
はじめに
体育祭が終わったあと、教室の空気が急にすっと静かになった気がする。
そんな9月を過ごしていませんか。
合唱コンクールの本番はまだ先で、生徒たちの気持ちもどこか浮ついたままで、なかなか熱が入らない。
担任としては「そろそろ切り替えなきゃ」と、焦る気持ちが出てくる時期でもありますよね。
まわりの先生も同じように、どこか手ごたえのなさを感じているかもしれません。
実はこの感覚、あなたの学級経営がうまくいっていないサインではありません。
この記事では、9月という時期の"正体"と、10月・11月の合唱コンクールという山を迎える前に、担任がやっておきたい3つの整えをお伝えします。
気合を入れ直す前に、ぜひ最後まで読んでみてください。
- 9月にやる気が落ちて見えるのは、実は自然な理由があること
- 行事の熱気で見えにくくなった「当たり前」の戻し方
- 合唱コン本番で使う「語り」を、今のうちに準備するコツ
結論、9月は"谷"の月です
先に結論をお伝えします。
9月にやる気が出ないのは、決して珍しいことではありません。
1年間の中には「山」と「谷」があり、9月はまさに"谷"にあたる時期だからです。
山は10月・11月の合唱コンクール。
谷である今は、山に向けて力をためる準備期間なんです。
- 整え1:谷だと自覚する:無理に気合を入れ直さず、準備期間だと捉える。
- 整え2:当たり前を1つ点検する:あいさつ・提出物・掃除から1つだけ選ぶ。
- 整え3:山への語りを仕込む:合唱コン本番で使う言葉を今のうちに用意する。
ポイント1:谷の時期だと自覚する
1つ目の整えは、今が"谷"の時期だと自覚することです。
谷は悪い時期ではなく、山の前の大切な準備期間です。
そう捉え直すだけで、担任自身の気持ちがぐっと楽になりますよ。
谷の時期だと自覚するポイントを紹介します
なぜ9月に気持ちが乗らないのが自然なのか
体育祭という大きな行事を終えたばかりの9月は、生徒も担任も、心のエネルギーがいったん落ち着く時期にあたります。
10月・11月の合唱コンクールという次の山までは、まだ少し距離があり、次に何を目指せばよいのか、目標がぼんやりして見えにくい時期でもあります。
この「谷」の状態は、1年間のリズムからすれば、どの学級にも訪れるごく自然な現象なのです。
だからこそ、9月に気持ちが乗らないことを、担任自身の力不足だと感じる必要はまったくありません。
まずはこの時期の特徴を、正しく知ることから始めていきましょう。
私自身、初任のころはこの「谷」の存在を知りませんでした。
体育祭が終わった直後の教室で、生徒の熱が冷めていくのを感じ、何かまちがったのかと不安になったことを覚えています。
今なら分かります。
あれは失敗ではなく、1年間の中で誰にでも訪れる、ごく普通の谷だったのです。
谷を悪者にしないという発想
谷という言葉には、どうしても「下がっている」「よくない」というマイナスのイメージがつきまといがちです。
けれども学級経営における谷は、次の山を高くするための、大切な準備期間だと考えると、まったく違った意味を持ちはじめます。
谷の時期に無理やり山と同じテンションを求めてしまうと、生徒はかえって疲れ、息切れを起こしてしまいます。
1年を通して見れば、この谷は決して珍しいものではありません。
谷には谷なりの過ごし方があると知ることが、担任自身の心の余裕にもつながっていきます。
1年間を通して見ると、6月・9月・12月あたりが谷にあたることが多く、4月・5月・10月・11月・2月・3月が山にあたります。
この山と谷の波を、あらかじめ担任が知っておくだけで、日々の指導への向き合い方が変わってきますよ。
谷の自覚が、明日からの見え方を変える理由
9月に入ってから、なんとなく生徒への言葉かけがきつくなっていないか、振り返ってみてください。
谷の時期に、山と同じ熱量を求めていたのが、その原因かもしれません。
「今は谷だから、生徒が落ち着いて見えるのは当たり前」。
そう自覚できるだけで、担任の心にゆとりが生まれます。
ゆとりのある担任の言葉は、余裕のない言葉よりずっと生徒に届きやすいものです。
谷を自覚することは、目の前の生徒を焦らずに見つめるための、いちばん最初の一歩なのです。
焦らず、今できることだけに目を向けていきましょう。
今日からできることは、たった一つです。
今のクラスの状態を、山なのか谷なのか、一度立ち止まって捉え直してみてください。
それだけで、次に紹介する2つの整えが、ずっとやりやすくなっていきますよ。
谷だと自覚できたら、次にやることはシンプルです。
すべてを一気に立て直そうとせず、まずは日常の「当たり前」を1つだけ見つめ直すことから始めましょう。
ポイント2:当たり前を1つだけ点検する
