リーダーばかりが頑張るクラスへ ― 行事前に担任がやる3つのこと【中学校の学級経営】

はじめに

体育祭や合唱コンクールの準備が始まると、リーダーの子だけが走り回っていませんか。
集まってくださいと声をかけても、教室はざわついたまま。
動くのは、いつも同じ数人だけ。
いちばんしんどい思いをしているのは、任された子のほうです。

二回目、三回目と、その子の声はだんだん小さくなっていきます。
やがて、何も言わなくなる。
見ていられなくなって、担任が代わりに声をかける。
その場は静かになりますが、次の日はまた同じことのくり返しです。

ここで多くの先生が、リーダーをもっと育てなければ、と考えます。
けれど、行事のたびにリーダーだけが疲れていく学級は、鍛える相手を間違えているのかもしれません。
変えるのは、リーダーではなく、その言葉を受け取る側のほうです。
この記事では、行事前に担任がやることを3つお伝えします。

行事前にやる 3つのこと

リーダー育成というと、どう任せるか、どう声をかけるか、というリーダー本人への関わり方の話だと思われがちです。
けれど実際に効いてくるのは、まわりの子がその言葉をどう受け取るか、という学級全体の姿勢のほうです。
同じ言葉でも、担任が言えば動くのにリーダーが言うと動かない。
これは技術の差ではなく、聞く側の差です。

そしてこの3つは、行事の当日を成功させるためのものではありません。
続けるほど、担任が指示を出す回数が減っていきます。
次の行事でリーダーを決めるとき、手を挙げる子が増えていきますよ。

行事前にやる3つのこと
  • その1:任せた側の責任を言葉にする:リーダーを選んだ人にも、リーダーとは違う責任があると先に伝える。
  • その2:担任が、代わりに言わない:指示を上書きせず、「仲間の言葉を受け取ってね」だけを添える。
  • その3:失敗を、先に許しておく:空振りする日があると先に伝え、動いた事実のほうを拾って返す。

ポイント1:任せた側の責任を言葉にする

一つ目は、責任の置き場所を変えることです。
リーダー本人に声をかける前に、学級全体へ問いを返します。
任せたのは、リーダーではなく学級全体です。

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任せた側の責任を言葉にするのポイントを紹介します

リーダーが動かないのは、力不足ではない

行事のリーダーが決まったのに、思ったように学級が動かない。
そんなとき、まず疑われるのはリーダー本人の力です。
声が小さい、指示があいまい、まとめる力が足りない。
けれど、実際に起きていることは少し違います。
声は出ているのに、受け取る側がその言葉を自分への呼びかけとして聞いていないんです。
同じ内容でも、担任が言えば動くのにリーダーが言うと動かない。
これはリーダーの技術の差ではなく、聞く側の姿勢の差です。
だから、直す場所もリーダーではありません。
まずは、学級全体の受け取り方のほうから変えていきます。

選んだ人・任せた人にも、責任がある

私が行事の前に必ず伝えるのは、責任はリーダーだけのものではない、ということです。
リーダーを選んだのは学級全体ですから、選んだ人、任せた人にも、リーダーとは違う役割と責任があります。
具体的には、リーダーが気持ちよく働けるように、リーダーが求める以上の姿を見せるという責任です。
これを、行事が始まる前にはっきり言葉にしておきます。
始まってから言うと、注意や説教に聞こえてしまうからです。
先に伝えておけば、うまくいかない場面が来たときに、全員が自分のこととして受け取れるようになります。

行事の前に学級全体へ役割と責任を伝える先生

厳しい言葉は、翻訳して返す

練習が進むと、リーダーがきつい言い方をする場面が必ず出てきます。
まわりからは、えらそう、うるさい、という声が上がります。
ここで担任が黙っていると、リーダーは一気に孤立します。
だから私は間に入って、こう返します。
リーダーが厳しいのは、みんなを理想に近づけたいからです、と。
そのうえで、全員にも問いを返します。
あなたは、リーダーの頑張りに応えることができましたか。
できない言い訳を並べて、応えることから逃げていませんか。
これは責めるためではなく、責任を分け合うために聞く言葉です。

責任を分け合う3つ
  • 先に伝える:行事が始まる前に、任せた側の責任を言葉にしておく。
  • 問いは全員へ:「リーダーの頑張りに応えられたか」を学級全体に返す。
  • 翻訳する:リーダーの厳しさを「よくしたいから」と言い換えて渡す。

ここまでで、リーダーが一人で背負う構図がほどけていきます。
準備するものはありません。
次の行事の最初の時間に、一言足すだけで始められますよ。

ポイント2:担任が、代わりに言わない

二つ目は、担任が口を開くタイミングを変えることです。
言う内容ではなく、誰が先に言うかを変えます。
先に声を出すのは、いつもリーダーです。

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担任が、代わりに言わないのポイントを紹介します

先生が言い直すと、リーダーの言葉が軽くなる

リーダーが声をかけても静かにならないとき、担任はつい代わりに言ってしまいます。
私も、何度もやりました。
先生が言えばその場は数秒で静かになりますから、効率だけを見れば正しいようにも思えます。
けれど、これをくり返すと教室はこう学習していきます。
リーダーの言葉は聞かなくていい、先生が言ってから動けばいい、と。
つまり、担任が助けるつもりでやったことが、リーダーの言葉から力を奪っていたわけです。
それに気づいてから、私は声をかける前に一度こらえるようにしました。
ぐっとこらえる数秒が、そのまま指導になっています。

