教室で物がなくなったとき、犯人は探さない|担任がやる3つの手順【中学校】

はじめに

「先生、なくなりました」
中学校の担任をしていると、二学期のどこかで必ず一度は言われる言葉です。
この一言が出た瞬間、教室の空気はその場で止まります。
誰も動かないのに、目だけが動く。
あの感じを知っている先生は多いのではないでしょうか。

そして担任は焦ります。
早く終わらせたい、はっきりさせたい。
けれど、焦って動いたときほど、あとに残るものが大きくなってしまうんです。

私も若いころ、やってしまいました。
全員に目を閉じさせて、正直に手を挙げなさい、と言ったんです。
手はひとつも挙がりませんでした。
物も出てきません。
残ったのは、おたがいを疑う空気だけでした。
あれは子どもの問題ではなく、私の焦りだったと今は思います。

この記事では、教室で物がなくなったときに担任がやる3つの手順を、順番にお話しします。
大前提は「犯人は探さない」です。
読み終えたら、明日そのまま動ける形にしてお渡しします。

物がなくなったときの 3つの手順

先に結論をお伝えします。
犯人を探しにいくと、たいてい物は出てこないまま、教室だけが疑いでいっぱいになります。
担任が最初にやるのは、犯人を探すことではなく、いっしょに探すことです。
そのうえで、なくなりにくい教室を仕組みでつくり、最後に言葉で教室へ返す。
この3つで、物のトラブルは「学級が育つ場面」に変わります。

3つの手順
  • その1:まず、いっしょに探す:担任が先に動き、事実だけ聞いて時間を区切る。
  • その2:仕組みでつくる:名前・置き場・教室を空ける前のひと手間を型にする。
  • その3:最後に、言葉で返す:見つかっても見つからなくても、その日のうちに返す。

ポイント1:まず、いっしょに探す

言われたその瞬間に、担任がどちらへ動くかで、この先の教室が決まります。
探すのは犯人ではなく、なくなった物のほうです。

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まず、いっしょに探すのポイントを紹介します

なぜ、犯人を探してはいけないのか

物がなくなったと聞くと、担任はまず「誰がやったのか」を知りたくなります。
その気持ちは、責任を感じているからこそ出てくる自然なものです。
けれど、犯人を探す動き方をした瞬間から、教室は「おたがいを疑う場所」に変わってしまいます。
全員に目を閉じさせる、正直に手を挙げなさいと迫る。
そうやって追いつめても、物はほとんど出てきません。
出てこないまま、おたがいを見る目だけが変わって残ります。
なくなった物より大きなものを、こちらから失いにいくやり方なんです。
だから、犯人は探さないと先に決めておきます。

担任が、いちばん先に動くことの意味

なくなったと言われたら、担任がいちばん先に立ち上がって探し始めます。
子どもたちが見ているのは、先生がどれだけ本気になってくれるかです。
先生が机の下をのぞき、ロッカーの奥に手を入れている。
その姿だけで、この教室では困ったことが軽く扱われない、と全員が知ります。
逆に、あとで探しておくね、で終わらせてしまうと、言った子は次から言わなくなります。
そして言われなくなった時点で、担任には教室で起きていることが見えなくなるんです。
最初に動くのは、物を見つけるためだけではありません。

教室で落とし物の箱を開けて中を確かめる先生

事実だけを聞き、時間を先に区切る理由

聞くのは事実だけにします。
何が、いつ、どこに置いてあったのか。
「とられたの」と最初から聞くと、その言葉自体が教室に決めつけを持ちこんでしまいます。
どこで最後に見たかを聞いて、そこから順にたどるだけで十分です。
実際には、机の下に落ちている、となりの子の物と入れちがっている、という結末がとても多いんです。
そして探す時間は「この休み時間のうちに」と先に区切ります。
区切らずに探し続けると、授業も気持ちも止まったまま午後まで引きずってしまうからです。
区切ったうえで見つからなければ、次の手順に進むと決めておけば大丈夫です。

最初に聞く3つだけ
  • 何が:物の名前と、名前を書いてあるかどうかを確かめる。
  • いつ:最後に見たのが何時間目か、休み時間かをたどる。
  • どこに:置いた場所を聞き、そこから順に自分の足で探す。

まず、いっしょに探す。
この最初の動き方だけで、教室に残るものがまったく変わります。
そのうえで、次に手をつけたいのが「起きにくくする側」です。

ポイント2:なくならない教室を、仕組みでつくる

起きてから何とかしようとすると、担任の手はどうしても足りません。
なくならない教室は、気持ちではなく仕組みでつくります。

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なくならない教室を、仕組みでつくるのポイントを紹介します

起きてから動くと、間に合わない

物がなくなってから動く担任は、いつも後手に回ります。
探す時間もいる、話も聞く、家庭にも伝える。
それを授業の合間にやろうとすれば、当然ながら手が足りません。
しかも一度なくなった教室は、次に何かが見当たらないだけで空気が張りつめるようになります。
だから力を入れる場所は、起きたあとではなく、起きにくくする側です。
とくに二学期は行事の練習が始まり、教室を空にして体育館やグラウンドへ移動する時間がふえます。
今の時期に整えておくと、秋のいちばん忙しい時期が静かになります。

