
はじめに
電気の授業で、こんな質問を受けたことはありませんか。
「乾電池もコンセントも同じ電気なのに、どうして呼び方が違うんですか」。
もっともな疑問です。
どちらもコードを流れる電気で、見た目では区別がつきませんからね。
じつは、電気には流れ方の違う二つの種類があります。
直流と交流です。
ちがいは、たった一つだけ。
電気の流れる向きが変わるか、変わらないか、それだけなんですよ。
ここさえつかめば、発電所の話も、コンセントの話も、スマホの充電器の話も、すべて一本につながって見えてきます。
この記事では、まず直流と交流の見分け方を確かめます。
次に、発電所がわざわざ交流を選んでいる理由を考えます。
最後に、東日本が50Hz、西日本が60Hzと分かれている理由を見ていきます。
途中には例題を二つ置きました。
コンセントとスマホのどちらが交流かを答える問題と、引っこし先で家電がそのまま使えるかを確かめる問題です。
どちらも定期テストで問われやすい形なので、手を止めてノートに書きながら読んでみてくださいね。
授業を休んでしまった人も、この記事だけで追いつけるように書いています。
交流と直流を3つの順で整理する
この単元は、「見分ける」「なぜ交流か」「なぜ東西で違うか」の三つに分けると、一気に見通しがよくなります。
一つ目は、見分ける。
直流と交流のちがいを、波の形でつかみます。
二つ目は、なぜ交流か。
発電所が交流を選ぶ理由と、高い電圧で送る理由を追いかけます。
三つ目は、なぜ東西で違うか。
周波数という言葉と、50Hzと60Hzに分かれた明治時代の事情です。
この順で追いかけると、ばらばらに覚えていた用語が、一つの流れの中に収まっていきますよ。
- ポイント1:直流と交流のちがい:向きが変わらないのが直流、規則正しく入れかわるのが交流です。
- ポイント2:なぜ発電所は交流なのか:回して作れば自然に交流になり、変圧器で電圧を変えられるからです。
- ポイント3:50Hzと60Hzが分かれた理由:明治時代に輸入した発電機のちがいが、今も残っています。
ポイント1:直流と交流のちがい
まずは、二つの電気を見分けられるようになりましょう。
ここが身につくと、あとの話はすべてこの上に乗ってきます。
ちがいは、電気の流れる向きが変わるか変わらないか、その一点だけです。
直流と交流のちがいのポイントを紹介します
直流は向きが変わらない電気
技術の授業で電気を扱うと、まず出てくるのが直流という言葉です。
直流は、電気の流れる向きがずっと変わらない電気のことなんですよ。
プラスからマイナスへ、同じ向きに流れ続けます。
身近な例は乾電池ですね。
太陽電池が作る電気も直流です。
プラスとマイナスがはっきり決まっているので、乾電池を逆向きに入れると機器は動きません。
リモコンの電池を入れまちがえた経験はありませんか。
あれは、直流には向きがあることの証拠なんですよ。
教科書では英語の頭文字をとってDCと書かれることもあります。
ディーシーと読みますよ。
交流は向きが入れかわる電気
もう一つが交流です。
交流は、電気の流れる向きが決まった速さでたえず入れかわる電気なんですよ。
プラスとマイナスが、めまぐるしく交代しているとイメージしてください。
かべのコンセントから来る電気が、この交流です。
だからコンセントのプラグは、上下どちらの向きに差しこんでも使えますよね。
乾電池のように向きを気にしなくてよいのは、そもそも向きが固定されていないからなんです。
こちらは英語の頭文字でACと書かれます。
エーシーと読みますよ。
テストでは、この二つの記号の読み分けもよく問われます。
グラフにすると一目で分かる
言葉だけだと区別しにくいので、グラフにしてみましょう。
よこ軸を時間、たて軸を電圧にして書くのがきまりです。
直流は、電圧がずっと同じままなので、まっすぐな直線になります。
交流は、プラスの側とマイナスの側を行ったり来たりするので、なめらかな波の形になりますよ。
