「うざい」「だるい」が増えてきたクラスへ ― 叱らずに言葉を立て直す3つの指導

はじめに

7月に入って、クラスの言葉づかいが気になっていませんか。
「うざい」「だるい」「どうせ無理」。
4月には聞こえなかったはずの言葉が、教室のあちこちから聞こえてくる。
注意すればその場は静かになるけれど、次の日にはまた元通り。
そんな毎日に、少し疲れていませんか。

実は、7月に言葉が乱れるのには理由があります。
4月から3か月がたち、子どもどうしの関係に「慣れ」が生まれて、遠慮が消えていく時期なんです。
そこに暑さと疲れが重なって、言葉はどんどん雑になっていきます。
そして乱れた言葉は、まねされて広がります。
ひとりの「うざい」が、気づけばクラスの口ぐせになってしまうんですよ。

でも、安心してください。
言葉の乱れは、叱らなくても立て直せます。
この記事では、言葉そのものを注意するのではなく、言葉の「土台」から立て直す3つの指導を紹介します。
どれも特別な準備はいらず、明日の教室からすぐに始められるものばかりです。

言葉を立て直す3つの指導

最初に、この記事の地図をお見せします。
大切なのは、言葉は「心の出口」だということです。
どんな心を選ぶかが先にあって、言葉はあとからついてきます。
だから、言葉だけを叱ってもすぐに戻ってしまうんです。
心を育て、教室の言葉の文化を変え、置き換えの技術を渡す。
この3方向からアプローチすると、注意しなくても、いい言葉が自然に増えていきますよ。

3つのポイント
  • ポイント1:言葉の前に心を選ぶ:言葉でなく「どんな心を選んだの?」と問いかける。
  • ポイント2:ダメ出しからホメ出しへ:教師がお手本になり、いい言葉を見つけて価値づけて返す。
  • ポイント3:言葉の置き換えを教える:「どうせ無理」を「だったらこうしたらできる」に変える技術を渡す。

ポイント1:言葉の前に心を選ぶ

乱れた言葉を聞いたとき、多くの先生は「その言葉はダメだよ」と言葉そのものを注意します。
でも、それではなかなか変わりません。
言葉を選ぶ前に、心を選んでいる。ここに働きかけるのが最初の一歩です。

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心を選ぶ指導のポイントを紹介します

なぜ言葉だけを注意しても直らないのか

「言葉づかいに気をつけなさい」と何度言っても直らないのは、あなたの指導力の問題ではありません。
注意する場所が少しちがうだけなんです。
言葉は心の出口です。
心が「イライラ」や「攻撃」のままなら、口から出る言葉だけを取りしまっても、また同じ言葉が出てきます。
逆に、心が「思いやり」に変われば、優しい言葉は自然に出てくるんですよ。
つまり、言葉の指導とは、実は心の指導なんです。
そう考えると、注意しても直らない毎日に、別の入り口が見えてきますよね。

「心を選ぶ」という発想が生む変化

子どもは、言葉を注意されると反発します。
「別にいいじゃん」と返ってきて、指導が対立になってしまうこともありますよね。
でも、「いま、どんな心を選んだの?」と問われると、子どもは考え始めます。
心は誰かに決めつけられるものではなく、自分で選ぶものだからです。
この「考える時間」こそが、本当の言葉の指導になります。
叱られて黙るのではなく、自分の心をふり返って言葉を選び直す。
その経験を重ねた子は、先生がいない場面でも言葉を選べるようになっていきますよ。

教室で先生が女子児童と穏やかに対話している場面

心を問いかける声かけの原則

声かけで大切なのは、責めないことです。
とがめる口調で「どんな心なの!」と言えば、それはただの叱責になってしまいます。
静かに、短く、問い返す。
そして、言い直せたら「その言葉、いいね」と受け止める。
この往復が、子どもの中に「言葉は選べる」という感覚を育てます。
すぐに言い直せなくても大丈夫です。
問いかけられた事実が残るだけで、次の場面の言葉は少しずつ変わっていきますよ。
焦らなくて大丈夫。問いかけは、くり返すほど子どもの中に静かに積み重なっていきます。

心を問いかける3つの声かけ
  • 「その言葉、どんな心から出たのかな」:言葉でなく心に目を向けさせる。
  • 「どんな心で言い直せそう?」:選び直すチャンスを渡す。
  • 「その言い方、いいね」:言い直せた瞬間を必ず受け止める。

言葉の前に心がある。
この順番をおさえるだけで、言葉の指導は「取りしまり」から「育てる関わり」に変わります。
それが、立て直しの土台になるんです。

ポイント2:ダメ出しからホメ出しへ

2つ目は、教室に流れる言葉の「文化」を変えるアプローチです。
人のダメなところは黙っていても目につきますが、いいところは意識して見ないと見えません。
だからこそ、まず教師が「ホメ出し」のお手本になるんです。

