
はじめに
九月に入って、教室がうまく回らない。
朝、学校へ行くのが重い。
そんな気持ちのまま二学期を始めている先生は、めずらしくありません。
二学期の初めは、一年でいちばん担任が消耗する時期です。
私も若いころ、うまくいかないのは自分の力不足だと思っていました。
だから誰にも言えませんでした。
まわりの先生も忙しそうで、声をかけるタイミングが分からない。
そうしているうちに、また次の朝が来るんです。
けれど二学期がしんどいのは、あなたの力量が足りないからではありません。
ひとりで抱える形になっていることが原因です。
だから変えるのは、気持ちではなく仕組みのほうです。
この記事では、しんどさをひとりで抱えないための3つの手立てをお伝えします。
ひとりで抱えない 3つの手立て
学級経営の本を開くと、子どもへの関わり方がたくさん書かれています。
けれど九月に効くのは、子どもへの手立てだけではありません。
担任がどこまで抱えるかという、仕事の持ち方のほうです。
ここが整っていないと、どんなに良い方法を知っていても続きません。
これから挙げる3つは、どれも今週のうちに始められます。
がんばり方を増やす話ではなく、抱え方を変える話です。
紙一枚と、五分の会話があれば足ります。
- その1:しんどさを、分けて書く:紙一枚を三つに区切り、動かせるものと動かせないものを分ける。
- その2:早く、小さく、相談する:事実・困り・お願いの順で、五分だけ話す。
- その3:やめることを、先に決める:毎日やることを三つに絞り、残りは週に一度へ移す。
ポイント1:しんどさを、分けて書く
一つ目は、しんどさをひとまとまりにしないことです。
まとめたままだと、実際より大きく見えます。
分けると、動かせるところが見えてきます。
しんどさを、分けて書くのポイントを紹介します
「うまくいかない」の中身は、ひとつではない
クラスがうまくいきません、という言葉の中には、種類のちがう困りごとが混ざっています。
授業中の私語、提出物の遅れ、特定の子との関係、保護者からの問い合わせ、そして自分の疲れ。
ひとまとめのままだと、全部が同じ大きさの塊に見えてしまいます。
そして塊は動かせません。
動かせないものを毎日見ていると、やっぱり自分の力不足だ、という結論にたどり着きます。
けれど中身を並べてみると、今日のうちに手を打てるものと、時間をかけて変わっていくものが混ざっているはずです。
まず必要なのは、がんばりを増やすことではありません。
中身を分けることのほうが先です。
紙一枚を、三つに分けて書き出す
やり方は簡単です。
放課後に紙を一枚だけ用意して、縦に三つへ区切ります。
左は自分で変えられること、まん中は人に頼めること、右は今は変えられないこと。
今かかえている困りごとを、思いついた順にどこかへ書いていきます。
きれいにまとめる必要はありません。
十分もあれば埋まります。
頭の中でやろうとすると同じところを回ってしまうので、必ず手を動かして紙に出します。
書き終えたら、左の欄だけを見てください。
そこに書いてあるものが、あなたが今週動かせるすべてです。
たいていは思っていたよりずっと少なく、そのぶん確かに動かせるものが残ります。
「今は変えられないこと」は、抱えなくていい
三つに分けると、右の欄が必ず残ります。
家庭の事情、去年からの人間関係、学年の方針、時間割そのもの。
担任がひとりで背負っても、今日は動かないものです。
ここに入ったものは、いったん抱えるのをやめます。
放り出すという意味ではありません。
今の自分がひとりで動かす場所ではない、と決めるだけです。
若いころの私は、この欄まで自分の責任だと思っていました。
だから何をしても足りない気がしていたんです。
右の欄は、学年や管理職と一緒に見ていく場所だと考えておきます。
抱えるものが減ると、残った困りごとに向ける力が戻ってきます。
- 左:自分で変えられること:今週のうちに手を打てるもの。動くのはここだけでよい。
- まん中:人に頼めること:五分の相談で片づくもの。相手は話しやすい人から。
- 右:今は変えられないこと:ひとりでは動かないもの。抱えるのをいったんやめる。
書くのは十分で終わります。
用意するのは、紙とペンだけです。
今日の放課後にでも試せますよ。
ポイント2:早く、小さく、相談する
二つ目は、相談のタイミングと形です。
大きくなってから伝えるほうが、まわりの手間は増えます。
早く言うことは、迷惑をかける行為ではありません。
早く、小さく、相談するのポイントを紹介します
遅れた相談ほど、まわりの手間は大きくなる
相談できない理由の多くは、迷惑をかけたくない、という気持ちです。
まわりの先生も忙しそうに見えますし、こんなことで、と思われるのが怖い。
その気持ちはよく分かります。
けれど実際に手間がかかるのは、早い相談ではなく遅い相談のほうです。
小さいうちなら、席の配置を変える、次の時間だけ様子を見てもらう、そのくらいで収まります。
ところが大きくなってからでは、学年全体で対応を組み直すことになります。
早く言うのは、迷惑をかける行為ではありません。
まわりの手間を減らす行為です。
事実・困り・お願いの順に、五分で話す
