
はじめに
技術の授業で何かを作るとき、いちばん最初にやることは何でしょうか。
のこぎりを持つことでも、設計図をかくことでもありません。
「何の材料で作るか」を決めることなんです。
たとえば、同じ形の箱を作るとしても、木で作るのと、金属で作るのと、プラスチックで作るのとでは、重さも、丈夫さも、水への強さも、まったく別ものになります。
材料を間違えると、どれだけ丁寧に作っても、使いにくい作品になってしまうことがあるんですよ。
この記事では、材料を「なんとなく」ではなく「理由をつけて」選ぶための考え方を、中学技術の内容に沿ってまとめました。
木・金属・プラスチックの特徴、使う場面からの決め方、そして点数や費用の計算で比べる例題まで、順番に学んでいきましょう。
材料選びは、4つの観点とちょっとした計算で、だれでも理由をつけて決められます。
- 材料を選ぶ4つの観点:性質・加工・費用・環境の4つのものさしで考えます。
- 木・金属・プラスチックの特徴:それぞれの得意なことと弱点を整理します。
- 場面から材料を決める方法:ベンチと台所の道具を例に、使う条件から考えます。
- 点数と費用で比べる例題:数字を使って材料を比べる計算に挑戦します。
材料を選ぶ4つの観点
材料を選ぶときには、決まったものさしがあります。
それが、性質、加工のしやすさ、費用、環境への影響の4つです。
「性質」は重さや強さ、水への強さのこと。「加工」は切る、曲げる、穴をあけるといった作業のしやすさ。「費用」は値段と必要な量。「環境」はリサイクルのしやすさや、長く使えるかどうかです。
この4つを順番に確かめるだけで、迷ったときも理由をつけて決められるようになります。
- 性質:重さ・強さ・水への強さ・熱への強さなど、材料そのものの特徴です。
- 加工:切る・削る・曲げるといった作業が、学校の道具でできるかどうかです。
- 費用:板1枚の値段だけでなく、部品が何個とれるかも含めて考えます。
- 環境:長持ちするか、再生材料か、使い終わったあとに分別しやすいかを見ます。
ポイント1:木・金属・プラスチックの特徴をつかむ
中学の技術で出てくる代表的な材料は、木材、金属、プラスチックの3つです。
どれも身の回りにあふれていますが、得意なことと苦手なことははっきり分かれています。
まずはそれぞれの「得意分野」を言葉で言えるようにしておくと、あとの判断がぐっと楽になりますよ。
木・金属・プラスチックの特徴のポイントを紹介します
木材は軽くて加工しやすい
木材の最大の長所は、軽くて加工しやすいことです。
のこぎりで切り、かんなで削り、きりで穴をあけるという一連の作業が、学校にある道具だけでできます。
手ざわりがやわらかく、温かみがあるので、棚や椅子、本立てなど、身近な作品にもよく使われます。
実習で木材がいちばん登場するのは、こうした扱いやすさがあるからなんです。
たとえば、棚板を切って角をやすりで整え、ねじや釘でとめるまで、手に伝わる感覚をたよりに進められるので、初めてものづくりに挑戦する人にも安心な材料なんですよ。
ただし、弱点もあります。
木は水や湿気を吸ったり吐いたりして、形が少しずつ動いてしまうんですね。
ぬれる場所に置くと、反ったり、腐ったりすることもあります。
そのため、水まわりや屋外で使うときは、塗装をしたり、別の材料を選んだりする工夫が必要になります。
金属は強くて丈夫だが、重くてさびる
金属の長所は、なんといっても強さです。
力がかかっても曲がりにくく、折れにくいので、力のかかる部品や、体重を支える骨組みなどに向いています。
熱にも強く、火のそばで使う道具にも使われます。
鉄やアルミニウム、ステンレスなど種類はたくさんありますが、共通して力に耐える材料が多いのが特徴です。
自転車のフレームや建物の骨組み、工具が金属でできているのも、この強さがあるからです。
強さが命の場面では、心強い味方になります。
「とにかく丈夫さが必要」という場面では、金属がまず候補に上がると覚えておきましょう。
そのぶん、弱点もあります。
金属は重くなりやすく、持ち運ぶ作品には向かないことがあります。
また、種類によっては、水や空気にふれてさびてしまい、弱くなることもあるんですね。
金属の性質そのものは、別の回でくわしく扱いますので、ここでは「強いけれど重い、さびることがある」とつかんでおけば十分です。
プラスチックは水に強く、形をつくりやすい
プラスチックの長所は、水に強くて軽いこと、そして形をつくりやすいことです。
