
はじめに
トマトやキュウリの花は咲いたのに、なかなか実がならない。
理科や技術の授業で、そんな経験をした人は少なくないと思います。
実がつくかどうかを分けているのは、じつは「受粉」というしくみです。
この記事では、中学技術の生物育成で出てくる受粉と人工授粉を、花のつくりから順番に整理します。
実がならない原因は大きく3つあります。
それぞれの対策と、人工授粉のやり方、テストに出やすい計算問題まで、ひとつながりで確認していきましょう。
定期テストの前に、用語をもう一度見直したい人にも使えるようにまとめました。
動画とあわせて読むと、頭に残りやすくなりますよ。
- 花のつくり:めしべ・おしべの名前と、受粉から実ができるまでの流れ。
- 実がならない原因:虫・天気・肥料の3つを、見分けるポイントつきで。
- 人工授粉のやり方:手順とコツ、実のつく割合を求める例題2問。
受粉と人工授粉の全体像
野菜が実をつけるまでには、花が咲く、花粉が運ばれる、受粉する、受精する、実がふくらむ、という順番があります。
どこかで流れが止まると、花が咲いても実にならずに落ちてしまいます。
この記事では、その流れを3つのポイントに分けて見ていきます。
- ポイント1:花のつくりと受粉のしくみ。名前と流れをおさえます。
- ポイント2:実がならない原因。虫が来ない・気温と天気・肥料のかたよりです。
- ポイント3:人工授粉のやり方。手順とコツ、計算問題まで練習します。
ポイント1:花のつくりと受粉のしくみ
まずは、花のどこで何がおこっているのかを整理します。
受粉は、花粉がめしべの柱頭につくこと。
この一文を軸にすると、あとの内容がぐっと分かりやすくなります。
花のつくりと受粉のしくみのポイントを紹介します
めしべとおしべ、花のつくりを整理しよう
花のつくりの問題では、どこに何があるかを答えさせる出題が目立ちます。
めしべは花の中心にあり、先の部分が柱頭、根元のふくらんだ部分が子房です。
おしべはそのまわりにあって、先にある袋のような部分が葯、その中に花粉が入っています。
子房の中には胚珠という小さな粒があり、これがあとで種になります。
図を見ながら指でたどって、名前と場所をセットで覚えておくと、テストで迷いにくくなります。ノートに花の断面図をかいて、柱頭・子房・葯の3つに名前を書き込むと、図と言葉が結びつきます。
覚えるときのコツは、柱頭を「花粉の受け止め場所」、子房を「実になる部屋」と、はたらきで言い換えることです。
柱頭の表面はべたべたしていて、花粉がくっつきやすい作りになっています。
名前だけを丸暗記するより、はたらきとセットにしたほうが、記述問題にも対応しやすくなりますよ。

受粉と受精で実と種ができるしくみ
受粉と受精は、名前が似ているので混ざりやすい言葉です。
受粉は、花粉がめしべの柱頭につくこと。ここまでは花粉を運ぶ作業の話です。
そのあと、柱頭についた花粉から細長い管がのびて胚珠まで届き、受精がおこります。
受精が起こると、子房がふくらんで実になり、胚珠は種になります。
つまり、花粉がつくだけでは実にならず、受精までうまくいって初めて実と種ができるのです。花粉管は、めしべの中を通って胚珠まで伸びていく細い管だと覚えておくと、流れがイメージしやすくなります。言葉の意味を一つずつ確かめながら読み進めましょう。
順番を一列に並べると、花が咲く、受粉、受精、子房がふくらむ、実と種ができる、となります。
テストでは、この並べかえや、受粉と受精の言葉の使い分けがよく問われます。
実の中に種が入っているのは、胚珠が種になるから、と説明できれば満点の答えです。
一つの花に両方ある野菜と、花が分かれる野菜
野菜の花は、大きく2つのタイプに分けられます。
トマトやナスは、一つの花の中にめしべとおしべの両方があり、自分の花粉で受粉できます。
一方、キュウリやカボチャ、ゴーヤは、おばなとめばなが別々に咲きます。
実になるのはめばなだけで、おばなの花粉を運んでもらわないといけません。
実がつきにくいと言われやすいのは、後者の野菜です。見分け方は、花の根元にふくらみがあるかどうかです。実際の野菜の花を観察するときは、同じ時刻に複数の花を比べると違いを見つけやすくなります。ふくらみの大きさも、ひと目で比べられます。
根元に小さな実のようなふくらみがあるのがめばな、ふくらみがなく茎のように細いのがおばなです。
