中学校のいじりといじめの違い|担任が見分ける3つの視点と声かけ

はじめに

教室に笑い声が響いている。
楽しそうに見えるのに、なぜか胸のどこかが引っかかる。
そんな場面に出会ったことはありませんか。

「あれは、いじりなのか。それとも、いじめなのか」
その境目に迷うのは、あなたが子どもたちをよく見ている証拠です。
ただ、迷ったまま流してしまうと、見えないところで子どもの負担が積み重なっていくことがあります。

体育祭や合唱コンクールの練習が始まるこの時期は、仲間との距離がぐっと近くなります。
距離が近くなると、冗談も増えます。
そして、いじりも増えやすくなります。

私自身にも、笑って見過ごしてしまった苦い経験があります。
ある子が毎日のようにいじられていて、本人も笑っていたので、いつものノリだと思っていました。
ところが、あとで読んだ日記に「笑うしかなかった」と書かれていたのです。
この記事では、その反省をもとに、中学校の担任がいじりといじめの違いを見分けるときの3つの視点と、その場で使える声かけをお伝えします。

この記事で分かること
  • いじりといじめを、言葉ではなく何で見分けるか
  • その場で使える、責めずに笑いの向きを変える一言
  • いじりが起きにくい教室のつくり方と、共有のタイミング

いじりといじめを見分ける3つの視点

迷ったときに使う視点は、3つだけです。
1つ目は、言われた子の返しと表情を見ること。
2つ目は、その場では叱り飛ばさず、短い一言で笑いの向きを変えること。
3つ目は、教室にいじり以外の笑いの居場所を増やすことです。
どれも、特別な技術や新しい道具は要りません。
今日の休み時間から、見る場所を少し変えるだけで始められます。

そして最初に決めておきたいのは、「いじりか、いじめか」の白黒を担任ひとりでつけようとしない、ということです。
白黒の判定より先に、子どもの様子を丁寧に見る。
その順番を守るだけで、動き方がぐっと楽になります。

3つのポイント
  • ポイント1:言われた子の返しを見る:言葉ではなく、受け手の反応で境目を見分ける。
  • ポイント2:その場は短く向きを変える:叱り飛ばさず、一言で笑いの流れをずらす。
  • ポイント3:笑いの居場所を増やす:いじり以外の笑いを仕組みにして、迷ったら共有する。

ポイント1:いじりといじめの違いは「言われた子の返し」で見る

同じ言葉でも、仲のよい二人の間では笑いになり、関係が違えば傷になります。
だから、言葉の中身だけで判断してはいけません。
見るのは、言われた子の返しと表情です。
ここを押さえるだけで、迷いはかなり減ります。

HeatKeep

言われた子の返しで見るポイントを紹介します

なぜ言葉の中身だけでは、いじりかどうか判断できないのか

「お前、また忘れ物かよ」という言葉があるとします。
仲のよい二人が笑いながらやり取りするなら、ただの冗談として成り立ちます。
ところが同じ言葉を、言い返せない相手から毎日かけられたらどうでしょう。
言葉は同じでも、受け取る側の苦しさはまったく違ってきます。
つまり境目は、言葉の中ではなく、言われた子がその場でどう感じているかにあります。
言葉の強さで決めないことが、見誤らないための第一歩です。
担任が見る軸を、言葉から受け手へ移す。
これだけで、迷いの半分はほどけていきます。

たとえば休み時間に、ある子が寝ぐせをからかわれたとします。
その子が笑って「うるさいな」と言い返し、周りも一緒に笑っているなら、返し合いが成り立っている場面です。
ところが同じからかいに、その子が何も返さず、視線をそらして口元だけ笑っていたら、少し立ち止まって見たいところです。
この二つは、耳で聞いた言葉だけでは区別がつきません。
見るのは、言葉のあとの一秒の反応です。

返せる笑顔と、返せない笑顔の見分け方

返せる笑顔には特徴があります。
言い返す、やり返す、ノリで話題を広げるなど、その子が自分から動いています。
目も口もゆるんでいて、別の場面では立場が入れ替わることもあります。
返せない笑顔は違います。
黙って口元だけで笑う、話題をそらす、目が笑っていないといった様子が見られます。
笑いが終わったとたんに表情が消えるのも、大切なサインです。
この違いは、慣れると数秒で見分けられるようになります。
まずは「返せているか」の一点だけを、休み時間に意識して見てみてください。