この波の形こそが、交流のいちばん分かりやすい目印です。
テストの図を見て「波なら交流、直線なら直流」と判断できれば、それだけで一問取れます。
ノートのすみに、二つの形を並べてかいておくとよいですね。
手を動かしてかいたものは、意外なほど頭に残りますよ。
- 直流は向きが変わらない:乾電池や太陽電池の電気。プラスからマイナスへ同じ向きに流れます。
- 交流は向きが入れかわる:コンセントの電気。プラスとマイナスがたえず交代しています。
- 波なら交流、直線なら直流:よこ軸を時間、たて軸を電圧にしたグラフの形で見分けます。
ポイント2:なぜ発電所は交流なのか
ここからは、発電所が交流を選んでいる理由です。
じつは、理由は一つではありません。
作りやすいことと、電圧を変えられること。この二つが交流の強みです。
なぜ発電所は交流なのかのポイントを紹介します
回して作れば、自然に交流になる
では、なぜ発電所はわざわざ交流を作るのでしょうか。
理由の一つは、電気の作り方そのものにあります。
発電機は、コイルと磁石を向かい合わせて回すことで電気を起こしますよね。
回転させながら作ると、コイルに対する磁石の向きが半回転ごとに入れかわります。
つまり、生まれる電気の向きも自然に入れかわるんです。
交流は無理に作っているのではなく、回して作れば自然とそうなる形なんですよ。
火力でも水力でも風力でも、タービンで軸を回すという点は同じです。
だから発電所の電気は、どの方式でも交流になるんですね。
変圧器で電圧を自由に変えられる
もう一つの理由が、こちらのほうが大きいかもしれません。
交流は、変圧器を使えば電圧を自由に変えられるんです。
変圧器は、鉄しんに二つのコイルを巻いただけの、とても単純な道具ですよ。
片方のコイルに交流を流すと、その変化がとなりのコイルに伝わり、巻き数の比に応じた電圧が出てきます。
向きが変わり続ける交流だから成り立つしくみで、電圧が一定の直流ではこの方法が使えません。
電圧を変えられること、これが交流が選ばれた決め手なんですよ。
では、電圧を変えられると何がうれしいのでしょうか。
答えは、次の送電の話に出てきます。
高い電圧で送って、家の手前で戻す
発電所から家までは、とても長い道のりです。
そのあいだに、電気のいくらかは電線の熱になって失われてしまいます。
失われる量は、流れる電流が大きいほど増えるという性質があります。
そこで送電線では、変圧器で電圧をぐんと高くして、そのぶん電流を小さくしてから送るんです。
数十万ボルトという高さは、電気を強くするためではなく、損を減らすための工夫なんですよ。
町に近づくと変電所と電柱の変圧器で少しずつ下げられ、家に届くころには100ボルトになっています。
そしてスマホやパソコンの手前では、四角いアダプタが交流を直流に戻しているんです。
- 回して作ると交流になる:コイルと磁石を回すと、生まれる電気の向きが自然に入れかわります。
- 変圧器が使えるのは交流だけ:巻き数の比で電圧を変えられます。直流ではこの方法が使えません。
- 高い電圧で送ると損が減る:電圧を上げて電流を小さくし、電線で熱になる分を減らしてから送ります。
ポイント3:50Hzと60Hzが分かれた理由
最後は、日本ならではの話です。
同じ国の中なのに、東と西で電気の周波数が違います。
東日本が50Hz、西日本が60Hz。境目は静岡県のあたりを通っています。
50Hzと60Hzが分かれた理由のポイントを紹介します
周波数とは、1秒間の波の回数
ここからは、50Hzと60Hzの話です。
まず周波数という言葉をおさえましょう。
周波数とは、交流の波が1秒間に何回くり返されるかを表す数のことなんですよ。
単位はヘルツで、記号はHzと書きます。
50Hzなら、1秒のあいだに50回、電気の向きが入れかわっているということですね。
目には見えませんが、家じゅうの電気がそれだけの速さで行き来しているわけです。
数が大きいほど、波が細かくくり返されると考えてください。