おばなのほうが数は多く、朝のうちに次々と咲きます。
育てている野菜がどちらのタイプなのかを知っておくと、実がならないときの原因探しも早くなりますよ。
- めしべ:先が柱頭、根元が子房。子房の中に胚珠があります。
- 受粉:花粉がめしべの柱頭につくこと。受精とは別のできごとです。
- 見分け方:根元がふくらむのがめばな、ふくらまないのがおばなです。
ポイント2:実がならない原因3つ(虫・天気・肥料)
花は咲いているのに実がならないとき、原因はおもに3つに絞れます。
虫が来ないこと、気温や天気が合わないこと、肥料がかたよっていることです。
原因が分かれば、対策もはっきり決まります。
実がならない原因のポイントを紹介します
原因1:花粉を運ぶ虫が来ていない
おばなとめばなが分かれている野菜では、花粉を運ぶ役がとても大切です。
その役をしているのは、おもにミツバチやアブなどの虫で、花の蜜を求めて飛んできます。
ところが、ベランダや温室の中は虫が入りにくく、雨の日は虫が飛びません。
花粉が運ばれないと、めばなは受粉できないまま黄色くなり、根元から落ちてしまいます。
花の数のわりに実が少ないときは、まず虫が来ているかどうかを観察してみましょう。虫の数をかぞえる観察は、朝の決まった時間に5分ほどおこなうのがおすすめです。記録をつけておくと、天気との関係も見えてきます。
風で花粉が運ばれる花もありますが、野菜の多くは虫の力に頼っています。
運ぶ相手がいない環境では、人が代わりに花粉を運ぶ必要があります。
この考え方が、あとで出てくる人工授粉につながります。
原因2:気温や天気が花粉に合っていない
二つ目の原因は、気温と天気です。
目安として、寒すぎても暑すぎても、花粉の元気がなくなり、受粉や受精がうまくいきにくくなります。
雨が降ると花粉がぬれて、柱頭にうまく運ばれません。
くもりの日が何日も続くと、虫の活動も弱まり、花粉も出にくくなります。
花の時期の天気が悪かった年に、実の数が減るのはこのためです。自分の力ではどうにもならない部分ですが、原因を知っておくだけで落ち着いて対応できます。あわてて対策をするより、まず何が原因かを整理することが大切です。畑の様子を毎日記録しておくと、原因を見つけやすくなります。
対策としては、雨よけの屋根をつける、ハウスの温度を調整する、といった環境の調整があります。
それでも難しいときは、人工授粉で確実に花粉をつけてあげる方法が役に立ちます。

原因3:肥料がかたよっている
三つ目は肥料のかたよりです。
肥料の三要素のうち、チッ素が多すぎると、葉やつるばかりが元気に育ってしまいます。
すると花の数が少なくなったり、咲いても落ちやすくなったりして、実がつきにくくなります。
これを「つるぼけ」と呼ぶこともあります。
かといって、肥料が少なすぎても株が弱って実はつきません。多すぎず少なすぎず、バランスをとることが大切です。葉の色や伸び方を毎週見て、少し早めに肥料を調整する習慣をつけると安心です。必要以上に与えず、様子を見ながら少しずつ調整しましょう。
葉の色がとても濃くて、つるばかりのびているときは、チッ素が多めのサインです。
追肥の量を見直して、実をつけるときに必要な養分に目を向けてみましょう。
- 虫が来ない:ベランダ・温室・雨の日は花粉が運ばれません。
- 気温と天気:寒すぎ・暑すぎ・雨・くもり続きは受粉しにくくなります。
- 肥料のかたより:チッ素が多いと葉ばかり茂り、花が落ちやすくなります。
ポイント3:人工授粉のやり方と手順(コツ・例題つき)
原因が分かったら、次は対策です。
虫が少ない環境でも実をつけやすくする方法が、人工授粉です。
人の手で花粉をめしべにつけてあげる。それだけで、実がつく確率は大きく上がります。
人工授粉のやり方のポイントを紹介します
人工授粉の手順を順番に確認しよう
人工授粉は、おばなとめばなが分かれている野菜でよく使う作業です。
手順は3つです。まず、咲いたばかりのおばなを根元からつみ取ります。
次に、花びらを外して、花粉のついたおしべを出します。
最後に、そのおしべをめばなの柱頭にやさしくちょんちょんとつけます。
綿棒や細い筆で花粉をとって、めばなの柱頭につける方法もあり、おばなが少ないときに便利です。綿棒は花粉をとりやすく、めばなの柱頭に軽く当てるだけでよいので、初めての人にもおすすめです。道具は使う前に洗って乾かし、花粉以外のものがつかないように気をつけましょう。