休み時間の教室で、友だちの言葉にどう返そうか考える生徒のイラスト

もうひとつ見たいのが、ネタにされる子が毎回同じかどうかです。
健全な冗談なら、いじる側といじられる側は場面ごとに入れ替わります。
ところが、いつも同じ子が笑われる役になり、その役が固定されていくときは注意が必要です。
部活や小学校からの上下関係が、そのまま教室に持ち込まれていることもあります。
1週間だけ、誰がネタになったかを頭の中でメモしてみましょう。
偏りが見えたら、それが立ち止まるきっかけになります。

笑いが終わって、ひとりになった瞬間を見る理由

みんなの前で笑っていた子が、席に戻ったあとにどんな顔をしているか。
ここに、その子の本音がいちばん出やすいと私は感じています。
集団の中では、笑って合わせるほうが楽だからです。
ところが一人になった瞬間には、その必要がなくなります。
机に伏せる、ノートを見つめて動かない、廊下で急に早足になる。
そんな小さな変化が見えたら、あとで声をかける合図です。
授業が始まる前の1分間や、移動教室の廊下で、ふっと見てみましょう。
見るだけでも、担任のまなざしは子どもに伝わっていきます。

あした見る3つのサイン
  • 返し:言い返せているか、黙って笑うだけになっていないか。
  • 表情:笑いが終わった直後に、表情が消えていないか。
  • 役割:ネタになるのが、いつも同じ子になっていないか。

気になったら、あとで一対一で「さっきのやりとり、どうだった?」と聞いてみてください。
「いじめられてる?」とまっすぐ聞くと、多くの子は「違う」と否定します。
受け止められる余白のある聞き方のほうが、本音が出やすいのです。
もし「別に」と返ってきても、それで構いません。
聞かれたという事実が、あとで話せる相手がいるという安心になります。

ポイント1のまとめです。
境目は、言葉ではなく受け手の中にあります。
返しの有無、笑顔の質、役割の固定、そしてひとりになった瞬間の表情。
この4つを見る目を持っているだけで、教室の景色は少しずつ変わって見えてきます。

ポイント2:いじりが気になったときの声かけは「短く、向きを変える」

いじりが気になったとき、いちばんやってしまいがちなのが、その場でいじった子を強く叱ることです。
気持ちはとてもよく分かります。
ただ、みんなの前で叱ると、いじりは見えない場所へ潜りやすくなります。
目指すのは犯人探しではなく、笑いの向きをそっと変えることです。
そのコツは、短く、あとで、否定しない、の3つです。

HeatKeep

その場の声かけのポイントを紹介します

なぜ、その場で強く叱らないほうがいいのか

みんなの前でいじった子を強く叱ると、教室の空気は一瞬で静まります。
叱られた子は面目をつぶされたと感じ、反発する気持ちが生まれます。
言われていた子も「自分のせいで空気が悪くなった」と感じてしまうことがあります。
結果として、いじりは消えるのではなく、人目のない場所へ移っていきます。
私はこの流れを何度も見てきました。
その場の目的は、止めた証拠を残すことではなく、いじられていた子の負担を軽くすることです。
だからこそ、その場は短く、穏やかに、流れだけを変えます。

声かけの3つの型
  • 全体へ:その場で、責めずに軽く一言だけ投げかける。
  • いじった子へ:あとで一人ずつ、意図を聞くところから入る。
  • 言われた子へ:あとで一対一で、味方として様子を聞く。

やりがちな失敗が、教室の全員の前で「今の、いじめだよ」と言い切ってしまうことです。
言葉としては正しくても、事実を確かめる前の断定は、子どもたちの心を閉じさせます。
その場では判定せず、様子を見ながら短い一言にとどめる。
判断は、あとで本人たちの話を聞いてからで間に合います。
間に合わせるために、その場は「短く」を合言葉にしてください。

いじった子の「面白くしたかった」を認めるところから入る

いじる子の多くは、悪意があるわけではありません。
場を盛り上げたい、仲間に入りたい、ノリを合わせたい。
そんな気持ちが、少し行き過ぎた形で出ていることがほとんどです。
だからあとで個別に声をかけるときは、否定ではなく意図を認めるところから入ります。
「面白くしたかったんだよね」と受け止めてから、「相手は自分のペースで受け取れていたかな」と一緒に考えます。
意図を認めてもらえた子は、自分の行動を振り返る余裕が生まれます。
反対に、頭ごなしに否定すると、防御に力を使い切ってしまいます。

使える言い換えを2つ紹介します。
「それ、相手が笑い返せる冗談かな」
「面白い発想だね。その言い方だと、聞いた人はどう感じるかな」
どちらも責める形ではなく、考えてもらう形の問いかけになっています。
言葉づかいそのものを立て直したいときは、日常の言い換えを積み重ねるやり方も役に立ちます。

