
はじめに
中間テストが近づくと、教室の空気が少しずつ変わっていきますよね。
いつもは元気な子が急に静かになったり、「勉強してないからやばい」と笑いながら言ったり。
何か声をかけたいのに、何と言えばいいのか分からず、結局そっとしておいた経験はありませんか。
実はこの迷いは、先生が冷たいから生まれるのではありません。
テスト前の不安は、本人がいちばんうまく言葉にできないものだからです。
励ませばいいのか、見守ればいいのか。答えが見えないまま、時間だけが過ぎていきます。
この記事では、テスト前に不安がる中学生へ、担任が個別にできる声かけを、三つの手順でまとめました。
気づく、聞く、渡す。この順番です。
私自身、若いころは全員に「大丈夫、君ならできるよ」と言って回り、ある子の日記に「大丈夫と言われるほど、大丈夫じゃない自分がだめな気がした」と書かれてしまったことがあります。
その失敗から学んだことを、そのままお伝えします。
- テスト前に不安がる子のサインを、教室のどこで見つけるか
- 励ます前に聞く、30秒の質問と「大丈夫」で打ち消さない返し方
- 不安を「今日できる一つ」に変えて渡す声かけの型
テスト前の不安に寄りそう3つの手順
先に結論をお伝えします。
テスト前の不安は、消さなくていいんです。
担任の仕事は、不安をなくすことではなく、不安の行き先をつくってあげることです。
そのために、①不安のサインに気づく、②言葉にして小さくする、③今日できる一つのことに変えて渡す、の三つを、この順番で進めます。
どれも教室のなかの三十秒でできることばかりで、特別な技術は要りません。順番を守るだけで、声かけが空回りしにくくなりますよ。
- ポイント1:サインに気づく:言葉・行動・距離に出る、いつもとのちがいを見る。
- ポイント2:言葉にして小さくする:励ます前に30秒聞き、不安を数字にする。
- ポイント3:今日できる一つに変える:一教科・10分・ここから、で渡す。
ポイント1:テスト前に不安がるサインを教室で見つける(言葉・行動・距離)
一つ目は、不安のサインに気づくことです。
不安な子ほど、「不安です」とは言ってくれません。
不安は、勉強の話ではなく、ふだんの様子のなかに小さく出てきます。
だから担任は、声をかける前に、まず見ることから始めます。
サインに気づくポイントを紹介します
なぜテスト前の不安は勉強の話で出てこないのか
テスト前に不安を抱えている子ほど、勉強の話題を避けます。
「不安だ」と口にした瞬間に、できていない自分と向き合うことになるからです。
中学生は、まわりからどう見られるかに敏感な時期でもあります。
だから「勉強してない」「やばい」と笑って言ったり、逆に何も話さなくなったりします。
これは怠けているのではなく、不安から自分を守るための反応です。
担任がこの背景を知っているだけで、子どもの言葉の受け取り方が変わります。
「やる気がない」と見えていた姿が、「怖がっているのかもしれない」と見えてくるはずです。
たとえば、休み時間に「うわ、全然やってない」と大きな声で言う子がいます。
教室では明るく見えますが、そのひとことは「点数が悪くても、驚かないでね」という予防線であることが多いんです。
ここで「じゃあ勉強しなさい」と返すと、子どもは本音を引っこめます。
まずは「そうなんだ」と受け取って、様子を覚えておくだけで、それで十分です。
言葉・行動・距離に出る小さなサイン
サインは、大きく三つの場所に出ます。
一つ目は言葉です。「勉強してない」「どうせ無理」といった予防線の言葉が増えます。
二つ目は行動です。教科書やノートを何度も出し入れする、シャーペンの芯を何度も入れ直す、保健室やトイレに行く回数が増える、といった変化が出ます。
三つ目は距離です。休み時間に友達の輪から少し離れたり、いつも話しかけてくる子が近づいてこなくなったりします。
一つだけなら気のせいで済むことも、二つ三つと重なると、気にかける価値のあるサインになります。
どれか一つではなく、いつもとのちがいを見てください。
たとえば、ふだんは休み時間に友達と話している子が、窓際の席でノートを開いたまま、何分もページをめくらずにいる。
勉強しているようにも見えますが、何から手をつければいいか分からず、固まっているのかもしれません。