名前と置き場所が、物が帰ってくる道になる

名前のない物は、落ちていても持ち主が分かりません。
拾った子が「返してあげたい」と思っても、返す先がないんです。
だから最初にやるのは、名前を書くこと。
中学生は名前を書くのを少し嫌がりますが、書いてあれば必ず帰ってくる、と理由で伝えると変わります。
そのうえで、落とし物を集める場所を教室の中に一つ決めます。
あちこちに散らばると、拾った物がそのまま行方不明になるからです。
集めた物は週に一度、みんなの前で返す時間をとります。
持ち主が名乗り出る場面が全員に見えると、拾って届けることが教室の当然になっていきます。
名前と置き場所は、物が持ち主へ帰るための道そのものです。

教室の棚を示して物の置き場所を伝える先生

教室を空ける時間こそ、二学期の弱点

物がなくなるのは、たいてい教室に誰もいない時間です。
体育、音楽、理科室への移動、行事の練習。
二学期はこの時間が一気にふえます。
だから、教室を出る前のひと手間を型にします。
机の上には何も置かない、財布やゲーム機など学校に必要のない物は持ちこまない、貴重品は学校の決まりに沿って預ける。
この3つを、行事の練習が本格化する前に全員で確認しておきます。
大切なのは、疑って言うのではなく、みんなの物を守るためだと理由で伝えることです。
先に決めてある教室は、何かあったときも落ち着いて動けます。
やり方が決まっていると、いざというときに担任が一人で抱えこまずにすみます。

教室を出る前の3つ
  • 机の上を空に:出しっぱなしの筆記具や教科書をしまってから出る。
  • 必要のない物は持ちこまない:理由を添えて、学期の入り口で確認する。
  • 落とし物は決まった場所へ:拾った物の行き先を全員が知っている状態にする。

名前、置き場、教室を空ける前のひと手間。
どれも特別なことではありません。
あたりまえを整えておくことが、いちばん静かな予防になります。

ポイント3:最後に、言葉で返す

見つかっても、見つからなくても、その日のうちに担任の言葉で教室に返します。
教室に残るのは物ではなく、そのあとの空気だからです。

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最後に、言葉で返すのポイントを紹介します

見つかった日に、終わりにしない

見つかると、よかったね、で終わらせたくなります。
けれど、その日の教室にはまだ張りつめた空気が残っています。
だから帰りの会で、見つけた子の名前を出して返します。
よく気づいたね、助かったよ、と事実で伝える。
すると全員が、この教室には気づいて動ける仲間がいる、と知ります。
あわせて、疑うような話にならなくてよかった、とこちらから言葉にしておきます。
そこに触れずに終えると、張りつめた空気だけが名前のないまま教室に残ってしまうからです。
見つかった日の30秒は、次に何かがあったときの教室の落ち着きをつくる時間になります。

見つからなかった日にこそ、言葉が要る

むずかしいのは、出てこなかった日です。
気まずさから何も言わずに終わらせると、その空白に子どもたちが勝手な話をあてはめてしまいます。
だから、その日のうちに事実だけ伝えます。
今日は見つからなかったこと、明日も先生は探すこと、そして誰かを疑ったままにはしないこと。
この3つを短く言い切ります。
持ち主の家庭へは、その日のうちに担任から伝えます。
あとから子ども経由で知るほうが、家庭の不安はずっと大きくなるからです。
そのときも、とられたと決めつけた言い方はせず、今わかっている事実と学校の動きだけを伝えます。
抱えきれないと感じたら、その日のうちに学年へ渡します。

見つからなかった日に言うこと
  • 事実:今日は見つからなかった、とごまかさずに伝える。
  • 継続:明日も先生が探す、と続きがあることを示す。
  • 約束:誰かを疑ったままにはしない、と言い切って終える。

気づいて動く人が、教室を守る

床に落ちている物を、何も言われなくても拾う子がいます。
この「気づいて動く」が、学級のいちばん小さな単位です。
拾う人が見えている教室は、物がなくなりにくくなります。
放っておかれる物がないので、ちょっとくらいいいや、が生まれる隙間がなくなるからです。
だから拾ってくれた子を、学級通信で名前を出して価値づけます。
読んだ仲間が、自分もやってみようと動く。
そうやって、拾う人がひとりからふたりへと静かにふえていきます。
物のトラブルへの手当てが、そのまま学級づくりに変わっていくんです。

学級通信を手にして教室で話す先生

見つかった日も、見つからなかった日も、最後は担任の言葉で閉じる。
この一手間が、教室を疑いから遠ざけてくれます。

おわりに

物は、また買えます。
けれど、一度教室に入った疑いは、物よりずっと長く残ります。
守りたいのは、そこです。

全部をそろえようとしなくて大丈夫です。
明日やることは、ひとつだけにしましょう。
落とし物を入れる箱を、教室の決まった場所にひとつ置く。
そして金曜の帰りに、まとめて返す。
行事の練習が本格化する9月に入る前の、今の1週間でやっておきたいひと手間です。

教室で物がなくなったときの3つの手順のまとめ図

ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。

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