相談には型があります。
まず、起きたことを短く事実だけで伝えます。
次に、困っていることを一つだけ言います。
最後に、してほしいことを具体的にお願いします。
見てほしい、代わってほしい、一緒に入ってほしい、と動作で言うのがこつです。
この順で話すと、五分で終わります。
ここで大事なのは、困りごとを一つに絞ることです。
まとめて話すと、聞くほうはどこから手をつけるか決められません。
いちばん困っている一つだけを、先に置きます。
切り出し方は、五分いいですか、で十分です。
忙しい先生ほど、短くまとまった相談のほうが答えやすいものですよ。
相手は、詳しい人より話しやすい人から
誰に相談するかで迷って、結局言えないまま終わることがあります。
学年主任に言うべきか、生徒指導の先生に通すべきか。
順番を気にしているうちに、日が過ぎていきます。
最初のひとりは、いちばん話しやすい人でかまいません。
隣の席の先生でも、去年同じ学年だった先生でもいいんです。
話しているうちに、これは誰に通すべき話なのかが見えてきます。
そこまで整理できていれば、主任へ持っていくのはずっと楽になります。
ひとりに話した時点で、もうひとりで抱えてはいません。
正しい相手を選ぶことより、まず声に出すことのほうが先です。
- 事実:起きたことを短く。解釈や気持ちは後に回す。
- 困り:困っていることを一つだけに絞って言う。
- お願い:見てほしい、代わってほしい、など具体的に頼む。
前置きは、五分いいですか、の一言で足ります。
解決しなくてもかまいません。
言葉にしただけで、その日の重さは変わります。
ポイント3:やめることを、先に決める
三つ目は、増える前に減らしておくことです。
二学期は、行事も評価も加わって仕事が増えます。
減らすのは、あきらめではなく順番をつける作業です。
やめることを、先に決めるのポイントを紹介します
二学期は、足し算だけでは回らない
二学期は、一学期と同じやり方では回りません。
行事の準備が入り、成績の資料づくりが始まり、面談の日程調整も重なります。
それでも一学期にやっていたことをそのまま続けようとすると、どこかであふれます。
あふれた結果として落ちるのは、たいてい子どもと話す時間です。
いちばん大事なところが、いちばん先に削られてしまうんです。
しかも削ったことに、自分ではしばらく気づきません。
気づくのは、教室が静かになってからです。
だから、増えることが分かっている時期は、増える前に減らす場所を決めておきます。
減らすのは、あきらめではありません。
順番をつける作業です。
毎日やることを、三つに絞る
私が二学期に決めていたのは、毎日やることを三つだけにする、というものでした。
朝、全員の顔を見ること。
帰りに、一人だけ声に出してほめること。
気になった子のことを、一行だけ記録すること。
この三つは、何があっても続けます。
どれも五分あればできるものにしておくのが、続けるこつです。
学級通信も掲示の入れ替えも大切ですが、週に一度に移しました。
移すときは曜日まで決めておくと、後回しになりません。
毎日やる欄を三つに絞ると、忙しい日でも今日はできた、と言えます。
できた日が続くことのほうが、量をこなすことよりも学級には効いてきます。
やめたことは、子どもにも先に伝える
減らすときに一つだけ気をつけたいのが、黙ってやめないことです。
毎日書いていた日記のコメントを急に返さなくなると、子どもは見捨てられたと受け取ります。
先生が忙しいから、という理由も、言わないほうがいいです。
伝えるのは、これからの形のほうです。
日記は水曜にまとめて返します、その代わり一人ずつ必ず書きます。
そう先に言っておけば、量が減っても信頼は減りません。
むしろ、約束を守る先生だと受け取られます。
やめ方を伝えることまでが、減らす作業に含まれています。
ここまでやって、はじめて続けられる形になります。
- 朝:全員の顔を見る。名前を呼べたら、なお良い。
- 帰り:一人だけ、声に出してほめる。
- 記録:気になった子のことを、一行だけ書き残す。
決めるのは、九月のはじめのうちです。
忙しくなってからでは、選ぶ余裕がなくなります。
三つ書いて、机に貼っておくだけで足ります。
おわりに
二学期がしんどいのは、あなたの力量が足りないからではありません。
しんどさを、三つに分けて書くこと。
こじれる前に、事実・困り・お願いの順で相談すること。
毎日やることを、三つに絞ること。
どれも、がんばりを増やすのではなく、抱え方を変える手立てです。
全部をそろえようとしなくて大丈夫ですよ。
今週やることは一つだけです。
誰かひとりに、五分いいですか、と声をかけてみてください。
話しやすい先生でかまいませんし、内容も一つだけで十分です。
学級経営がうまい先生とは、ひとりで全部を抱えられる先生のことではありません。
助けを借りながら、来年もこの仕事を続けられる先生のことです。
九月がいちばん重い時期だからこそ、今のうちに抱え方を決めておきましょう。
ご視聴ありがとうございました。
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