児童虐待が疑われる場合の対応方法

2024年10月9日

はじめに

学校で教師が子どもを観察していると、時折「この子は虐待を受けているのではないか？」と心配になる瞬間があります。子どもの身体的な傷や、極端に怯えた態度、精神的に不安定な様子は、虐待の兆候であることがあります。児童虐待は、子どもの心身に長期的な影響を及ぼす重大な問題であり、早急に対処することが不可欠です。

本記事では、児童虐待が疑われる場合に、教師が取るべき適切な対応方法について解説します。虐待の兆候を正しく認識し、子どもの安全を守るために必要な行動を起こすための具体的なアプローチを紹介します。

困った保護者の背景を理解して対応する方法

クリックできる目次

1. 児童虐待の兆候を見逃さない
2. 児童虐待が疑われる場合の対応方法
3. 子どもへの配慮と心理的サポート
参考にした本

1. 児童虐待の兆候を見逃さない

児童虐待は、身体的なものだけでなく、心理的な虐待やネグレクト（育児放棄）も含まれます。教師として、日常の中で虐待の兆候を見逃さないよう、慎重に子どもの様子を観察することが重要です。以下は、虐待が疑われる代表的な兆候です。

① 身体的な傷やあざがある

子どもが頻繁に理由の分からないあざや傷を負っている場合、虐待の可能性を疑う必要があります。特に、顔や腕、背中など、通常ではあまり怪我をしない場所に繰り返し傷がある場合や、保護者が怪我の説明をしようとしない場合は注意が必要です。また、子どもが服を脱ぎたがらない、暑い日でも長袖を着ているなど、身体の傷を隠そうとしている様子が見られることもあります。

② 子どもが極端に怯えている、または過剰に従順である

虐待を受けている子どもは、保護者や大人に対して極端に怯えた態度を取ったり、逆に過度に従順な態度を見せることがあります。虐待を受けている場合、子どもは「怒られないようにしなければ」という強い恐怖心を抱いており、それが行動に現れます。例えば、急にビクッとしたり、些細なことで怯える様子が頻繁に見られる場合は、虐待の兆候かもしれません。

③ 学校での行動が不安定である

虐待を受けている子どもは、学校での行動が不安定になることがよくあります。授業中に集中できない、突然泣き出す、あるいは攻撃的な態度を取るなど、感情の起伏が激しい場合、家庭での虐待が原因で情緒が不安定になっている可能性があります。また、急激に学業成績が落ちたり、友人とのトラブルが増える場合も、注意が必要です。

④ 食事や睡眠の問題が見られる

ネグレクト（育児放棄）の場合、子どもが十分な食事を取れていなかったり、適切な睡眠環境を与えられていないことがあります。学校で空腹を訴える、極端に痩せている、疲れ切っているなど、日常的な生活に支障をきたしている様子が見られる場合、家庭でのケアが行き届いていない可能性があります。

2. 児童虐待が疑われる場合の対応方法

児童虐待が疑われる場合、教師としてはただ見守るだけでなく、具体的な行動を取ることが重要です。以下に、虐待が疑われる際の具体的な対応方法を紹介します。

① 子どもに直接問いかけることは避ける

虐待が疑われる場合、子どもに直接「虐待されているの？」と問いかけるのは避けましょう。子どもは、保護者との関係を悪化させたくないという強い思いを持っており、正直に答えられないことが多いです。また、子どもが保護者から「話したらさらに酷いことをする」と脅されている可能性もあります。そのため、無理に質問せず、日常の行動や態度を注意深く観察することが大切です。

② スクールカウンセラーや上司と相談する

虐待が疑われる場合、まずはスクールカウンセラーや学校の管理職に相談し、状況を共有しましょう。専門的な知識を持ったカウンセラーと協力して、子どもの心のケアや適切な対応について検討することが重要です。教師が一人で対応しようとせず、チームで連携しながら慎重に対応することで、子どもの安全を確保しやすくなります。

③ 児童相談所に通報する

日本では、児童虐待の疑いがある場合、教師を含むすべての国民には「児童虐待防止法」に基づき、児童相談所や福祉機関に通報する義務があります。虐待の兆候が明らかであり、子どもの安全が危ぶまれる場合、ためらわずに児童相談所に連絡しましょう。子どもの命や健康が脅かされている場合、速やかな対応が求められます。

④ 警察や行政との連携を図る

児童虐待が深刻であり、子どもの生命に危険が及んでいると判断された場合、警察や行政機関との連携が不可欠です。特に、子どもが深刻な怪我をしている、家に帰ることが危険だと感じられる場合には、警察に通報して子どもの保護を最優先に考えましょう。緊急時には、学校の管理職や教育委員会と連携し、速やかに行動を起こすことが大切です。

3. 子どもへの配慮と心理的サポート

虐待を受けている子どもは、身体的なケアだけでなく、心理的なサポートも必要です。教師として、子どもの心に寄り添い、安心感を与えることが大切です。

① 安全な環境を提供する

学校は、子どもにとって安心できる場所であるべきです。教師は、子どもが学校で心を休めることができるよう、信頼できる大人として接しましょう。虐待を受けている子どもは、家庭で安心できない状況にあるため、学校での支えが非常に重要です。クラスの環境を整え、子どもが安心して過ごせるような雰囲気作りを心掛けましょう。

② 子どもの話を聞き、感情を受け止める

虐待を受けている子どもは、自分の気持ちを表現することが難しいことがあります。教師としては、無理に話を引き出そうとせず、子どもが話したい時に耳を傾ける姿勢を持つことが大切です。また、子どもが感情を表現できるような場を提供し、絵を描いたり、日記を書くなど、心の中の気持ちを言葉にしやすくするサポートを行いましょう。