見るべきなのは、頑張っている様子ではなく、いつもとのちがいです。
全員を見ようとせず、見る場所を決める理由
不安のサインを見つけようとして、全員を観察しようとすると、かえって誰も見えなくなります。
教室には三十人以上の子がいて、担任の目は二つしかありません。
そこでおすすめなのが、見る時間と見る子を先に決めておくことです。
時間は、朝の会と帰りの会の二回だけ。担任は、気になる子を三人ほど決めて、その子の表情と席での様子だけを見ます。
範囲を絞るほうが、いつもとのちがいに気づきやすくなります。
全員に気を配ろうとして疲れてしまうより、少数をていねいに見るほうが続きます。
続けられることが、この手順ではいちばん大切です。
気づいたことは、その日のうちに一行だけメモに残してください。
「木曜、一限の前にノートを開いたまま止まっていた」くらいの短さで構いません。
声をかけるときは「最近、ノートを開いている時間が長いね」と、見たことをそのまま伝えます。
評価でも励ましでもなく、事実だけを渡すと、子どもは身構えずに返事をしやすくなります。
- 時間:朝の会と帰りの会の二回だけ見る。
- 人数:気になる子を三人ほどに絞る。
- 記録:気づいたら、その日のうちに一行メモ。
ここまでが一つ目、サインに気づくという手順です。
見つけるといっても、探偵のように見張るわけではありません。
朝と帰りの二回、気になる子の様子を静かに見る。それだけで、声をかけるタイミングが見えてきます。
見つけたら、次は聞く番です。
ポイント2:不安を言葉にして小さくする、30秒の声かけの聞き方
二つ目は、不安を言葉にして小さくすることです。
人は、もやもやしたままの不安がいちばん大きく感じます。
言葉にして外へ出すだけで、不安は少し小さくなります。
励ますより先に、聞く。この順番が大切です。
不安を小さくする聞き方のポイントを紹介します
励ます前に聞く。不安は言葉にすると小さくなる
不安は、頭のなかにあるうちは形がなく、実際より大きく感じられます。
ところが、「何が心配なのか」を言葉にして外へ出すと、形が見えて、扱えるものに変わっていきます。
これは大人でも同じです。悩みを誰かに話しただけで、少し楽になった経験はありませんか。
担任がやるのは、答えを出すことではありません。
子どもが不安を言葉にするための、きっかけと時間をつくることです。
不安を言葉にできた時点で、子どもは半分、前に進んでいます。
その手助けが、担任のいちばんの役目です。
励ましは、そのあとで構いません。
聞くといっても、長い面談は要りません。
放課後に廊下で呼び止めて三十秒。授業の終わりに机のそばで一言。
それくらいの短さのほうが、子どもは「大げさにされた」と感じず、安心して話せます。
時間が取れない日は、日記やノートの端に書いてもらう方法もあります。
30秒で聞く3つの質問と、その順番
聞く質問は、三つだけに絞ります。
一つ目は「いちばん心配な教科はどれ?」。範囲を一つに絞ると、漠然とした不安が具体的になります。
二つ目は「今の不安は、十点満点でいくつくらい?」。数字にすると、不安に形ができて、小さく見えてきます。
三つ目は「心配なのは、点数そのもの? それとも、家の人の反応?」。選べる質問にすると、言葉が出にくい子でも答えやすくなります。
どの質問も、はい・いいえで終わらず、子どもが少しだけ考えて答えられる形にしてあります。
答えの中身より、答えようとしてくれたことを大切にします。
この三つは、この順番で聞くのがコツです。
いきなり「何が不安なの?」と聞くと、答えが広すぎて、子どもは「別に」と返してしまいます。
範囲を絞る、数字にする、選んでもらう。
小さな質問を重ねるほうが、不安の正体に近づけます。
答えが返ってきたら、解決しようとせず、まず受け止めてください。
- 範囲を絞る:「いちばん心配な教科はどれ?」
- 数字にする:「今の不安は、10点満点でいくつくらい?」
- 選んでもらう:「心配なのは点数? それとも別のこと?」
「大丈夫」で打ち消してはいけない理由
やりがちなのが、「大丈夫、大丈夫。君ならできるよ」と打ち消してしまうことです。
善意から出た言葉ですが、子どもの耳には「その不安は、言ってはいけないものだ」と聞こえることがあります。
