授業についていけない子に気づいたら|担任だからできる3つの関わり【中学校】

はじめに

あの子、授業が分からなくなってきたな。
二学期に入って何週間かたつと、教室でふとそう気づく瞬間があります。
ノートが途中で止まっている。
当てられたときに、まわりの顔を見る。
一学期には無かった小さな変化が、九月の教室には出てきます。

けれど中学校の担任には、すぐ動けない事情があります。
自分の教科ではないからです。
どう関わればいいのか分からないまま、次のテストの点数を見て、やっぱりそうだったか、と思う。
そんな九月を過ごしたことのある先生は、少なくないのではないでしょうか。

私も若いころ、放課後にその子を呼んで、自分で教え直そうとしたことがあります。
教科もちがうのに、担任だからと抱えこんだんです。
続いたのは一回だけでした。
その子は次から来なくなりました。
あれは、その子の問題ではなく、抱えこんだ私の失敗でした。

この記事では、授業についていけない子に気づいたときに、中学校の担任だからできる3つの関わりをお話しします。
大前提は「担任は、教え直す人ではない」です。
読み終えたら、明日そのまま動ける形にしてお渡しします。

担任ができる 3つの関わり

先に結論をお伝えします。
担任の仕事は、その子に教え直すことではありません。
気づいて、つなぐことです。
成績が出る前に教室のようすで気づき、事実にして教科の先生へつなぎ、最後に「分からない」と言える教室そのものをつくる。
この3つがそろったとき、その子は自分から動き出します。

3つの関わり
  • その1:成績が出る前に、教室で気づく:見るのは成績表ではなく、ノートと視線。
  • その2:教える人ではなく、つなぐ人になる:事実にして教科の先生へ渡す。
  • その3:「分からない」と言える教室をつくる:個への支援は空気とセットで。

ポイント1:成績が出る前に、教室で気づく

気づくのが早いほど、担任にできることは多く残っています。
見る場所は成績表ではなく、目の前の教室です。

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成績が出る前に、教室で気づくのポイントを紹介します

なぜ、点数で気づいたときには遅いのか

テストの点数は、いちばん分かりやすい合図です。
けれど点数が返ってくるのは、その単元が終わってから何週間もあとになります。
つまり点数で気づいたときには、その子はもう長いあいだ、分からないまま席に座り続けていたことになります。
中学校の二学期は、どの教科も内容が一段むずかしくなる時期です。
一学期はなんとかついてこられた子が、九月から急に手が届かなくなる。
そして本人は、途中で止まったことを自分から言いません。
言えば、できない子だと思われると感じているからです。
だから担任は、点数を待たずに教室で見つける必要があります。

ノート・写す速さ・視線という3つのサイン

教室で見るところは、3つだけで足ります。
ひとつ目は、ノートが途中で止まっていること。
最初の数行は書いてあるのに、後半が白いまま残っている。
ふたつ目は、板書を写す速さが急に落ちること。
写すこと自体はできるので見過ごしやすいのですが、意味が分からないまま写している子は、確かめながら書くので必ず遅れます。
みっつ目は、当てられたときにまわりの顔を見ることです。
答えを探しているのではなく、どう反応するのが正解かを探しています。
この3つは、自分の教科でなくても、朝の会や給食の時間に机の上を見るだけで気づけます。

机の間を歩きながら生徒のノートの進み方を見ている先生

「どうやって解いたのか教えて」から始める

気づいたあとの最初のひとことで、その子が口を開くかどうかが決まります。
やってしまいがちなのは、ここ、まちがっているよ、と指摘から入ることです。
正しいことを言っているぶん、その子は言い返せません。
そのかわり、次から見せてくれなくなります。
ですから、ここはどうやって解いたのか教えて、と聞きます。
説明してもらうと、どこまでは分かっていて、どこから分からなくなったのかが、本人の口から出てきます。
ここが分かっていれば、教科の先生に渡せる情報になります。
そして本人も、自分が全部だめなのではないと気づけます。

気づくための3つの見どころ
  • ノート:後半が白いまま止まっていないかを、机の上で確かめる。
  • 写す速さ:板書を写し終わるのが、急に遅くなっていないか。
  • 視線:当てられたとき、答えではなくまわりの反応を探していないか。

点数を待たずに、教室で見つける。
ここまでは担任ひとりでできます。
けれど次の一歩は、ひとりでやってはいけない場所です。

ポイント2:教える人ではなく、つなぐ人になる

中学校の担任は、その子がつまずいている教科の先生ではありません。
だからこそ、担任にしか渡せない情報があります。

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教える人ではなく、つなぐ人になるのポイントを紹介します

担任ひとりで教え直そうとしない

気づいた担任がまず考えるのは、放課後に少し見てあげようか、ということです。
気持ちはとてもよく分かります。
私もやりました。
けれど中学校では、担任の教科とその子が止まっている教科は、たいていちがいます。
教える内容を思い出しながらになるので、こちらの準備も重くなります。
そして何より、続きません。
週に一回でも、行事の週や部活の大会が入れば止まります。
止まったとき、その子は、やっぱり自分は見放されたと感じてしまいます。
担任がやるべきなのは、教え直すことではなく、続く形につなぐことです。