ぬれても腐らず、さびることもないので、洗い物をする場所や屋外で活躍します。
熱でやわらかくして型に入れれば、同じ形の製品を大量に作ることもできます。
身の回りの容器やおもちゃ、文房具などにプラスチックが多いのは、こうした扱いやすさのおかげです。
ペットボトルやお弁当の容器、ブロックのおもちゃまで、軽くて割れにくいプラスチックが選ばれているのは、使う場面に合う性質を持っているからなんですね。
また、色をつけやすいのも魅力です。
弱点は、熱に弱い種類が多いことです。
火や熱いものの近くで使うと、とけたり変形したりすることがあります。
また、木や金属に比べると、強さで劣るものも少なくありません。
「水には強いけれど、熱と強さには気をつける」と整理しておくと、使い分けがしやすくなりますよ。
ポイント2:使う場面から材料を決める
材料の特徴が分かったら、次は「どこで、だれが、何のために使うのか」から考えます。
材料に良い悪いはなく、場面に合うかどうかだけがあるんです。
ここでは、屋外のベンチと台所の道具という2つの例で、場面から材料を決める考え方を練習してみましょう。
先に使う条件を書き出すと、材料の候補は自然としぼれてきます。
使う場面から材料を決めるポイントを紹介します
屋外のベンチは水への強さと強さで決める
公園に置くベンチを考えてみましょう。
雨にぬれ、人が座り、何年も使い続けられますよね。
この場面で最優先になるのは、水への強さと、体重を支える強さの2つです。
木は加工しやすいものの、雨ざらしでは傷みやすい。金属は強いけれど、さびへの対策が必要。プラスチックは水に強いけれど、強さに気をつける、というように、特徴と場面を照らし合わせて考えます。
ベンチの条件をはっきりさせておけば、比べる材料の候補から外すべきものも見えてきます。
材料の名前から入らず、場面から入るのがコツです。
このように、「場面で何が大切か」を先に決めると、材料の特徴との照らし合わせが一気に楽になります。
ベンチの場合は、水と強さに加えて、長く使えるかどうかも大切な条件です。
条件をはっきりさせることで、「この材料にした理由」を人に説明できるようになるんですね。
台所の道具は熱・洗いやすさ・安全で決める
次は、台所で使うおたまやへらを考えてみます。
熱い鍋にふれ、毎日洗われ、食べ物にも直接ふれる道具ですよね。
ここで大切なのは、熱への強さ、水に強くて洗いやすいこと、そして口に入るものとして安全であることの3つです。
屋外のベンチとは、大切にする条件がまったく違うことが分かります。同じ材料でも、場面が変われば「向いているかどうか」が入れかわるんです。
熱いスープを入れたときに溶けてしまっては困りますし、においや味が移る材料も、食べ物にふれる道具には向きません。
安全面は特に大切です。
熱に弱い材料は、鍋の近くで変形する心配があります。
水を吸う材料は、毎日洗ううちに傷んだり、においが残ったりしやすくなります。
こうした「毎日使うときに起きること」を想像してみると、材料を選ぶ理由がもっとはっきりしますよ。
使う条件を書き出し、試して確かめる
材料を選ぶ前に、どこで使うのか、だれが使うのか、予算はいくらかを書き出しておきましょう。
これを設計では「制約条件」と呼びます。
条件が書いてあれば、材料を比べるときに「これは条件に合うかな」とすぐ確かめられます。
頭の中だけで考えるより、紙に書き出したほうが、抜けや思い込みに気づきやすくなるんです。
書き出す内容は、難しく考えなくて大丈夫です。置き場所、使う人の年齢や力、予算の上限、完成までの時間など、思いつくことを箇条書きにするだけでも、材料選びの助けになります。
そして、材料の性質はカタログだけでなく、実際に試して確かめるとよく分かります。
同じ大きさの材料を手で持ち比べて重さの違いを感じたり、水にぬらして変化を見たりしてみましょう。
結果は表にして残しておくと、あとで班の友達と話し合うときにも役立ちます。
ポイント3:数字で比べて、環境のことも考える
材料の特徴や場面がつかめても、最後に迷うことはありますよね。
そんなときは、点数や費用を計算して、数字で比べるという方法が使えます。
数字にすると、自分の感覚だけでなく、班のみんなにも伝わる説明になります。
さらに、使い終わったあとのことまで考えるのが、これからのものづくりの大切な視点です。
数字で比べて環境も考えるポイントを紹介します
重要度をかけて合計する点数の比べ方(例題1)