全体への一言で、笑いの向きをそっとずらす

全体に向けては、責めずに問いかける一言が向いています。
たとえば「それ、みんなで笑えてるかな?」です。
疑問形なので、誰かを名指しで責めずに済み、教室が凍りにくいのが特長です。
もうひとつ、私は語りとして「笑いは全員が笑えたら本物だよ」と繰り返し伝えています。
一度で伝わるとは考えず、日常の中で何度も置いていくのがコツです。
続けるうちに、子どもたちのほうから「今のは違うかも」と言い出す場面が出てきます。
それが、教室の笑いの基準が育ち始めたサインです。

先生が短い一言で生徒に問いかけ、生徒がうなずいているイラスト

一言を投げても、反応が薄い日もあります。
そのときは無理に続けず、授業や次の活動へ話題を移して、流れを切り替えましょう。
大切なのは、その場で決着をつけることではなく、あとで個別に見る機会を残すことです。
「その場の一言」と「あとの個別対応」は、必ずセットで考えてください。
どちらか一方だけでは、いじられていた子の安心にはつながりません。

ポイント2のまとめです。
その場は、短く。個別の話は、あとで。入り口は、否定ではなく意図を認めることから。
この3つを守れば、叱らなくても、笑いの向きは少しずつ変わっていきます。

ポイント3:いじりが起きにくい教室は「笑いの居場所」を増やして育てる

いじりは、教室に「ほかの笑い方」が少ないときに増えます。
だから、いじりを止めるだけでなく、笑いの居場所を増やす視点が欠かせません。
体育祭や合唱コンクールの練習が始まるこの時期は、仲間との距離が近くなり、ネタ探しの場面も増えます。
いじりを減らす近道は、いじり以外の笑いを教室に増やすことです。

HeatKeep

笑いの居場所づくりのポイントを紹介します

なぜ、笑いの選択肢が少ないといじりが増えるのか

人は、盛り上げる方法をほかに知らないと、いちばん手っ取り早い方法に頼ります。
中学生にとって、それが「誰かをネタにして笑う」ことである場合は少なくありません。
笑いを取りたい気持ちそのものは、悪いものではないのです。
問題は、笑いの出し方の選択肢が、ひとつかふたつしかないことです。
選択肢が増えれば、わざわざ誰かを傷つけなくても、教室は明るくなります。
だから担任の仕事は、いじりを叱ることだけでなく、別の笑いの出し方を教室に用意しておくことだと考えています。
この発想に変えると、指導が「禁止」から「提案」に変わります。

先生が教室のつながりを広げるように手を差し出しているイラスト

たとえば、自分の失敗談を自分から笑いにする「自分ネタ」があります。
相手をほめて笑いを生む「ほめいじり」もあります。
クイズやなぞかけのように、誰も傷つかない笑いもあります。
こうした出し方を担任が先に見せておくと、子どもたちは真似をしやすくなります。
先生自身が自分のうっかりを笑いにする姿は、それだけで最高の見本になります。

「ありがとう」と得意を見せる場を、毎日の仕組みにする

笑いの居場所は、仕組みにすると続きます。
ひとつ目は、帰りの会での「ありがとう」の時間です。
一日に数人でいいので、「今日助かったこと」を一言ずつ言い合います。
ふたつ目は、係や役割の中で、それぞれの得意を見せる場をつくることです。
絵が得意な子は掲示係、話すのが得意な子は連絡係、といった具合です。
いじられる以外の出番があると、その子のクラスでの立ち位置が変わっていきます。
立ち位置が変わると、周りの見る目も、笑いの質も変わっていくのです。

気をつけたいのは、「ありがとう」を義務にしてしまうことです。
言わされている空気が出ると、かえって白けてしまいます。
最初は担任が先に「今日、机を運んでくれて助かったよ」と具体的に伝えます。
その姿を見て、子どもたちが少しずつ真似を始めます。
形が整うまでの数週間は、担任が種をまく期間だと割り切りましょう。

ひとりで白黒をつけず、チームで見る理由

続いている、広がっている、言い返せない。
この3つが見えてきたら、担任ひとりで抱えずに、学年や管理職へ早めに共有します。
法律の上でも、いじめは「された側が心身の苦痛を感じているか」を軸に考えます。
つまり、いじりかどうかを、いじる側の意図や担任の感覚だけで決めなくてよいのです。
迷った段階で共有することは、失敗ではなく、子どもを守るための正しい手順です。
学校には、複数の目で見るための仕組みがあります。
その仕組みを、遠慮なく使ってください。

共有の目安と記録の3点
  • 共有の目安:続いている・広がっている・言い返せない、のどれかが見えたとき。
  • 記録するもの:日付・場面・言葉・言われた子の様子を、事実だけ短く。
  • 伝え方:「気になる場面があったので、共有させてください」と切り出す。