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ホメ出しのポイントを紹介します

言葉の乱れは「注目の向き」の問題である

言葉が乱れている教室では、実は「ダメ出し」が主役になっています。
子どもどうしのツッコミ、からかい、そして先生の注意。
教室の注目が「悪いところ探し」に向いているんです。
この向きを変えない限り、注意で言葉を減らしても、また別の乱れた言葉が生まれます。
逆に、注目が「いいところ探し」に向いた教室では、乱れた言葉は少しずつ居場所をなくしていきます。
減らすのではなく、いい言葉で満たしていく発想ですね。
取りしまりが減るぶん、先生自身の心もぐっと楽になりますよ。

教師が最初のお手本になる理由

子どもは、先生の言葉をよく聞いています。
先生が子どものよい行動を見つけて、みんなの前で言葉にして返す。
「今朝、プリントを配ってくれた人に『ありがとう』と言えた人がいたね」。
そんなひと言を毎日続けると、子どもがまねを始めます。
ほめられた子はもちろん、聞いていた子の中にも「いいところを見つける目」が育つからです。
教師のホメ出しは、教室全体への言葉の授業なんですよ。
特別な時間はいりません。帰りの会のひと言からで大丈夫です。

教室で児童たちが笑顔で拍手し合っている場面

「ありがとう」が学級の空気を変える仕組み

ホメ出しの中でも、いちばん力があるのは「ありがとう」です。
「ありがとう」は、言われた人を喜ばせ、言った人を満たし、聞いていた周りまで温かくします。
たった一言でこれだけの効果がある言葉は、ほかにありません。
だから、「ありがとう」と言えた子を見つけたら、必ず価値づけて返してください。
「あたりまえ」と流されていた場面に「ありがとう」が増えると、教室の空気が目に見えて変わります。
1学期の残りは、その種まきにちょうどいい時期ですよ。

明日からのホメ出し3ステップ
  • 見つける:「いいところを探す」と決めて子どもを見る。1日1つでよい。
  • 言葉にする:見つけた事実を、その日のうちに学級全体へ言葉で返す。
  • 広げる:「ありがとう」と言えた子を価値づけ、まねする子を増やす。

ダメ出しからホメ出しへ。
教室の注目の向きが変われば、言葉の文化が変わります。
そしてその最初のひとりは、先生であるあなたなんです。

ポイント3:言葉の置き換えを教える

3つ目は、子ども自身に「技術」を渡すアプローチです。
「いい言葉を使いましょう」という心がけだけでは、なかなか行動は変わりません。
言葉の置き換えを「型」として教えれば、どの子にも練習できる技術になります。

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言葉の置き換えのポイントを紹介します

精神論ではなく技術だから誰でもできる

置き換えは、とてもシンプルです。
「あたりまえ」を「ありがとう」と言えるのが感謝。
「もうダメだ」を「これからだ」と言えるのが希望。
「疲れた」を「がんばった」と言えるのが努力。
ネガティブな言葉が出そうになったら、ポジティブな言葉に言い換える。
それだけで、心のほうがあとから変わっていくんです。
「明日から1つだけ言葉を変えてみよう」と伝えると、子どもは無理なく取り組めますよ。
学級全体で同じ型を共有すれば、子どもどうしで声をかけ合う姿も生まれてきます。

教室に貼りたい置き換えの例
  • あたりまえ → ありがとう:感謝が生まれる置き換え。
  • もうダメだ → これからだ:希望が生まれる置き換え。
  • もういいや → まだできる:ねばり強さが生まれる置き換え。

「どうせ無理」を放置してはいけない理由

数ある言葉の中で、「どうせ無理」だけは放置しないでください。
この言葉は、考えることそのものを止めてしまう言葉だからです。
「どうせ無理」と口にした瞬間、子どもはできる方法を探すのをやめます。
しかも、この言葉は連鎖します。
誰かが言えば、周りの子も学んでしまうんです。
だから、聞こえたら必ず「だったらこうしたらできる、って考えてみよう」と返します。
言葉が思考のスイッチになっていることを、子どもと共有しておきたいですね。

先生と児童たちがグループで前向きに話し合っている場面

否定しない話し合いが学級を育てる

置き換えは、話し合いの場面でも使えます。
友達の意見への返し方には、3つの段階があります。
「それは違うよ」と返すのがNo。
「いいね、でもさ」と返すのがYes, but。
「いいね、あとはこうしたらもっとよくない?」と付け足すのがYes, Andです。
Noは相手を傷つけますが、Yes, Andなら相手の味方のまま意見を伝えられます。
全員が完璧にできなくても大丈夫。
「Noだけはやめよう」から始めるだけで、話し合いの空気は確実に変わりますよ。

心がけではなく、練習できる技術として渡す。
これが3つ目の指導です。
型があるから、言葉づかいが苦手な子にもチャンスが生まれるんです。

おわりに

今回は、言葉が乱れてきたクラスを叱らずに立て直す3つの指導を紹介しました。
言葉の前に心を選ぶことが土台になり、ホメ出しが教室の空気をつくり、置き換えがひとりひとりの技術になる。
3つはつながっていて、そろったとき、注意しなくてもいい言葉が自然に増えていきます。
全部は無理でも大丈夫です。
まずは明日、子どものいいところを1つ見つけて、言葉にして返すことから始めてみてください。
教師の言葉は、学級の言葉になります。
あなたが使う言葉が、あなたのクラスをつくるんですよ。

叱らずに言葉を立て直す3つの指導のまとめ図

ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。

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