
はじめに
冬なのに、お店にトマトやきゅうりが並んでいる。
そんな光景を、あたりまえだと思っていませんか。
本来なら夏に採れる野菜が、一年じゅう手に入る。
それを支えているのが、今日のテーマである施設栽培なんです。
ビニールハウスや温室と聞くと、「寒さから守るためのもの」というイメージがあるかもしれませんね。
でも、ハウスがしていることは保温だけではありません。
中では、温度も、光も、水も、湿度も、空気までもが、人の手で操作されています。
ハウスは作物を囲うおおいではなく、環境そのものを作る装置なんですよ。
この記事では、まず施設栽培がどんな育て方なのかを、露地栽培と比べながら整理します。
次に、ハウスの中で操作している5つの環境を、道具とセットで一つずつ見ていきます。
最後に、施設栽培のよさと課題、そしてセンサを使ったこれからの姿まで確かめます。
途中には例題を二つ置きました。
一つは「まず何をするか」を考える問題、もう一つはかん水の量を計算する問題です。
どちらも定期テストでねらわれやすいところなので、ぜひ手を止めて、ノートに書きながら読んでみてくださいね。
授業を休んでしまった人も、この記事だけで追いつけるように書きました。
施設栽培を3つの視点で整理する
施設栽培の学習は、「どんな育て方か」「何を操作しているか」「よさと課題は何か」の3つに分けると迷わなくなります。
一つ目は、露地栽培と何がちがうのかという入り口の話です。
二つ目が、この単元のいちばんの中心。
温度・光・水・湿度・空気という5つを、それぞれどんな道具で操作しているのかを見ていきます。
三つ目は、そこまで手をかける理由と、その代わりに背負う課題ですね。
この順番で追いかけると、テストで「なぜ」を問われても答えられるようになりますよ。
- ポイント1:施設栽培とはどんな育て方か:露地栽培とのちがいは、環境を操作できるかどうかの一点です。
- ポイント2:ハウスで操作する5つの環境:温度・光・水・湿度・空気を、それぞれ専用の道具で操作します。
- ポイント3:施設栽培のよさと課題:安定して作れる代わりに、費用とエネルギーがかかります。
ポイント1:施設栽培とはどんな育て方か
まずは、施設栽培という言葉そのものをはっきりさせておきましょう。
ここがあいまいなままだと、あとの5つの操作がただの暗記になってしまいます。
施設栽培と露地栽培のちがいは、育つ環境を人が操作できるかどうか、その一点です。
施設栽培とはどんな育て方かのポイントを紹介します
施設栽培と露地栽培のちがい
施設栽培とは、ビニールハウスや温室といった施設の中で作物を育てる方法のことです。
これに対して、屋外の畑でそのまま育てるやり方を露地栽培といいます。
露地栽培では、日ざしも雨も気温も、その日の自然をそのまま受け取ることになりますね。
いっぽうの施設栽培は、ビニールやガラスで空間をおおい、その中の環境を人が作ります。
つまり二つのちがいは、育つ環境を操作できるかどうかという一点なんです。
作物そのものや、土づくり、肥料の考え方まで変わるわけではありません。
変わるのは、環境を自然にまかせるか、それとも自分で決めるかというところなんですよ。
なぜわざわざ施設を使うのか
施設を建てるにはお金も手間もかかります。
それでも使う理由は、大きく三つあるんです。
一つ目は、収穫の時期をずらせること。
ほかの産地がまだ出荷していない時期に届けられれば、それだけ高く売れますよね。
冬にトマトが並ぶのは、この工夫のおかげなんです。
二つ目は、雨風や寒さ、強すぎる日ざしから作物を守れること。
台風や急な冷えこみで一年の努力が消えてしまう、という心配が小さくなります。
三つ目は、品質と収穫量が安定すること。
環境が毎日ほぼ同じなら、育ち方もそろい、味や大きさのばらつきが減っていきます。
トンネルからガラス温室まで
施設とひとことで言っても、いくつか段階があります。
いちばん手軽なのがトンネルです。
畑のうねに細い支柱を曲げてかけ、その上をビニールでおおう簡単なもので、春先の保温によく使われます。
次がパイプハウスですね。
金属のパイプで骨組みを組み、そこにビニールをかけたもので、中に人が入って作業できます。
いちばん大がかりなのがガラス温室で、丈夫なぶん長く使え、暖房や自動の窓なども取りつけやすくなります。
ここで気づいてほしいのは、大きく丈夫になるほど、操作できる環境の幅も広がるということなんですよ。
- 露地栽培は自然のまま:屋外の畑で育て、日ざしも雨も気温もその日の天気を受け取ります。
- 施設栽培は環境を作る:ビニールやガラスでおおい、中の環境を人の手で決めていきます。
- 施設は3段階:トンネル、パイプハウス、ガラス温室と、大きくなるほど操作の幅が広がります。
ポイント2:ハウスで操作する5つの環境
ここからが、この単元の中心です。
ハウスの中で操作しているものは、温度・光・水・湿度・空気の5つに整理できます。
5つの名前と、それぞれを操作する道具をセットで覚えると、一気に忘れにくくなりますよ。
ハウスで操作する5つの環境のポイントを紹介します
温度を上げるしくみと下げるしくみ
昼のあいだ、日ざしはビニールを通ってハウスの中に入り、地面や作物をあたためます。
あたたまった空気は外へ逃げにくいので、中に熱がたまっていきますね。
これが、ハウスがあたたかい理由です。
それでも足りない寒い時期は、暖房であたためます。
逆に暑い時期は、下げる操作が必要になります。
まず天窓やサイドカーテンを開けて、熱い空気を外へ逃がす換気です。
それでも下がらなければ、遮光ネットで日ざしそのものを減らします。