言うのは「仲間の言葉を受け取ってね」だけ

では、担任は何もしないのかというと、そうではありません。
言うことは決まっていて、たったひとつです。
仲間の言葉を、受け取ってね。
給食の時間に話し声が大きくなったとき、私が言おうとすると、必ず係の子が先に静かにしてねと声を出します。
そこで私は指示を上書きせず、この一言だけを添えます。
同じ内容を先生が言い直せば、リーダーの言葉は消えてしまうからです。
担任の役割は、指示を出すことではなく、リーダーの言葉を学級に届けることのほうです。
行事の練習でも同じで、リーダーが集合の声をかけたら、私はそのあとに一言を添えるだけにしています。

係の呼びかけを受け取って動き出す子どもたち

受け取って動いた子を、名前で返す

一言を添えたあとに、もうひとつやることがあります。
受け取って動いた子を見つけて、名前を呼んで返すことです。
今の声で、手を止めてくれたね。
見えた事実を、そのまま伝えます。
ほめちぎる必要はありません。
名前があるだけで、自分に向けられた言葉になります。
これを続けると、リーダーの呼びかけに応えることが、その学級では価値のある行動になっていきます。
以前、朝の消毒を係が呼びかけたときも、この一言を添えた次の日から、自分からやる子がはっきり増えました。
行事の準備でも、この返し方は変わりません。

代わりに言わない3つ
  • 一歩下がる:声をかけたくなったら、こらえてリーダーの声を待つ。
  • 一言だけ:「仲間の言葉を受け取ってね」以外は言わない。
  • 名前で返す:受け取って動いた子を見つけて、事実をそのまま伝える。

担任がしゃべる量が減るほど、リーダーの言葉は重くなっていきます。
難しい技術はいりません。
まずは、三秒だけ待つところからで大丈夫ですよ。

ポイント3:失敗を、先に許しておく

三つ目は、うまくいかなかった日の扱い方です。
ここが、次の行事で手が挙がるかどうかを決めます。
空振りする日は、必ず来ます。

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失敗を、先に許しておくのポイントを紹介します

空振りする日があると、先に伝えておく

リーダーの提案が空振りする日は、必ず来ます。
集合の時間に半分しか集まらない、決めた練習メニューが時間内に終わらない。
行事の準備では、めずらしいことではありません。
問題は、そのときに誰が責められるかです。
たいていリーダーに矛先が向き、本人も自分のせいだと思い込みます。
ここで一度つぶれると、次の行事でその子はもう手を挙げません。
だから私は、始める前に伝えておきます。
失敗は成長するためにあるので、うまくいかない日があっても責めません、と。
先に許しておくことが、挑戦を続けさせる仕組みになります。

うまくいかなかった日こそ、事実を拾う

空振りした日の帰りの会が、いちばん大事な時間です。
ここで担任が何も言わずに終わると、失敗した記憶だけが残ります。
私は結果ではなく、動いた事実のほうを拾って返します。
今日、何度も声をかけていたね。
集まらなかったけれど、前に立ち続けていたね。
名前を出して、そのまま伝えます。
そして、同じ内容を学級通信にも一行だけ書きます。
帰りの会と通信の二か所で返すと、家庭にも届き、本人の中に確かに残ります。
失敗した日に拾われた経験は、次に手を挙げるときの支えになります。
まわりの子も、動いた人が認められる学級なのだと知ります。

うまくいかなかった日に動いた事実を認めて返す先生

人のせいにしない、を最後に置く

最後に、学級全体へ返しておきたい言葉があります。
よくないのは失敗することではなく、誰かのせいにして自分をふり返らないことです。
リーダーが至らなかった、まわりが動かなかった。
そう言い合っている間は、次の行事でも同じことが起きます。
リーダー意識とは、他人のせいにできないことだと私は伝えています。
役職に就く子は一人でも、この意識は全員が持てます。
人のせいにせず、自分がここで踏ん張ると思える子が増えていくと、学級は担任がいなくても動くようになります。
だからこの言葉は、行事が終わる日にもう一度返します。

空振りした日の3つ
  • 先に許す:うまくいかない日があっても責めない、と始める前に伝える。
  • 事実を拾う:結果ではなく、声をかけた・前に立ったという動きを返す。
  • 二か所で返す:帰りの会と学級通信の両方で、名前を出して残す。

失敗しても大丈夫だと分かると、リーダーは次の一手を出せるようになります。
挑戦の回数が増えるほど、育ちも早くなります。
まずは、始める前の一言からで十分ですよ。

おわりに

リーダーばかりが頑張っているように見えるとき、必要なのは、その子を鍛えることではありません。
任せた側の責任を、言葉にしておくこと。
担任が、代わりに言わないこと。
失敗を、先に許しておくこと。
この三つは、どれも担任の側で決められることです。

明日から全部やろうとしなくて大丈夫ですよ。
まずは、注意しようと思った瞬間に三秒だけ待ってみてください。
誰かが声を出したら、その子の名前を呼んで返す。
問いをリーダーではなく全員に向けるのは、そのあとで間に合います。

リーダーは一人でも、リーダー意識は全員が持てます。
行事は、そのための場です。
八月のうちにこの三つを決めておくと、九月からの練習がまるで変わりますよ。
担任の声が小さくなっていく学級を、これから作っていけます。

行事前に担任がやる3つのことのまとめ

ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
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