
はじめに
体育祭の練習が始まる前に、中学校の学級には決めなければいけないことが二つあります。
誰がどの種目に出るのか。
そして、クラス対抗リレーを誰が、どの順番で走るのか。
この二つは、たった一時間の学活で決まってしまうこともあれば、二週間ずっと教室の空気を重くすることもあります。
分かれ目になっているのは、クラスの仲の良さではありません。
決め方を、先に決めてあるかどうかです。
決め方が無いまま話し合いを始めると、いちばん声の大きい子か、いちばん優しい子のところに、負担が寄っていきます。
私も若いころ、学活で「やりたい人はいますか」と聞くところから始めたことがあります。
手は、ほとんど挙がりませんでした。
沈黙が続いて、結局こちらで指名しました。
体育祭の当日、その子から「走らされた」と言われました。
決めたのは私で、決め方は無かったんです。
この記事では、中学校の体育祭で、種目・リレー選手・走る順番をもめずに決める七つのやり方を、そのまま使える形でお伝えします。
特別な準備はいりません。
紙を一枚配るところから始められます。
- 種目の希望を、沈黙にせずに集める紙の作り方
- リレー選手を「速い順」だけで決めないための順番
- 走る順番を、最初と最後から埋めていく組み方
- 選ばれなかった子に、担任が当日までに渡しておく役割
体育祭の決め方 3つの場面と7つのやり方
先に結論をお伝えします。
体育祭の話し合いがもめるのは、決める中身がむずかしいからではありません。
決め方を先に決めていないからです。
決める場面は三つ、やり方は全部で七つあります。
この七つを決める前に教室に貼っておくだけで、話し合いの時間は半分になり、当日の「走らされた」が出なくなります。
- その1 種目の決め方:①希望は第三希望まで書かせる ②出たくない種目も同じ紙で集める ③実行委員が原案、クラスは承認だけ
- その2 リレー選手の決め方:④全員の記録を一度そろえてから決める ⑤立候補を先に受け、残りを記録で埋める
- その3 走る順番の決め方:⑥最初は安定・最後は気持ちが強い子 ⑦残りは選手たちに一回だけ組ませる
ポイント1:体育祭の種目の決め方は「希望の集め方」で9割決まる
種目決めがうまくいかない原因は、話し合いの進め方ではありません。
その前の、希望の集め方にあります。
体育祭の種目の決め方のポイントを紹介します
種目決めがもめるのは、決める日ではなく集める日
学活でいきなり「やりたい人」と聞くのは、いちばんもめる集め方です。
まわりに三十人以上の目がある場所で、出たい種目に手を挙げるのは中学生にはとても勇気がいります。
「目立ちたがりだと思われないか」が先に立って、本当は走りたい子まで黙ってしまうからです。
そして沈黙が長くなるほど、教室の空気は重くなり、最後は担任か実行委員が指名する形になります。
指名で決まった種目は、当日「やらされた」に変わります。
ですから、希望はその場で聞かず、必ず紙で集めます。
やり方の一つ目は、この一点です。
紙にすれば、まわりの目を気にせずに書けます。
紙は、第三希望まで書ける形にします。
第一希望だけを書かせると、人気の種目に十人集まって、残りの種目が空欄になります。
そうなると結局そこから調整が始まり、話し合いに戻ってしまいます。
第三希望まであれば、実行委員が並べ替えるだけで、ほとんどの子が自分の書いた種目のどれかに入ります。
「第一希望だけじゃなく、三つ目まで書いてね」と一言そえてから配ると、白紙で返ってくる紙が減ります。
「出たくない種目」を書ける紙にしておく理由
やり方の二つ目は、希望と同じ紙に「出たくない種目」の欄をつくることです。
体育が苦手な子や、けがを治している最中の子は、希望を書く欄しかないと何も書けません。
白紙で出すと、担任からは「どこでもいい子」に見えてしまい、いちばん人が足りない種目に入れられます。
そこから、当日までずっと沈んだ顔で練習に来ることになります。
出たくない種目を書く欄が一つあるだけで、その子は自分の状況を言葉にできます。
書いてもらうときは、理由の欄はつくりません。
理由を書かせると、書ける子と書けない子が出て、また同じことが起きるからです。
集めた紙は、担任が先に一度だけ目を通します。