教科の先生へ渡すのは「事実」だけ

教科の先生に伝えるときは、事実だけを渡します。
どの単元から止まっているのか。
ノートがどこで途切れているのか。
本人が説明できたのはどこまでだったのか。
この3つが渡せれば、教科の先生はすぐ動けます。
やってしまいがちなのは、あの子は最近やる気がなくて、といった評価を先に渡してしまうことです。
それを聞いた先生は、その目でその子を見ることになります。
渡すのは事実で、見立ては教科の先生に任せる。
そのうえで、生活のようすは必要な分だけ添えます。
部活が終わって帰りが遅いようだ、という一行が、指導の仕方を変えることがあるからです。

メモを手に、教科の先生へ何を伝えるか整理している先生

お願いは、小さくひとつだけにする

つなぐときにいちばん大事なのは、お願いの大きさです。
あの子を見てやってください、では、相手も何をすればいいのか分かりません。
お願いは、小さくひとつにします。
授業の最初の5分だけ、様子を見てもらえませんか。
次の小テストのとき、席のそばを一度通ってもらえませんか。
これくらいの大きさなら、忙しい先生でも今日から動けます。
そして忘れずにやりたいのが、本人への予告です。
先生から伝えておくね、と一言だけ言っておく。
知らないうちに話が回っていたと感じると、その子は次から何も見せてくれなくなります。

教科の先生へ渡す3つ
  • どこから:止まっている単元と、ノートが途切れている場所を伝える。
  • どこまで:本人が自分の言葉で説明できたところまでを伝える。
  • お願い:最初の5分だけ、など今日から動ける大きさにして頼む。

つなぐところまで来ると、担任の肩の荷はずいぶん軽くなります。
そして最後に残るのが、担任にしかできない仕事です。

ポイント3:「分からない」と言える教室をつくる

その子だけに手をかけても、教室の空気が変わらなければ元に戻ります。
個への支援は、教室の空気とセットで初めて続きます。

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「分からない」と言える教室をつくるのポイントを紹介します

個への支援は、教室の空気とセットで

その子ひとりを丁寧に支えても、教室が「分からないと言えない場所」のままなら、次の時間にはまた黙ります。
手を挙げれば、できない子だと思われる。
その空気があるかぎり、支援は毎回ゼロからやり直しになります。
だから担任は、その子ではなく教室のほうを変えにいきます。
やることは大きくありません。
誰かが質問したときに、その質問をいい質問だったと全員の前で扱う。
それだけで、次に手を挙げる子が出てきます。
教室に一人でも先に質問する子がいれば、後ろの子は続きやすくなります。
個への配慮を、学級全体の設計で支えるという考え方です。

自信を折らない、担任の返し方

分からなくなっている子ほど、できていないことを数えられ慣れています。
だから担任は、数える対象を変えます。
先週は白かったページが、今週は半分まで書いてある。
その事実だけを、そのまま言葉にして返します。
すごいね、と評価するのではなく、ここまで進んだね、と見えたことを言う。
評価は人を緊張させますが、事実の確認は緊張させません。
そして、質問できたことそのものを価値づけます。
分からないと言えるのは、すごく強いことだよ。
この一言は、言われた本人だけでなく、聞いていた教室全体に効きます。
手を挙げることの意味が、その日から変わるからです。

生徒の手元をのぞきこんで、進んだところを言葉で返している先生

家庭へは「叱ってください」と言わない

家庭に連絡するとき、つい出てしまうのが、家でも言ってやってください、という一言です。
けれどこれを言うと、その子は学校でも家でも同じことを言われることになります。
逃げ場が無くなった子は、勉強そのものから離れていきます。
伝えるのは、事実と学校の動きです。
どの単元から止まっているのか、学校ではこれから何をするのか。
この2つだけで、保護者は安心します。
そのうえで、家庭へのお願いはひとつにします。
夜、机に向かう時間を10分だけ決めてもらえませんか。
お願いを絞るほど、家庭は動きやすくなります。
そして次の連絡で、進んだところを必ず伝えます。

家庭に伝える3つ
  • 事実:どの単元から止まっているかを、評価をまぜずに伝える。
  • 学校の動き:教科の先生と連携して何をするかを先に示す。
  • お願いはひとつ:10分だけ、など家庭が今日からできる形にする。

気づいて、つないで、教室ごと支える。
この3つがそろったとき、その子は自分から手を挙げられるようになります。

おわりに

分からない、と言えることは弱さではありません。
助けを求められる力です。
その力は、中学校を出たあとも、ずっとその子を助けてくれます。
担任にできるのは、教えることではなく、その声が出る場所をつくることなんだと思います。

全部をやろうとしなくて大丈夫です。
明日やることは、ひとつだけにしましょう。
気になっているあの子のノートを、一冊だけ見せてもらう。
どこで止まっているかを、自分の目で見る。
それだけで、次の一手が決まります。

授業についていけない子に担任ができる3つの関わりのまとめ図

ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。

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