合唱コンクールの練習がだれるクラスへ ― 始まる前に決める3つのこと【中学校の学級経営】

はじめに

十月の合唱コンクールに向けて、九月から練習が始まります。
去年のことを思い出してみてください。
最初の一週間はよく声が出ていたのに、三週目あたりから小さくなっていった。
中学校では、めずらしくない景色です。

私も以前は、もっと真剣にやろう、と言っていました。
気持ちの問題だと思っていたからです。
けれど、言えば言うほど音楽室の空気は重くなりました。
子どもは、何をどうすればいいのか分からないままだったんです。

練習がだれるのは、気持ちが足りないからではありません。
その日の練習で何をするかが、決まっていないからです。
そしてそれを決めるのは、練習が始まってからでは間に合いません。
この記事では、練習が始まる前に担任が決めておく3つのことをお伝えします。

始まる前に決める 3つのこと

合唱コンクールの指導というと、歌をどう仕上げるかという音楽の話だと思われがちです。
けれど担任がその日のうちに動かせるのは、歌そのものではなく練習の段取りのほうです。
音楽の専門でなくても、時間の区切り方と順番は決められます。
実際、仕上がりに差が出るのはこちらの側です。

そしてこの3つは、金賞を取るためだけのものではありません。
練習が短く終わるようになると、叱る回数が減って、教室が穏やかになります。
本番前に担任が慌てなくなりますよ。

練習が始まる前に決める3つ
  • その1:一回の練習の、型を決める:十五分を三・七・五で区切り、その日の目標を一つだけ書く。
  • その2:全体で合わせる前に、パートで音を取る:音源と少人数で回し、週に一度だけ録音して聴かせる。
  • その3:だれた日の戻し方を、先に決めておく:叱る前に今日の一つへ戻し、五分早く切り上げる。

ポイント1:一回の練習の、型を決める

一つ目は、歌い方より先に段取りを決めることです。
練習が始まってから考えると、毎回同じところで時間が消えます。
決めるのは、区切り方と順番の二つだけです。

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一回の練習の、型を決めるのポイントを紹介します

いちばん消えているのは、始まりの五分

合唱の練習時間は、思っているより短いものです。
朝の十分、昼の十五分、放課後の三十分。
その中でいちばん失われているのが、始まりの五分です。
音楽室へ移動して、並ぶ場所を確かめて、今日は何をするのかを聞く。
ここが決まっていないと、毎回同じところで時間が溶けていきます。
子どもが動かないのではありません。
どこに立って、何から始めるのかが分からないだけです。
だから最初に決めるのは、歌い方ではなく段取りのほうです。
並ぶ位置と、始まりの合図と、その日にやることの順番。
この三つを固定するだけで、練習は五分ぶん長くなります。

十五分を、三・七・五で区切る

では、その十五分をどう使うか。
私が決めているのは、三・七・五の区切りです。
最初の三分は発声にあてます。
声を出す準備ができていない状態でいきなり歌っても、音は取れません。
次の七分はパート練習です。
ここがいちばん長いのは、音を取るための時間だからです。
最後の五分で、全体を合わせます。
そろわなくてもかまいません。
今日どこまで進んだのかを、全員で耳で確かめるための五分です。
時間の長さそのものより、毎回同じ順番であることが効いてきます。
次に何が来るかが分かっていると、子どもは迷わずに動けます。

練習の時間配分を書いた紙を見ながら計画を立てる先生

今日の目標を、一つだけ黒板に書く

型と一緒に決めておきたいのが、その日の目標です。
合唱の練習は、終わりが見えないと途中でだれます。
だから練習が始まる前に、今日ここまでできたら合格、という線を一つだけ書いておきます。
ソプラノのサビだけ音を取る。
出だしの四小節を、全員でそろえる。
それくらい小さくてかまいません。
大事なのは、一つに絞ることです。
二つ書くと、どちらも中途半端なまま終わります。
そして終わりの一分で、その線に届いたかどうかだけを確かめます。
できた日が積み上がると、子どもは自分たちで前に進み始めます。

一回の練習の型(十五分の場合)
  • 発声 3分:声の準備ができていないうちは、歌っても音が取れない。
  • パート練習 7分:いちばん長く取る。音を取るための時間にあてる。
  • 全体 5分:そろわなくてよい。今日どこまで進んだかを耳で確かめる。

型が決まると、練習は同じ時間でも中身が変わります。
用意するものは、黒板に書く一行だけです。
今週のうちに決めておけますよ。

ポイント2:全体で合わせる前に、パートで音を取る

二つ目は、音を取る順番です。
ここを逆にすると、どれだけ練習しても声は大きくなりません。
担任が歌を教える必要はありません。

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全体で合わせる前に、パートで音を取るのポイントを紹介します

声が小さいのは、やる気ではなく自信の問題

三週目に声が小さくなるクラスを見ていると、原因はやる気ではないことがほとんどです。
自分の音が合っているか分からないから、小さく歌っているんです。
まわりの声にまぎれてしまえば、間違っても気づかれません。
ここで、もっと大きな声で、と言っても解決しません。
自信がないまま声だけ大きくするのは、子どもにとってかなり怖いことだからです。
先に必要なのは、自分のパートを一人でも歌える状態にすること。
音が取れている子は、言われなくても声が出ます。
声の大きさは、あとから結果としてついてきます。