私自身、若いころにテスト前日の帰りの会で全員にそう声をかけ、ある子の日記に「大丈夫と言われるほど、大丈夫じゃない自分がだめな気がした」と書かれていました。
励ましが、その子の不安を言えなくしていたんです。
言葉をかけたつもりが、扉を閉めてしまうことがあります。
子どもは、言えなかった不安を、そのあとも自分ひとりで抱え続けることになります。
代わりにおすすめなのが、「それは心配になるよね」と、そのまま受け止める言い方です。
受け止めてもらえたと感じてはじめて、子どもは次の話を聞く準備ができます。
励ましたい気持ちはぐっと飲みこんで、受け止めることを先にしてください。
それだけで、そのあとの声かけが届きやすくなります。
二つ目の手順をまとめます。
励ます前に聞く。聞くときは、範囲を絞って、数字にして、選んでもらう。
不安は、受け止められたぶんだけ小さくなります。
ポイント3:今日できる一つに変えて渡す、中学生の不安に効く声かけ
三つ目は、今日できる一つのことに変えて渡すことです。
不安な子の頭のなかでは、やることが全部いっぺんに押し寄せています。
全部を小さく区切って渡すと、不安は動き出す力に変わります。
今日できる一つに変えるポイントを紹介します
不安な子の頭の中は「全部」でいっぱいになっている
テスト前に不安がる子の多くは、勉強しないのではなく、どこから手をつければいいか分からなくなっています。
五教科、ワーク、プリント、暗記。やることが頭のなかで一度に押し寄せて、結局どれにも手が出ません。
この状態の子に「ちゃんと勉強しなさい」と言っても、何をすればいいのか分からないので、動けないままです。
不安が強いほど、やる気の問題に見えてしまうのが、この時期のむずかしいところです。
ここを取りちがえると、声かけが全部すれちがいます。
必要なのは、やる気を出させることではなく、やることを小さくしてあげることです。
大人でも、仕事が山積みになると、まず何から片づけるかを決められず手が止まることがありますよね。
そのとき助けになるのは、「まずこれだけ」と言ってくれる人です。
担任が子どもにとってその人になれると、不安は少しずつ動き出す力に変わります。
一教科・10分・ここから、で小さく渡す
渡し方の型は、一教科、10分、ここから、の三つです。
たとえば「今日は数学のワークを二ページだけやってみよう。それで合格ね」と伝えます。
量は、本人が「それならできる」と思えるところまで小さくして構いません。
小さすぎるかな、と思うくらいでちょうどいいです。
終わったあとに「できた」という感覚が残ることが、次の日も続けるいちばんの力になります。
ここで「もう少しできるでしょう」と足してしまうと、せっかくの小さな約束が崩れます。
約束した量を守ることが、信頼の最初の一歩です。
不安な子にとって、守れた約束がひとつ増えることは大きな自信になります。
渡したあとは、終わったら一言だけ報告に来てもらいます。
報告に来たら、点数や正解数の話ではなく、「やったね」と取り組んだ事実を認めてください。
報告が習慣になると、担任と子どもの間に、小さな行き来が生まれます。
それが、不安な時期の子どもにとっての安心の居場所になっていきます。
- 一教科:今日やる教科を一つだけ選ぶ。
- 10分:10分で終わる量にする。
- ここから:始める場所をページで決める。
点数より先に、取り組んだ過程に光を当てる理由
不安な子に「ちゃんと勉強しなさい」と言っても、何をどうすればいいか分からず、動けなくなります。
声をかけるなら、「ワークがここまで進んだね」と、見たことを事実のまま伝えるほうが届きます。
点数は本人の努力だけでは決まらず、結果が出るまで時間もかかります。
それに対して、取り組んだ過程は、今日この瞬間から認めることができます。
認められた経験が、次の一歩を支えます。
過程を認められた子は、結果がどうであっても「やったことには意味があった」と思えます。
その感覚が、次の勉強への小さな推進力になります。
この考え方は、テストが返ってきたあとも同じです。
点数の話をする前に、「ここまでやったよね」とひとこと添えます。
点数が思わしくなかった子には、特にこの一言が大切です。