ここで気になる書き方をしている子がいたら、実行委員に渡す前に、廊下で二言だけ聞いておきます。
「これ、体のこと? それとも、いっしょに出る人のこと?」
この確認をしておくと、実行委員の原案づくりが止まりません。
そして何より、その子は「見てもらえた」と感じます。
実行委員が原案をつくり、クラスは承認だけにする
やり方の三つ目は、決める役を分けることです。
集まった紙をもとに、実行委員が原案をつくります。
クラス全体でやるのは、その原案を見て承認するかどうかだけにします。
全員で一から決めようとすると、意見が出るたびに全部が動き、決まらないまま時間が過ぎていきます。
原案があれば、話し合いは「ここだけ変えたい」という一点に集中します。
実行委員には、原案づくりのルールを先に渡しておきます。
第一希望を優先する、出たくない種目には入れない、どうしても埋まらない枠は最後に相談する。
この三つだけで原案は組めます。
承認の場では、担任は司会をしません。
実行委員に進行を任せて、こちらは「決め方どおりに進んでいるか」だけを見ます。
もし原案に不満が出たら、内容ではなく手続きの話に戻します。
「希望はどう集めた?」「出たくないと書いた人は入っていない?」
手続きが守られていれば、たいていの不満はそこで収まります。
担任が内容の是非を裁くと、決めたのは先生だ、という形になってしまいます。
- ①第三希望まで:希望は紙で集め、第三希望まで書ける欄をつくる。
- ②出たくない欄:同じ紙に「出たくない種目」の欄を置き、理由は書かせない。
- ③原案と承認:実行委員が原案をつくり、クラスは承認だけをする。
ここまでは、紙を一枚用意すればできます。
次のリレー選手決めは、種目決めよりも感情が動く場面です。
ポイント2:リレー選手の決め方は「速い順」だけにしない
クラス対抗リレーの選手決めは、速い順に並べるのがいちばん公平に見えます。
けれど、公平さと納得は別のものです。
リレー選手の決め方のポイントを紹介します
速い順で決めると、なぜ後からもめるのか
速い順に決めたはずなのにもめるクラスには、共通点があります。
その「速い順」に、記録の裏づけが無いことです。
去年の運動会で速かった、部活が陸上だから、体育でいつも先頭にいる。
そういう印象だけで並べると、必ず「あいつより自分のほうが速い」という声が出ます。
言われた側も、自分が選ばれた理由を説明できません。
やり方の四つ目は、選手を決める前に、体育の時間などで全員の記録を一度そろえておくことです。
五十メートルでも百メートルでもかまいません。
全員が同じ条件で走った記録が一つあれば、それが納得の土台になります。
記録を取るときは、目的を先に伝えます。
リレーの選手を決めるために計る、と言ってから走らせるほうが、あとで「知らないうちに選抜されていた」という気持ちになりません。
そして記録は、順位ではなくタイムだけを本人に返します。
クラス全員の順位表を貼り出すと、走るのが苦手な子には、体育祭までずっと残る掲示になってしまいます。
渡すのは、自分の記録だけで足ります。
立候補を先に受ける、という順番
やり方の五つ目は、順番を入れ替えることです。
記録がそろったら、そこからいきなり上位を選ぶのではなく、まず立候補を受けます。
そのうえで、足りない枠だけを記録で埋めます。
この順番にするだけで、リレーの意味が変わります。
記録から入ると、リレーは速い子だけの種目になります。
走りたい気持ちを先に置くと、速くはないけれど出たいと思っていた子が、自分から手を挙げられます。
そして実際にやってみると、立候補だけで枠が埋まる年もあります。
そのときは、記録は使わずに終わります。
立候補を募るときの言い方も決めておきます。
「走りたい人が先。足りないところを、記録で決めるね」
この一言を、募集の前に必ず言います。
先に手を挙げた人が優先される、と分かっていれば、迷っている子が動けます。
逆にこれを言わずに募ると、速い子が挙げるのを待ってから決めよう、という空気になり、また沈黙が生まれます。
選ばれなかった子に、担任が先に声をかけておく
決め方をどれだけそろえても、立候補したのに選ばれない子は必ず出ます。
ここでの担任の一言が、その子の体育祭を決めます。
やってしまいがちなのは、結果が出てから「残念だったね」と声をかけることです。