テストでは、この定義をそのまま書かせる問題がよく出ますよ。
周波数がちがうと、何が困るのか
周波数がちがうと、何が困るのでしょうか。
いちばん影響を受けるのは、モータで動く機器です。
交流で回るモータは、波の回数に合わせて回る速さが決まるので、周波数が変わると速さも変わってしまいます。
昔は、東から西へ引っこすと時計がずれたり、洗たく機の調子が変わったりしました。
今は、50と60のどちらでも同じように動く、ヘルツフリーの機器がほとんどです。
スマホの充電器も、その代表ですね。
だから引っこしで困る場面は、ずいぶん減りました。
それでも古い機器は、裏のラベルで周波数の表示を確かめておくと安心ですよ。
分かれたのは、明治時代の輸入から
では、なぜ一つの国で二つに分かれたのでしょうか。
話は明治時代までさかのぼります。
当時、電気を起こす発電機は、外国から買ってくるものでした。
東京の電力会社はドイツ製の発電機を選び、これが50Hz。
大阪の電力会社はアメリカ製を選び、こちらが60Hzだったんです。
そのまま各地へ電気が広がっていったため、境目が静岡県のあたりに残りました。
一つの国の中で周波数が分かれている例は、世界でも珍しいんですよ。
百年以上前の買い物のちがいが、今も暮らしに残っているわけですね。
- 周波数は1秒間の波の回数:単位はヘルツ。50Hzなら1秒に50回、電気の向きが入れかわります。
- 東は50Hz、西は60Hz:境目は静岡県のあたり。1つの国で分かれているのは世界でも珍しい例です。
- 理由は明治の輸入発電機:東京はドイツ製、大阪はアメリカ製。そのちがいが今も残っています。
おわりに
今日たどってきたのは、直流と交流の見分け方、発電所が交流を選ぶ理由、そして東西で周波数が分かれた事情の三つでした。
向きが変わらないのが直流、入れかわるのが交流。
回して作れば自然に交流になり、変圧器で電圧を変えられるから送電にも都合がよい。
そして東日本は50Hz、西日本は60Hz。
ばらばらの用語に見えていたものが、「向きが変わるかどうか」という一本の線でつながって見えたなら、もうこの単元は自分のものですよ。
最後に一つだけお願いです。
記事の中に出てきた例題を、もう一度自分の言葉で確かめてみてください。
スマホの中を流れているのは、交流と直流のどちらでしょうか。
引っこし先で家電が使えるかを調べるには、どこを見ればよいでしょうか。
読んで分かった気になるのと、自分で説明できるのとでは、テストでの手ごたえがまるで変わりますよ。
ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。
中学技術【交流と直流】50Hzと60Hzのちがいをわかりやすく解説
中学技術の授業でつまずきやすいところを、一つずつ動画にしています。
予習や復習に使えそうだと思ったら、チャンネル登録をしておいてくださいね。
家庭や学校の中にある交流と直流
直流と交流の違いが分かっても、身の回りのどこに使われているかが結びつかないと、知識として定着しません。ここでは、教室や家庭にある身近な機器を例に、直流と交流の使われ方を確認していきます。
- コンセント:壁から来る電気は交流。
- 電池:中の反応で流れ続けるので直流。
- 充電器:交流を直流に変える働きをしている。

教室や家庭にある、交流と直流の見分け方を紹介します
コンセントから来る電気は交流
教室の壁にあるコンセントから供給される電気は交流です。家庭用の電化製品の多くは、そのままでは直流でしか動かない部品を使っているため、内部に交流を直流に変える仕組みを持っています。ノートパソコンのACアダプターがふくらんだ箱のような形をしているのは、この変換のための部品が入っているからです。生徒に身近な機器の写真を見せながら説明すると、電気の見えない働きが具体的にイメージしやすくなります。
電池はなぜ直流なのか