点数だけで終わると、「やっぱり自分はだめだ」という気持ちが残ってしまいます。
次のテストに向かう気持ちは、前のテストの終わり方で決まります。
三つ目の手順は、全部を小さくして渡すことです。
一教科、10分、ここから。そして、終わったら点数ではなく過程を認める。
この繰り返しで、不安は少しずつ動き出す力に変わっていきます。
明日の確認リスト
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
最後に、あした教室で実際に確かめられることだけを、まとめました。
全部やる必要はありません。気になる子をひとり決めて、一つだけ試してみてください。
それだけでも、子どもの不安は少しずつ動き出します。
大きく変えようとしないことが、いちばんの近道です。
- 気になる子:朝の会で、いつもとちがう子をひとり決める。
- ノートと教科書:出し入れが増えていないか、机の上で確かめる。
- 30秒の質問:放課後に「いちばん心配な教科は?」と聞いてみる。
- 今日の一つ:一教科・10分・ここから、で渡し、翌日ひとこと報告をもらう。
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よくある質問
テスト前の声かけは、全員にしたほうがいいですか
全体には短く、個別は気になる子だけに絞ってください。
帰りの会では「今日できる分を、少しだけ進めておこう」くらいの一言で十分です。
全員に同じ励ましを重ねると、不安の強い子には「自分のことではない」と聞こえてしまうことがあります。
個別の声かけは、朝と帰りの二回で見えた、気になる三人ほどにだけ行います。
その子たちには、放課後や机のそばで、ほかの子に聞こえない声で話しかけます。
名指しされたと感じさせない工夫が、いちばんのやさしさです。
広く浅くより、少なく深くのほうが、不安な子には届きます。
不安を聞いたあと、うまく返せないときはどうしますか
うまく返そうとしなくて大丈夫です。
教える立場だからこそ、正しい答えを返さなければと力が入りますよね。
でも、不安な子が求めているのは、答えよりも聞いてもらえた実感です。
「そっか、それは心配になるよね」と受け止めるだけで、聞いた役目は果たせています。
返す言葉を探して黙ってしまっても、子どもは「ちゃんと聞いてくれた」と感じます。
そのうえで、「今日できそうなことを一つだけ決めようか」と次の一歩につなげてください。
解決しようとして長く話すより、短く受け止めたほうが、子どもは次も話しに来てくれます。
「別に」「大丈夫です」としか言わない子にはどうしますか
無理に聞き出さなくて構いません。
「別に」と返ってくるのは、まだ話す準備ができていないというサインであって、拒絶ではありません。
「別に」と言えるのは、先生の前でそれ以上は崩れないように、気持ちを守っている証拠でもあります。
そんなときは、「困ったら、いつでも言ってね。最近、ノートを開いている時間が長いなと思って見てたよ」と、見ていることだけ伝えて引いてください。
見てもらえている感覚は、あとからじわじわ効いてきます。
数日後に、また一言だけ声をかける。それくらいの距離感がちょうどいいです。
おわりに
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
テスト前の不安は、消さなくていいんです。担任の仕事は、不安の行き先をつくってあげることでした。
気づく、聞く、渡す。この三つを、あした、ひとりの子にだけ試してみてください。
私も若いころは、全員に大丈夫と言って回って、うまくいかなかったひとりです。
でも、見ることから始めて、聞くことを先にして、小さく渡すようにしてから、子どもたちの返事が少しずつ変わってきました。
不安に気づけるのは、毎日そばにいる担任だけです。
難しいことは要りません。あしたの朝、気になる子をひとり決めるところから、始めてみませんか。
ご視聴ありがとうございました。
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ぜひご覧ください。
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