例題です。ベンチの観点の重要度を、強さ3、水への強さ3、費用2とします。
各材料を5点満点で採点し、重要度をかけて足します。
木は強さ3、水2、費用4なので、9たす6たす8で23点。金属は強さ5、水3、費用2なので、15たす9たす4で28点。プラスチックは強さ3、水5、費用4なので、9たす15たす8で32点です。
この条件では、プラスチックが最高点になります。
式を立てる前に、重要度と点数の表を作っておくと、計算の見落としを防げます。
表にすると、班の友達にも説明しやすくなります。
ただし、この点数はあくまで例です。
もし「強さがいちばん大切」という条件なら、強さの重要度を大きくして計算し直します。すると、金属が上に来ることもあるでしょう。
大切なのは、重要度を決めた理由を説明できること。点数は、決めるための道具であって、答えそのものではないんですね。
部品1個あたりの費用で比べる(例題2)
費用は、板1枚の値段だけで比べると間違えることがあります。
大切なのは、部品1個あたりの費用です。求め方は、板の値段を、とれる個数で割ります。
例題です。木の板は600円で4個、金属の板は1200円で6個、プラスチックの板は800円で5個とれるとします。
木は600割る4で150円、金属は1200割る6で200円、プラスチックは800割る5で160円になります。
実際のものづくりでも、材料を無駄なく使えるかどうかは、費用を左右する大きなポイントです。
切りくずが少ない材料取りを考えるのも大切です。
板の値段は金属がいちばん高いのに、1個あたりでは差がそれほど大きくないことが分かりますよね。
値段の高い板でも、たくさんとれれば、1個あたりの費用は下がります。
逆に、安い板でも、とれる個数が少なければ割高になります。
費用を比べるときは、必ず「1個あたり」に直す習慣をつけましょう。
環境への配慮と長持ちも観点に入れる
材料選びでは、環境への影響も大切な観点です。
長く使える作品は、買い替えが減るぶん、資源の節約になります。
また、再生材料やリサイクルしやすい材料を選ぶのも、ものづくりをする私たちにできる環境への配慮です。
安くて作りやすいからといって、すぐ壊れてしまう材料を選ぶのは、実は環境にもお財布にもやさしくないんですね。
たとえば、木製の製品は再び木材として使い回したり燃料にしたりでき、金属は溶かして新しい製品に作り直せます。プラスチックも種類ごとに分ければ再び資源になります。
使い終わったあとのことも考えてみましょう。
分別して資源として回収できるか、別の製品として生まれ変われるか。こうした見通しまで持てると、材料選びの理由がさらにしっかりしたものになります。
テストでも「環境への配慮」という観点は、よく問われるポイントです。
テスト前の確認リスト
ここまでの内容を、テスト前の確認用にまとめます。
材料選びの問題は、特徴を暗記するだけでなく、場面に合わせて理由を答える形で出ることが多いです。
次の5つを、自分の言葉で説明できるか、声に出して確かめてみてください。
1つでも詰まったら、その部分の説明に戻って読み直せば大丈夫ですよ。
- 材料を選ぶ4つの観点は、性質・加工・費用・環境です。
- 木は軽くて加工しやすいが、水と湿気で反りや割れが出ます。
- 金属は強くて丈夫だが、重く、種類によってはさびます。
- プラスチックは水に強く成形しやすいが、熱に弱い種類が多いです。
- 点数は「重要度×点数」の合計、費用は「値段÷とれる個数」で比べます。
よくある質問
テストでは材料の特徴をどこまで覚えればいいですか
まずは、木・金属・プラスチックの「得意なこと」と「苦手なこと」を、それぞれ1つずつ言えれば合格ラインです。
木は加工しやすいが水に弱い、金属は強いが重い、プラスチックは水に強いが熱に弱い、という形で覚えてみてください。
そのうえで、「ベンチにはどれが向くか」のように、場面とセットで理由を答える練習をしておくと、応用問題にも対応できます。
覚える量が多く感じるかもしれませんが、整理して覚えれば難しくありません。
特徴を一覧表にまとめて、毎日ながめるのも効果的です。ぜひ試してみてください。
点数で比べた結果と、自分の感覚がちがうときはどうしますか
まず、重要度の決め方を見直してみましょう。
感覚とちがう結果になるときは、自分が大切にしたい観点の重要度が低くなっていることが多いんです。
重要度を調整して計算し直し、それでも結果が変わらなければ、実際に材料を試して確かめるのがおすすめです。点数は決めるための道具で、最後は理由を説明できることがいちばん大切です。
