、仲間の言葉を受け取ってね、と伝えることだけになります。
教師の声がひとつで足りる状態が、給食指導の到達点です。
ここまで来ると、給食は担任が管理する時間ではなくなっています。
子どもたちが自分たちで回す、いちにちに一度の練習の時間になります。
名前で伝えることは、時間もお金もかかりません。
けれど、これを続けた学級とそうでない学級では、二学期の終わりに大きな差がつきます。
見つけて伝えるだけで、動く子は必ず増えていきます。
おわりに
給食の時間は、毎日必ずやってきます。
だからこそ、ここで育てたものは確実に積み上がっていきます。
時間内に動けないのは慣れではなく気持ちだと言い切る。
完食を、学級全体の取り組みに変える。
気づいて動いた人を、名前で伝える。
この三つを続けると、担任が時計を見なくてよくなります。
明日から全部やろうとしなくて大丈夫です。
まずは、出発する時刻と、着席する時刻を決めるところから始めてみてください。
行事だけ頑張る学級は、行事のあとに必ず崩れます。
日常の質を上げ続けた学級だけが、体育祭でも合唱コンクールでも本物の力を出せます。
賞状の出ないところで一番になれ。
給食の片付けは、まさにその場面です。
ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。
学級経営のヒントを受け取る
LINEで「学級通信100号」を無料プレゼント中。
登録後の7日間で学級づくりの土台をお届けし、その後もときどき役立つ情報を配信します。