つけ終わったら、どのめばなに作業をしたかが分かるように、記録しておくと便利です。
数日後に根元がふくらんでくれば、受粉と受精がうまくいったしるしです。
黄色くなって落ちてしまったときは、条件を見直してもう一度挑戦してみましょう。

成功させるコツは時間帯と力加減
人工授粉を成功させるコツは、時間帯と力加減です。
花粉が元気で、花もしっかり開いている、晴れた日の午前中におこないましょう。
カボチャやキュウリの花は短い時間でしぼんでしまうので、咲いたその日にやることも大切です。
めしべの柱頭はとてもデリケートなので、強くこすらず、花粉をそっと乗せるイメージでつけます。
雨の日は花粉がぬれて使えないので、晴れ間を待つのがおすすめです。晴れた日でも、午後は花がしぼみやすいので、午前中のうちに終えるのが安心です。作業の時間は短くて大丈夫です。
作業の前に、手や道具をよく乾かしておくと、花粉がくっつきにくいというトラブルも防げます。
毎朝、水やりのついでに花をのぞく習慣をつけると、咲いたその日を逃しません。
観察と作業をセットにするのが、実づくりの近道です。
例題で計算にもなれておこう
テストでは、人工授粉の手順に加えて、簡単な計算問題も出ることがあります。
例題1です。めばな10輪に人工授粉をしたところ、8個が実になりました。実がついた割合は何パーセントでしょうか。
実になった数を花の数で割って100をかけます。8÷10×100で、答えは80パーセントです。
この割合のことを着果率ということもあります。
式の形を覚えておけば、数字が変わっても同じように解けます。問題文の「割合」「何パーセント」の言葉を見つけたら、実÷花×100の式を思い出しましょう。次の練習問題でも同じ手順で解いてみてください。
例題2です。おばな1輪でめばな3輪に人工授粉できるとします。めばなが12輪咲いたとき、おばなは最低何輪必要でしょうか。
めばなの数を3で割って、12÷3=4で、答えは4輪以上です。
割り算で必要な数を求める問題は、単位をそろえて式を立てる練習にもなります。
- 手順:咲いたおばなをつむ、花びらを外す、めばなの柱頭にそっとつける。
- コツ:晴れた日の午前中に、咲いたその日におこなう。
- 計算:実のつく割合は、実の数÷花の数×100で求めます。
テスト前の確認リスト
ここまでの内容を、定期テストの前に確かめられる形にまとめました。
用語の名前だけでなく、「なぜそうなるのか」を一言で言えるかどうかが得点の分かれ目です。
声に出して答えながら、ひとつずつチェックしてみてください。
つまずいた項目は、記事の該当箇所に戻って読み直すと、記憶に残りやすくなります。
- めしべの先を柱頭、根元を子房と言え、子房の中に胚珠があると説明できる。
- 受粉は花粉が柱頭につくこと、受精は花粉が胚珠まで届いたあとのできごと、と区別して言える。
- 子房が実に、胚珠が種になると説明できる。
- 実がならない原因を、虫・気温と天気・肥料のかたよりの3つで答えられる。
- 人工授粉は晴れた日の午前中、咲いたその日にやると答えられ、実のつく割合を計算できる。
よくある質問
受粉と受精は、何がちがうのですか
受粉は花粉がめしべの柱頭につくこと、受精はそのあとに花粉の中の核が胚珠まで届いて合わさることです。
受粉は「運ばれてつく」、受精は「中で結びつく」と覚えると区別しやすくなります。
受粉だけでは実になりません。受精が起こって初めて、子房が実に、胚珠が種に変わっていきます。
受精の前にある「花粉がつく」段階を受粉、「中で合わさる」段階を受精と分けて覚えましょう。図にすると、順番がさらに分かりやすくなります。テストでは、この2つの言葉の使い分けを問う問題が出やすいので、順番とセットで説明できるようにしておきましょう。
トマトにも人工授粉は必要ですか
必ずしも必要ではありませんが、実がつきにくいときは役に立ちます。
トマトは一つの花にめしべとおしべがあるので、自分の花粉で受粉でき、花がゆれるだけで花粉が落ちやすくなります。
ベランダなど風が通りにくい場所では、花の房を指で軽くはじいたり、支柱をそっとゆらしたりすると、実がつきやすくなります。
キュウリやカボチャのように、おばなとめばなに分かれている野菜ほど、人工授粉の効果は大きくなります。そのうえで、ベランダでも育てやすい野菜を選ぶと、人工授粉の手間も少なくなります。まずは身近な野菜で観察してみましょう。