2つ目の整えは、あいさつ・提出物・掃除といった日常の当たり前のうち、質が落ちていないかを1つだけ点検することです。
全部を一気に直そうとせず、まず1つに絞ることが、谷の時期を乗り切る最大のコツです。
当たり前を1つだけ点検するポイントを紹介します
なぜ全部でなく1つに絞るのか
体育祭の準備期間、多少のことには目をつぶってきた先生も多いはずです。
谷の時期は、担任自身のエネルギーも普段より落ちています。
そんなときに、あいさつも提出物も掃除も一気に立て直そうとすると、担任の方が先に息切れしてしまいます。
全部に手を伸ばそうとすると、どれも中途半端になり、生徒にも伝わりにくくなってしまいます。
1つに絞ることで、指導の的が絞られ、生徒にとっても「今、何を求められているか」が分かりやすくなります。
欲張らないことが、結果的にいちばん早い立て直し方なのです。
まずは今日、この1つだけを決めてみてください。
例えば「あいさつ」を選んだ日は、他の場面で多少ゆるみがあっても、あえて見て見ぬふりをしてかまいません。
1つに絞ると決めたら、その日は最後までその1つだけを見続けることが、担任自身の負担も減らしてくれます。
行事の熱気が当たり前を隠してしまう理由
体育祭が終わったばかりの今の教室を、少し離れた目で眺めてみてください。
体育祭の準備期間は、行事という大きな目的があるため、多少の乱れが目立ちにくくなります。
「行事が終わったら」という前提で、担任も生徒も少し我慢していた部分があるはずです。
行事に向かう間は、多少のゆるみがあっても「本番までに整えばいい」と、お互いに見て見ぬふりをしてしまいがちです。
その行事が終わった今こそ、隠れていた小さなほころびが表に出てくるタイミングです。
だからこそ9月は、当たり前を点検する絶好の機会なのです。
選び方はシンプルです。
今いちばん気になる場面を1つだけ選び、気づいたその日のうちに、その場で短く伝えるようにしましょう。
長い説教にする必要はありません。
- あいさつ:声の大きさより、目を合わせているかを見る。
- 提出物:期日より、出せなかった理由を短く聞けているかを見る。
- 掃除:時間より、決められた分担が回っているかを見る。
小さな戻し方が教室全体に広がる理由
1つの当たり前を選んで声をかけ続けていると、少しずつ変化が見え始めます。
1つの当たり前が整うと、不思議なことに、他の場面にも少しずつよい変化が広がっていきます。
その変化は、決して大きなものではなく、ほんの小さなしぐさや表情の違いから始まります。
これは、生徒が「先生はここを見ている」と感じ取り、他の場面でも自然に意識するようになるからです。
戻った姿は、必ずその日のうちに学級通信や帰りの会で言葉にして返しましょう。
その積み重ねが、教室全体の空気を少しずつ底上げしていきます。
価値づけの言葉は、長くなくてかまいません。
「さっきの行動、すごくよかったよ」の一言で、生徒は自分の行動を思い出し、また同じ行動を選びやすくなります。
小さな一言の積み重ねが、教室全体の空気を静かに変えていきます。
当たり前が1つ整ったら、最後の整えに進みましょう。
次は、山そのものに向けた準備です。
ポイント3:山への語りを今のうちに仕込む
3つ目の整えは、10月・11月の合唱コンクールで使う「語り」を、比較的余裕のある谷の今のうちに準備しておくことです。
語りは事前の準備が9割だと言っても言い過ぎではありません。
山への語りを仕込むポイントを紹介します
なぜ語りは本番中でなく谷の今に用意するのか
10月・11月の合唱コンクールが近づくほど、担任のスケジュールは分刻みになっていきます。
合唱コンクールの練習が本格化すると、担任は指導や調整に追われ、じっくり言葉を練る時間がなくなります。
指揮者やパートリーダーへの指示、隊形の調整など、考えることは山ほど増えていきます。
本番直前になって、とっさに出てくる言葉だけでは、伝えたい思いの半分も届かないことがあります。
だからこそ、まだ余裕のある谷の今のうちに、山で使う言葉を準備しておくのです。
忙しくなる前の今だからこそ、少しずつ準備を進めておくことをおすすめします。
言葉は、忙しくなってからひねり出そうとしても、なかなか出てきません。
心に余裕のあるうちに書き留めておいた言葉だからこそ、本番の空気の中でも、まっすぐ生徒に届いていきます。
3つの場面ぶんで足りるという考え方
山に向けた語りと聞くと、たくさん用意しなければと身構えてしまう先生もいるかもしれません。
用意しておく語りは、たくさんある必要はありません。
練習がだれてしまった日・生徒同士がぶつかり合った日・本番前日の3つの場面ぶんで、じゅうぶんです。