実を食べる野菜の適温は、昼で25度から28度あたりが目安。
30度をこえると生育が落ちてしまうので、この数字は覚えておきましょう。
光と水を操作する
光は、多ければ多いほどよいというものではありません。
真夏の強すぎる日ざしは、葉を傷めて生育を落としてしまうんです。
そこで使うのが遮光ネットで、目安は30から50パーセントほど。
反対に、冬に光が足りない地域では、電灯で光を補うこともあります。
水はどうでしょうか。
ハウスの中には雨が入りませんから、水はすべて人が与えることになります。
これがかん水ですね。
よく使われるのが点滴かん水で、細い管から根元へ少しずつ落としていきます。
むだが少なく、与えすぎて根をいためることも防げる、かしこいやり方なんですよ。
湿度と空気を操作する
おおわれた空間は、どうしても湿気がこもります。
湿りすぎた空気は、かびの仲間が原因の病気を一気に広げてしまうんです。
だから送風機で空気を動かし、葉のまわりに新しい空気が流れるようにします。
もう一つ大切なのが、空気にふくまれる二酸化炭素です。
二酸化炭素は光合成の材料ですから、閉めきったハウスで使われて減ってしまうと、それ以上育たなくなります。
そこで、あえて二酸化炭素を足してやることもあるんですよ。
温度や光にくらべると地味ですが、湿度と空気の管理は収穫量を大きく左右する部分なんです。
- 温度:天窓とサイドカーテンで換気し、寒い時期は暖房。適温は昼25度から28度が目安です。
- 光と水:遮光ネットは30から50パーセント。水は点滴かん水で根元へ少しずつ与えます。
- 湿度と空気:送風機で空気を動かして病気を防ぎ、光合成の材料である二酸化炭素を補います。
ポイント3:施設栽培のよさと課題
最後は、ここまで手をかける理由と、その代わりに背負うものを整理します。
技術の学習では、便利さだけでなく、その裏側まで見ることが大切なんです。
安定して作れる代わりに、費用とエネルギーがかかる。これが施設栽培の姿です。
施設栽培のよさと課題のポイントを紹介します
作れる時期が長くなり、品質もそろう
施設栽培のよさは、三つにまとめられます。
一つ目は、作れる時期が長くなること。
寒さで育たないはずの冬でも、夏の野菜を育てられるようになります。
二つ目は、味や大きさがそろうこと。
毎日の環境がほぼ同じなら、どの株も似た育ち方をしますよね。
スーパーに同じ大きさのきゅうりが並んでいるのは、この安定のおかげなんです。
三つ目は、計画的に出荷できること。
いつ、どれくらい採れるかが読めるので、お店との約束を守れます。
農業を仕事として続けるうえで、この読めるという点はとても大きな強みになるんですよ。
費用とエネルギー、そして病害虫
よいところばかりではありません。
まず、施設そのものを建てる費用がかかります。
ガラス温室ともなれば、始めるだけで大きな金額が必要になりますよね。
次に、動かし続けるための費用です。
とくに冬の暖房は燃料を使い続けるので、燃料の値段が上がると経営がいっきに苦しくなります。
二酸化炭素の排出という点でも、考えなければならない部分ですね。
そしてもう一つが病害虫です。
おおわれた空間はあたたかく湿っていて、外の天敵も入ってきません。
一度入りこむと一気に広がるので、入れない工夫と早く気づく観察が欠かせないんです。
測ってから操作する、これからの施設
昔の施設栽培は、経験と勘にたよる部分が大きいものでした。
今はちがいます。
温度計や湿度計、日ざしを測るセンサをハウスの中に置き、環境を数字でつかむのがふつうになりました。
そして、その数字をもとに窓の開閉やかん水を自動で制御します。
設定した温度をこえたら窓が開き、土がかわいたらかん水が始まる、という具合ですね。
これを進めたものが、スマート農業とよばれる取り組みです。
さらに光まで人工の照明でまかない、建物の中で完全に環境を作るのが植物工場になります。
測ってから操作する、という順番はどれも同じなんですよ。
- よさは安定:作れる時期が長くなり、味や大きさがそろい、計画的に出荷できます。
- 課題は費用とエネルギー:建てる費用と冬の燃料代がかかり、二酸化炭素の排出もふえます。
- 閉じた空間の弱点:病害虫が広がりやすいので、入れない工夫と毎日の観察が欠かせません。
おわりに
今日たどってきたのは、施設栽培とは何か、何を操作しているか、そしてよさと課題の3つでした。
露地栽培とのちがいは、育つ環境を人が操作できるかどうかという一点でしたね。
操作するのは、温度・光・水・湿度・空気の5つ。
温度は換気と暖房、光は遮光ネット、水は点滴かん水、湿度は送風機、空気は二酸化炭素で調整するのでした。
そして、安定して作れる代わりに、費用とエネルギーがかかるのが施設栽培の姿です。
最後に一つだけお願いです。
記事の中に出てきた例題を、もう一度ノートで確かめてみてください。
晴れた昼にハウスの中が35度になったとき、まず何をするでしょうか。
たて10メートル、横5メートルのハウスで、1平方メートルあたり1日2リットルの水が要るとき、必要な水は何リットルでしょうか。
読んで分かった気になるのと、自分の言葉で説明できるのとでは、テストでの手ごたえがまるで変わりますよ。
ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。
中学技術【施設栽培のしくみ】ハウスで操作する5つの環境と露地栽培との違いをわかりやすく解説
中学技術の授業でつまずきやすいところを、一つずつ動画にしています。
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