おばなが足りないときは、どうすればよいですか
おばな1輪の花粉は、めばな数輪分に使えることが多いので、まずは落ち着いて数を数えましょう。
それでも足りないときは、翌日以降に咲くおばなを待つのが基本です。めばなは咲いたその日が勝負なので、当日咲いたおばなを優先して使います。
花粉が足りないからと、しぼんだ花や雨にぬれた花を使うのは避けましょう。
おばなは数が多く咲く野菜がほとんどなので、毎朝の観察を続ければ、たいてい間に合います。おばなを見つけたら、その日のうちに使うようにすると、無駄なく作業できます。いつ咲くかを毎朝確かめる習慣が、いちばんの近道です。
おわりに
実がなるためには、花が咲くだけでなく、花粉が柱頭につく受粉と、そのあとの受精が欠かせません。
実がならない原因は、虫が来ないこと、気温や天気、肥料のかたよりの3つに整理できます。
そして、人工授粉は、晴れた日の午前中に、咲いたその日におこなうのがコツでした。
用語の暗記だけでなく、「なぜ実がならないのか」「どうすれば実がつくのか」を自分の言葉で説明できると、テストでも実習でも力になります。
この記事のチェックリストを使って、ぜひ最後の確認に役立ててください。
ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。
人工授粉を成功させる実践のコツと、よくある失敗
手順を読んだだけでは、実際の花の前で迷うことがあります。ここでは、人工授粉を行うときの見きわめ方と、つまずきやすい点を整理します。
- ポイント1:時間帯:花粉が元気な、晴れた日の午前中に行う。
- ポイント2:花の選び方:開いたばかりの新しい花を選ぶ。
- ポイント3:やさしく扱う:柱頭を傷つけないよう、軽くふれる。

うまくいく人工授粉のコツを紹介します
午前中の晴れた日がねらい目
人工授粉は、晴れた日の午前中に行うのが基本です。花粉は、朝に元気な状態で出てきて、雨や湿気に弱い性質があります。雨の日や、花粉がしめっているときは、うまくつかないことがあります。授業の都合で時間が選べないときは、花粉が手や筆にさらさらとつくかどうかを確かめてから、作業にとりかかりましょう。
開いたばかりの花を選ぶ
めばなもおばなも、開いてから時間がたった花は、元気がなくなっています。花びらが開いて間もない、つやのある花を選びます。おばなは花粉がたっぷり出ているもの、めばなは柱頭がしっとりとして、ねばりのあるものが適しています。しおれかけた花を使うと、受粉しても実がふくらまないことがあるので、見た目をよく観察して選びましょう。
柱頭を傷つけないようにそっとつける
めしべの柱頭はデリケートな部分です。強くこすったり、筆をぐいと押しつけたりすると、傷んでしまい、花粉の発芽が悪くなります。花粉を柱頭の表面にそっとのせるイメージで、軽くふれます。おばなごと摘んで、花びらを外し、柱頭に直接ふれさせる方法もあります。どの方法でも、やさしさが成功のカギです。
受粉のあとの観察と、よくある疑問
人工授粉をしたあとは、実がきちんとふくらむかを観察することが大切です。結果を記録すると、次の作業の改善にもつながります。
うまくいったかどうかの見分け方
受粉が成功すると、数日のうちにめばなの付け根にある子房がふくらみ始めます。一方、失敗すると、子房が黄色くなって、そのまま落ちてしまいます。どの花に、いつ、人工授粉をしたかを札や記録に残しておくと、結果を比べられます。成功と失敗の違いを考えるのは、探究的な学習にもなります。
実がついたあとの世話
実がつき始めたら、水やりと追肥に気をつけます。実を育てるには、たくさんの栄養と水が必要です。ただし、水が多すぎると、実が割れたり、味がうすくなったりします。株が弱らないよう、実をつける数を調整する摘果という作業が必要な場合もあります。授業では、先生の指示に従って、観察を続けましょう。
テストで問われやすい表現
テストでは、「人工授粉を行う目的」を問われることがあります。答えは、「虫が少ない環境でも、確実に受粉させて実をつけるため」といった形です。また、「受粉」と「受精」を混同しないよう、「受粉は花粉がめしべの柱頭につくこと」と、自分の言葉で言えるようにしておきましょう。