その言い方だと、負けたことだけが残ります。
声をかけるのは、発表の前です。
「立候補した人がこれだけいて、枠がこれだけしかない」と、事実を先に伝えておきます。
そのうえで、選ばれなかったときにその子が入る役割を、いっしょに決めておきます。
結果を知る前に次の居場所が決まっていると、受け取り方がまるで違います。
そして、「補欠」という言葉は使いません。
補欠と呼ばれた子は、体育祭の当日ずっと補欠のままになります。
使うのは、役割の名前です。
記録係、応援のリード、招集の手伝い、写真の担当。
「走らないんじゃなくて、役割がちがうだけだよ」と伝えて、その役割を学級の係表と同じように紙に書き出します。
名前が書かれた瞬間から、その子にとっての体育祭が始まります。
- ④記録を先にそろえる:全員が同じ条件で走った記録を一度だけ取っておく。
- ⑤立候補が先、記録があと:走りたい人を先に受け、残った枠だけを記録で埋める。
選手が決まったら、最後に残るのが走る順番です。
ここは、担任が全部決めないほうがうまくいきます。
ポイント3:リレーの走順の決め方は、最初と最後から埋める
走る順番を一番目から順に並べようとすると、たいてい途中で止まります。
先に埋めるのは、最初と最後の二つだけです。
リレーの走順の決め方のポイントを紹介します
走る順番は、最初と最後から決める
やり方の六つ目は、埋める場所の順番です。
いちばん最初を走る子は、速さよりも安定している子を選びます。
スタートはいちばん混み合う場所で、バトンを落としたり、コースに入るタイミングを間違えたりが起きやすいからです。
ここでつまずくと、そのあとの全員が焦ります。
いちばん最後を走る子は、速さではなく気持ちが強い子にします。
アンカーは、抜かれても差し返せるかどうかで結果が変わります。
最初と最後が決まると、真ん中は自然に絞られます。
この二つを先に置くだけで、話し合いの時間はぐっと短くなります。
選ぶときには、理由をその場で言葉にして伝えます。
「最後を走る人は、速さじゃなくて心で選ぶよ」
こう先に言っておくと、いちばん速い子がアンカーではないことに、誰も文句を言いません。
アンカーになった子も、速いから選ばれたのではないと分かっているので、当日の走りが変わります。
担任がその場で言った基準は、そのままクラスの基準になります。
最終決定は、選手たちに一回だけ任せる
やり方の七つ目は、最後を手放すことです。
最初と最後が決まったら、真ん中の順番は選手たちに組ませます。
担任が全部決めた順番と、自分たちで並べた順番では、当日の走りが本当に違います。
誰から誰へバトンを渡すのかを自分で決めた子は、前の走者の背中をずっと見ています。
任せるときは、時間だけを区切ります。
放課後の十分間で決めて、決まったら紙に書いて持ってくる。
それ以上は口を出しません。
速い子を後ろに固めても、苦手な子を前後で挟んでも、そこは選手たちの判断でかまいません。
もし決まらずに戻ってきたら、そのときだけこちらが並べます。
任せるのは一回だけ、と先に伝えておくのも大切です。
何度も組み替えられるようにすると、練習のたびに順番が変わり、バトンの練習ができなくなります。
決めたら、その日のうちに紙に書いて教室に貼ります。
貼ってあると、休んでいた子も次の練習ですぐ入れます。
決め方を先に貼っておくと、当日もめない
七つのやり方は、決めたあとではなく、決める前に教室に貼っておきます。
これが、いちばん効きます。
人は、自分に不利な結果でも、手続きが分かっていれば受け取れます。
逆に、どれだけ丁寧に決めても、決め方が見えないままだと「先生が決めた」に見えます。
貼るのは、大きな紙一枚で足ります。
希望は紙で集める、第三希望まで書く、出たくない種目は入れない、立候補が先で記録があと、最初と最後は基準で選ぶ。
この五行があれば、聞かれたときに同じ答えを返せます。
貼る場所は、連絡黒板の横など、毎日目に入るところにします。
紙に残しておくと、保護者から問い合わせがあったときにも助かります。
どうしてうちの子が選ばれなかったのか、と聞かれたときに、その場で考えた説明をすると、担任の主観に聞こえます。
決め方の紙を見ながら「こう決めました」と伝えられれば、話はそこで終わります。