乾電池やモバイルバッテリーは直流を供給します。電池の中では化学反応によって、決まった向きに電子が流れ続けるため、電流の向きが常に一定になります。これが直流の正体です。交流のように向きが周期的に入れ替わる仕組みを、電池の中だけで作り出すのは構造上できません。だからこそ、乾電池で動くおもちゃや懐中電灯はすべて直流の機器だと説明すると、生徒は電池と交流電源の違いを整理しやすくなります。
充電のときに起きている変換
スマートフォンを充電するとき、コンセントの交流はそのままではなく、充電器の中で直流に変換されてから電池に送られています。この変換を担っているのが、充電器の中に入っている変換回路です。生徒からはなぜ最初から直流のコンセントを作らないのかという質問がよく出ます。この疑問こそ、次のなぜ発電所は交流を選ぶのかという話につながる入り口になるので、授業の中でつなげて扱うと理解が深まります。
交流と直流にまつわる誤解を整理する
この単元は言葉が似ているため、生徒の中でいくつかの誤解が生まれやすい単元でもあります。ここでは、よくある誤解を1つずつ整理していきます。
交流の方が新しい技術だという誤解
交流は最近の技術で、直流は古い技術だと思っている生徒が一定数います。しかし実際には、どちらも古くから使われてきた技術であり、優劣ではなく用途の違いで使い分けられています。送電には交流が向き、電子機器の内部では直流が使われる、という役割分担があるだけです。新しい・古いという軸ではなく、向いている仕事が違うという捉え方に修正してあげると、誤解が解けやすくなります。
交流はいつも同じ強さで流れているという誤解
交流は向きだけでなく、強さも周期的に変化しています。プラス側とマイナス側を行き来しながら、強さも山と谷を描くように変わり続けているのが交流の特徴です。この波の形をグラフで見せると、直流の一直線のグラフとの違いが視覚的につかみやすくなります。向きが変わるという説明だけで終えず、強さも変わっていることまで伝えると、後で学ぶ周波数の話にもつながりやすくなります。
日本全国どこでも周波数は同じだという誤解
東京では50Hz、大阪では60Hzというように、日本国内でも地域によって周波数が異なることを知らない生徒は多くいます。同じ国内なら電気は同じはずだという思い込みがあるためです。この後の単元で扱う東西の周波数の違いにつながる部分なので、ここで地域によって違うかもしれないという視点だけ先に持たせておくと、後の学習がスムーズになります。
実生活での確認と注意点
最後に、交流と直流の知識を実生活で確認する方法と、注意しておきたい点を紹介します。
製品ラベルの表示で確認する
家電製品やACアダプターには、AC100VやDC5Vのような表示があります。ACは交流、DCは直流を意味する略語で、この表示を見ればその機器がどちらの電気で動いているかが分かります。夏休みの自由研究などで、家にある製品のラベルを集めて分類する活動を提案すると、教室で学んだ内容を家庭でも確認できる機会になります。表示の意味が分かるようになるだけで、身の回りの見え方が変わります。
モバイルバッテリーの残量表示の仕組み
モバイルバッテリーの残量表示は、内部の直流の電圧を測って計算されています。使うほど電圧がわずかに下がっていく性質を利用した仕組みです。交流には決まった一つの電圧という考え方がしにくいため、このような残量管理は直流の機器で行われます。身近な機器の中でも、直流だからこそ実現できている機能があることを伝えると、直流・交流の使い分けへの理解がさらに深まります。
感電の危険性はどちらも同じ
交流と直流のどちらが危険かという質問もよく出ますが、電圧や電流の大きさによって危険度が決まるため、どちらか一方が絶対に安全ということはありません。家庭用コンセントの交流も、大容量のバッテリーの直流も、扱い方を誤れば危険です。実習でモーターや電池を扱う際には、種類にかかわらず正しい手順を守ることの大切さを、あらためて確認しておきましょう。