この3つさえ押さえておけば、突然の場面にも慌てずに向き合えます。
それぞれの場面で「何を伝えたいか」を一言だけ決めておけば、あとは当日の空気に合わせて言葉を足していけます。
完璧な台本を作る必要はなく、方向性さえ決めておけば大丈夫です。
書き留めておくのは、キーワードだけでも十分に役立ちます。
メモ帳やスマホのメモ機能に、一言だけ書き留めておくのでもかまいません。
形にこだわらず、まずは3つの場面を思い浮かべることから始めてみてください。
語りをストックする習慣が担任を支える理由
せっかく良い言葉を思いついても、本番の忙しさの中では、するりと忘れてしまうことがあります。
語りをあらかじめストックしておく習慣は、合唱コンクールの本番だけでなく、1年を通して担任を支えてくれます。
行事のたびにゼロから言葉を探すのではなく、少しずつ手元に蓄えていくイメージです。
「その本気の姿が、みんなの心を動かすよ」というような、山の場面で使える一言を、今のうちに1つでも書き留めておきましょう。
谷の今だからこそ、じっくりと向き合える準備です。
小さなメモが、あなた自身の安心材料にもなっていきますよ。
今週のうちに、3つの場面のうちどれか1つだけでもかまいません。
使いたい言葉を書き留めておくことから、山への準備を始めてみてください。
- だれた日用:練習の空気が緩んだときに立て直す一言。
- ぶつかった日用:本気の対立を成長として価値づける一言。
- 前日用:本番前夜、緊張をほぐし背中を押す一言。
明日の確認リスト
ここまでお伝えした3つの整えを、明日の教室で確かめられる形にまとめます。
難しいことをする必要はありません。
今日から1つずつ、確かめていくだけでじゅうぶんです。
合唱コンクールという山を迎えるころには、きっと谷での積み重ねが力になっているはずです。
- 捉え方:今のクラスが山なのか谷なのか、一度立ち止まって考える。
- 当たり前:あいさつ・提出物・掃除のうち、気になる1つだけ選ぶ。
- 声かけ:戻った姿を見つけたら、その日のうちに一言で価値づける。
- 語りのメモ:合唱コンで使う言葉を、1つだけ書き留めておく。
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よくある質問
谷の時期でも、行事の練習量は増やしたほうがいいですか
谷の時期に練習量だけを増やすのはおすすめしません。
気持ちが焦っていると、量を増やせば何とかなるという発想に流されがちですが、それは逆効果になることがあります。
谷の時期に必要なのは量ではなく、日常の当たり前を整えることです。
谷の時期に無理に練習量を積んでも、生徒の集中力がついてこず、かえって雑な仕上がりになってしまいます。
練習量は、合唱コンクールの練習が本格化する山の時期に自然と増えていきます。
今は日常を整えることに力を注ぎ、山に向けた土台をつくる期間だと考えてください。
当たり前を注意しても、生徒の反応が薄いのですが
せっかく短く声をかけたのに、生徒の表情が変わらないと、伝わっていないのではと不安になりますよね。
反応が薄く見えても、焦って何度も言い直す必要はありません。
谷の時期は、生徒のエネルギーも普段より落ち着いているため、変化がすぐには表に出にくいものです。
特に9月は谷の時期にあたるため、表面上の反応が小さくても不思議ではありません。
短く伝えて、その場で終わらせることを続けてください。
数日たってから、ふとした場面で戻っている姿に気づくことがよくあります。
焦らず同じ声かけを続けていくことが、いちばんの近道になります。
語りを準備しても、本番でうまく話せるか不安です
完璧に話そうとしなくて大丈夫です。
多少言葉に詰まっても、生徒はそれほど気にしていないものです。
大切なのは、話し方の上手さではなく、事前に「何を伝えたいか」を決めておくことです。
台本のように一字一句を覚える必要はなく、心の中に軸を持っておくだけでじゅうぶんです。
方向性さえ決まっていれば、当日の言葉が多少変わっても、伝えたい思いはきちんと届きます。
まずは一言だけ、決めておくことから始めてみてください。
その場の空気に合わせて言葉を選べば、思いはきっと生徒の心に届きます。
おわりに
9月という谷の時期の整え方を、3つお伝えしました。
谷だと自覚すること、当たり前を1つだけ点検すること、山への語りを今のうちに仕込んでおくこと。
どれも、今日からすぐに始められる小さな一歩ばかりです。
この3つを積み重ねていけば、10月・11月の合唱コンクールという山を、きっと無理なく迎えられますよ。
ご視聴ありがとうございました。
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