パート練習は、音源と少人数で回す

では、どう音を取るか。
担任が歌を教える必要はありません。
私は音楽の専門ではないので、音源を流して少人数で回すだけにしています。
教室の四隅にパートごとに分かれて、同じところを繰り返す。
パートリーダーは、歌の上手さではなく、音源を止めたり戻したりできる子に頼みます。
担任が見るのは、上手いか下手かではありません。
口が動いているかどうか、その一点だけです。
動いていない子がいたら、あとで一人のときに声をかけます。
全体の前で名前を呼ぶことは、しないでおきます。
音が取れた子から、自然に声が大きくなっていきます。

少人数のグループに分かれて活動する子どもたち

週に一度だけ、録音して聴かせる

音が取れてきたかどうかは、実は子ども自身がいちばん分かりません。
そこで週に一度だけ、全体練習の最後を録音して、その場で聴かせています。
端末で録るので、準備に一分もかかりません。
聴かせるとき、上手いとか下手とかは言わないでおきます。
先週とくらべてどうか、それだけを聞きます。
すると子どもは、自分の耳で違いを見つけてきます。
先生に言われて直すのと、自分で気づいて直すのとでは、次の練習の顔つきが変わります。
本番の一週間前にもう一度録っておくと、最後の伸びが自分たちで分かりますよ。

音を取る順番の3つ
  • 順番:全体で合わせる前に、パートごとに音を取る。逆にしない。
  • 見るところ:上手か下手かではなく、口が動いているかどうかだけ。
  • ふり返り:週に一度だけ録音し、先週との違いを自分の耳で確かめさせる。

順番を変えるだけなので、明日からでも始められます。
音楽の知識はいりません。
音源と、四隅に分かれる場所があれば十分です。

ポイント3:だれた日の戻し方を、先に決めておく

三つ目は、うまくいかない日の決め方です。
ここを決めておかないと、担任の言葉がその日の機嫌に左右されます。
戻す先は、一つ目で決めた型です。

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だれた日の戻し方を、先に決めておくのポイントを紹介します

だれる日は、三週目に必ず来る

どれだけ準備をしても、練習がだれる日は来ます。
そういうものだと知っておくだけで、担任の受け止め方が変わります。
多いのは三週目です。
音が取れて、歌えるようになって、けれど仕上がりまではまだ遠い。
いちばん変化が見えにくい時期だからです。
ここで、このクラスはやる気がない、と受け取ってしまうと、言葉が強くなります。
そして子どもは、合唱そのものが嫌いになります。
だれたのは学級の質が落ちたからではなく、そういう時期に入っただけ。
先にそう決めておくと、叱らずに次の一手を出せます。

叱る前に、今日の一つに戻す

実際にだれてきた日、私がやるのは一つだけです。
いったん歌をとめて、今日の目標に戻します。
今日はここまでだったよね、と黒板に書いた線を指すだけでいい。
説教はしません。
そこから、残りの時間でその一つだけをやります。
それでも空気が戻らない日は、五分早く切り上げてしまいます。
だらだら続けた三十分より、集中した十分のほうが仕上がります。
切り上げるときは、今日はここまでにしよう、明日はこの続きから、と次の入り口まで言って終えます。
終わり方を決めておくと、次の日の始まりが軽くなります。

もう一度やってみようと子どもの挑戦を後押しする場面

残りは日数でなく、練習できる回数で伝える

もう一つ、だれた時期に効くのが残りの伝え方です。
本番まであと三週間、と言っても、子どもには長さが伝わりません。
私は回数で言うようにしています。
朝と昼と放課後を数えて、本番まであと十二回。
数えられる数字にすると、一回の重みが変わります。
教室のうしろに残りの回数を書いた紙を貼って、一回終わるごとに減らしていくのも分かりやすいです。
あとどれだけできるかが見えると、今日の一回を大事にしようという気持ちが出てきます。
あせらせるためではなく、今に集中するための数字です。

だれた日の戻し方の3つ
  • 受け止め方:三週目にだれるのは時期の問題。学級の質が落ちたわけではない。
  • 戻し方:説教の前に、黒板に書いた今日の目標を一つだけ指して戻る。
  • 終わり方:空気が戻らない日は五分早く切り上げ、明日の入り口まで言って終える。

だれる日が来ると分かっていれば、あわてずにすみます。
準備するのは、心構えだけです。
今のうちに決めておくと、九月がずいぶん楽になりますよ。

おわりに

合唱コンクールの練習がだれるのは、子どものやる気が足りないからではありません。
一回の練習の、型を決めること。
全体で合わせる前に、パートで音を取ること。
だれた日の戻し方を、先に決めておくこと。
この三つは、どれも歌の知識がなくても担任の側で決められます。

全部をそろえようとしなくて大丈夫ですよ。
まずは練習の予定表を、A4一枚だけ作ってみてください。
一週目はここまで、二週目はここまで、と週ごとの目標を三行書くだけで十分です。
それを練習が始まる前に配っておくと、初日の五分が変わります。

合唱コンクールは、直前だけがんばる行事ではありません。
ふだんから仲間を支えている学級だから、最後に声がそろいます。
その土台は、もう一学期のうちに育っているはずです。
九月に練習が始まる前、八月のうちに予定表を一枚だけ作っておきましょう。

合唱コンクールの練習が始まる前に担任が決めておく3つのことのまとめ

ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
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