記録は、長く書く必要はありません。
「9月18日 休み時間 ◯◯さんが同じ呼び名で3回笑われた。返しはなく、視線を下げていた」くらいで足ります。
感想や推測は書かず、見たことだけを残します。
短くても、あとで並べると、いつから何が起きていたかがはっきり見えてきます。
記録があると、学年での相談も、保護者への説明も、落ち着いて進められます。
子ども同士のやり取りを聞き取るときの注意点は、こちらの記事でも整理しています。

ポイント3のまとめです。
いじりを減らすのは、禁止よりも、別の笑いの居場所です。
そして、境目に迷ったときは、担任ひとりで背負わず、記録して共有する。
それは弱さではなく、子どもを守るための、いちばん確かな動き方です。

明日の確認リスト

ここまでの内容を、あしたの教室で確かめられる形にまとめます。
全部をやろうとしなくて大丈夫です。
まずは、見るだけのものから始めてみてください。
見ることは、担任にしかできない仕事です。
そして子どもにとっては、「先生は気づいている」という安心にもつながります。
どれも、その日のうちに確かめられる小さなことばかりです。
チェックの結果を、誰かに見せる必要はありません。

あした、教室でここだけ見る
  • 返し:からかわれた子が、笑いながら言い返せているかを見る。
  • 表情:笑いが終わった直後に、表情が消えていないかを見る。
  • 顔ぶれ:ネタになるのが、いつも同じ子になっていないかを見る。
  • 一言:「それ、みんなで笑えてるかな?」を、一度だけ口にしてみる。
  • 共有:続く・広がる・返せないが見えたら、放課後に学年の先生へ一声かける。
明日の一歩を、もう少し楽にする

そのまま使える「叱る前の10秒と、伝わる言い換え30」を、公式LINEで無料でお渡ししています。
登録された方には「学級通信100号」もあわせてお送りしています。

よくある質問

本人が「大丈夫」と言っているとき、担任は動かなくていいですか

大きくは動かず、ただし見ることはやめない、が答えです。
「大丈夫」は本音のこともあれば、その場を収めるための言葉のこともあります。
そこで、本人の言葉を信じつつ、返しや表情、ひとりになった瞬間の様子を見続けます。
数日後にもう一度、「あのあと、変わりはない?」と軽く聞いてみるのも効果的です。
問いかけを一度きりにせず、時間を置いてもう一度届けることが、話しやすさにつながります。
本人が話したくなるまで待てる担任の姿勢が、そのまま安心を生みます。

いじった子を呼んで話すと、逆恨みされませんか

注意ではなく、意図を聞く話し方にすれば、逆恨みのリスクは大きく下がります。
「怒られる」と身構えている子には、まず「面白くしたかったんだよね」と気持ちを受け止める一言から入ります。
次に、「相手は自分のペースで受け取れていたかな」と、行動を一緒に考えてもらいます。
この順番を守るだけで、子どもは自分の行動を落ち着いて振り返りやすくなります。
呼ぶ場所は周りの目のない静かな場所にして、時間も短めにします。
最後に「教えてくれてありがとう」と伝えると、対立ではなく協力の空気で終われます。

保護者には、いじりの段階でも伝えたほうがいいですか

続いている、広がっている、本人が苦しさを口にした。このどれかがあれば、早めに伝えるのが基本です。
ただし個人の判断で先走らず、学年や管理職と相談して、伝える内容と担当を決めてからにしましょう。
伝えるときは、感想ではなく、日付と場面と様子といった事実を中心に、「一緒に見守っていきたい」という姿勢で話します。
反対に、単発で本人にも変わりがない場合は、まず学校の中で見守るだけで十分です。
迷ったら、ひとりで決めず、学年の先生に相談してください。

おわりに

いじりか、いじめか。その境目は、言葉の中ではなく、言われた子の中にあります。
担任がすべてを見抜く必要はありません。
言われた子の返しと表情を見て、その場は短く笑いの向きをそっと変えて、教室に別の笑いの居場所を増やしていく。
迷ったときは、ひとりで白黒をつけずに、チームで見ていけば大丈夫です。
笑い声のあふれる教室は、先生と子どもたちが一緒につくっていくものです。
あなたの気づきは、すでに教室を守り始めています。
どうか自分を責めすぎず、あした、できるひとつから始めてください。

いじりを見分ける3つの視点のまとめ図

ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。

学級経営のヒントを受け取る

LINEで「叱る前の10秒と、伝わる言い換え30」を無料プレゼント中。
叱る前の10秒チェックと、言いがちな言葉の言い換え30をまとめました。明日の教室でそのまま使えます。

生徒との絆を深め、理想の学級を実現させませんか?