写真に撮っておいて、学年の先生と同じものを使うのもおすすめです。
クラスによって決め方が違うと、そこがいちばん問い合わせになります。
- ⑥最初と最後から:最初はミスの少ない安定した子、最後は気持ちが強い子にする。
- ⑦一回だけ任せる:真ん中は選手たちが十分間で組み、その日のうちに紙に貼る。
集め方を変え、順番を入れ替え、最後を手放す。
この三つがそろうと、体育祭は担任がひとりで背負う行事ではなくなります。
明日の確認リスト
全部を明日やる必要はありません。
やることは、紙を一枚つくることだけです。
希望を書く欄と、出たくない種目を書く欄がある紙。
それを配れば、あとの六つは順番に落ちていきます。
下のリストは、その日のうちに確かめられることだけを並べました。
体育祭の学活が入っている週に、教室で一つずつ見てみてください。
- 紙:希望調査に、第三希望の欄と「出たくない種目」の欄があるか。
- 順番:リレーは立候補を先に受ける形になっているか。
- 記録:全員が同じ条件で走った記録が、一度でも取ってあるか。
- 役割:走らない子の役割が、発表の前に決まっているか。
- 掲示:決め方を書いた紙が、決める前に教室に貼ってあるか。
行事の練習をどう組み立てるかをまとめた「合唱コン 練習の1週間シート」を、公式LINEで無料でお渡ししています。
登録された方には「学級通信100号」もあわせてお送りしています。
よくある質問
希望調査をしても白紙で出す子がいます
白紙は「どこでもいい」ではなく、「書けない」と受け取ってください。
体育に苦手意識がある子ほど、希望の欄しかない紙には何も書けません。
ですから、まず紙の形を変えます。
出たくない種目を書く欄を足すと、白紙はぐっと減ります。
それでも白紙で出す子には、廊下で二言だけ聞きます。
「これ、体のこと? それとも、いっしょに出る人のこと?」
この二択にすると、うなずくだけで答えられます。
聞いたことは、実行委員に渡す前に担任だけで受け取っておきます。
教室で全員の前で聞かないことだけは、守ってください。
速い子を親から推されたときはどうしますか
その場で結果の話をせず、決め方の話に戻してください。
うちの子のほうが速いのに、と言われたときに、担任がその子の速さを評価する形で答えると、話は終わりません。
返すのは、決め方です。
立候補を先に受けたこと、足りない枠を記録で埋めたこと、その記録は全員が同じ条件で取ったこと。
この三つを順番に伝えます。
そのために、決め方を書いた紙を先に貼っておきます。
紙があると、担任の判断ではなくクラスの手続きとして説明できます。
学年で同じ紙を使っていれば、なお強くなります。
実行委員に任せると、仲のいい子だけで決めませんか
原案づくりのルールを先に渡しておけば、その心配はほとんど起きません。
任せるときに危ないのは、白紙から自由に決めさせることです。
渡すのは三つだけでかまいません。
第一希望を優先する、出たくないと書いた種目には入れない、埋まらない枠は最後に相談する。
この三つがあると、実行委員は自分の好みではなく紙の中身で並べるようになります。
担任は原案づくりの場に同席して、口は出さずに見ているだけにします。
そして、原案は必ずクラスの承認を通します。
決めるのは実行委員、認めるのはクラス、という形にしておくことが大切です。
おわりに
もめないクラスは、仲がいいから、もめないのではありません。
決め方が先にあるから、結果を受け取れるんです。
希望どおりにならなかった子も、決め方が見えていれば、その結果を自分のものとして受け取れます。
体育祭で本当に育つのは、走る力ではなく、そこだと思っています。
明日やることは、ひとつだけで大丈夫です。
希望を書く紙を、一枚つくる。
第三希望まで書ける欄と、出たくない種目を書ける欄をつける。
それだけで、あの沈黙の学活は起きなくなります。
ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。
学級経営のヒントを受け取る
LINEで「合唱コン 練習の1週間シート」を無料プレゼント中。
練習の型・1週間の見取り図・だれた日の戻し方まで、そのまま書きこめる1枚です。合唱コンの前に受け取ってください。