点数が低かった材料を、そのまま切り捨ててしまわないことも大切です。その材料が低かった理由が、重要度の見落としにあるかもしれません。班で話し合うのもよい方法です。
計算問題で、費用や点数を間違えないコツはありますか
式を先に書いてから、数字を入れるのがコツです。
点数なら「重要度×点数」を観点ごとに書き出して足し算、費用なら「値段÷とれる個数」と書いてから計算します。
また、単位にも気をつけましょう。円と個数が混ざっていないか、1個あたりに直せているかを、答えを出したあとにもう一度確かめると、うっかりミスを減らせますよ。
計算の途中で、材料の名前と数字を一緒に書いておくと、どの数字がどの材料のものか迷いません。
最後に、答えが現実的な数字になっているかをチェックしましょう。たとえば1個15円や1個15000円なら見直しが必要です。
おわりに
今回は、材料の選び方を学びました。
まず使う条件を書き出し、次に性質・加工・費用・環境の4つの観点で候補を比べ、最後に試したり計算したりして数字で決める。この3ステップが基本です。
木は加工しやすく、金属は強く、プラスチックは水に強い。それぞれの得意分野を知っておくことが、材料選びの土台になります。
理由をつけて選べるようになると、ものづくりがもっと楽しくなりますよ。
ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。
材料選びで迷ったときの考え方と、具体的な場面
特徴や手順を覚えても、実際の製作では迷う場面が出てきます。ここでは、迷ったときに使える考え方と、身近な場面での判断例を紹介します。
- ポイント1:目的を先に決める:何に使うかを決めてから材料を選ぶ。
- ポイント2:条件に優先順位:絶対に必要な性質から順に並べる。
- ポイント3:道具で確認:学校にある道具で加工できるかを見る。

材料選びで迷わないポイントを紹介します
まず絶対に外せない条件を一つ決める
材料を選ぶときは、すべての条件を満たそうとすると迷ってしまいます。そこで、「これだけは外せない」という条件を一つ決めます。たとえば、水にぬれる場所で使うなら、水への強さが最優先です。それが決まれば、候補はかなり絞られます。あとは、費用や加工のしやすさで、残った材料を比べていきます。
学校の設備で加工できるかを確かめる
理想の材料があっても、学校の道具で加工できなければ、製作は進みません。木材なら、のこぎりやかんなで加工できます。金属は、弓のこや金切りばさみ、やすりが必要です。プラスチックは、種類によって加熱が必要なこともあります。製作の前に、使える道具と時間を確かめておくと、計画の見直しが少なくてすみます。
使い終わった後のことも考える
材料選びでは、作るときだけでなく、使い終わったあとのことも大切です。木は燃やせますが、金属やプラスチックは種類ごとに分けて回収する必要があります。長く使えるか、修理しやすいか、リサイクルしやすいかといった視点を持つと、環境にやさしい選択ができます。これは、テストの記述問題でも評価されやすい考え方です。
材料選びの失敗例と、よくある疑問
うまくいかなかった例から学ぶと、判断の力はぐんと伸びます。ありがちな失敗と、その理由を見ていきましょう。
見た目だけで選んで失敗する
色やつやなど、見た目だけで材料を選んでしまうと、使ったときに困ることがあります。たとえば、きれいな薄いプラスチック板で棚を作ると、重いものをのせたときにたわんでしまいます。見た目は最後に考えるものとして、まず強さや加工のしやすさを確かめましょう。完成した姿を想像しながら、使う場面をイメージするとよいでしょう。
費用だけで決めて後悔する
安い材料を選んだら、すぐに壊れてしまったという失敗もあります。費用は大切な観点ですが、長持ちするかどうかも合わせて考えます。少し高くても、長く使える材料のほうが、結果として得になる場合もあります。使う期間と、取りかえる手間を含めて、全体の費用を考える視点が大切です。
テストで理由を答えるときの型
テストでは、「なぜその材料を選んだか」を問われます。答え方の型は、「(材料)は(性質)なので、(使う場面)に適している」です。たとえば、「金属は強くて丈夫なので、重い荷物をのせる棚に適している」と書きます。性質と場面の二つを結びつけて書くと、理由が伝わる答えになります。










