
はじめに
二学期に入って、休み時間の教室が部活動ごとに固まっていませんか。
班活動をしても、同じ部の子だけで話が進んでいく。
大会に負けた翌日は、教室全体の空気まで重くなる。
中学校では、めずらしくない景色です。
私も以前は、部活のことは部活で解決しなさい、と言っていました。
教室は教室として、切り分けたかったからです。
けれど子どもにとって、部活と教室は地続きです。
切り分けなさいと言われても、頭の中ではつながったままなんです。
ここで、部活の関係を教室から消そうとすると、たいていうまくいきません。
消そうとするほど、子どもは見えないところに隠すだけだからです。
担任にできるのは、教室の中に部活とは別の関係を、もう一つ用意しておくことのほうです。
この記事では、そのために担任がやることを3つお伝えします。
担任がやる 3つのこと
部活と学級の話というと、顧問の先生とどう折り合いをつけるか、という大人同士の調整の話だと思われがちです。
けれど教室で実際に効いてくるのは、班の顔ぶれや帰りの会の話題といった、担任がその日のうちに動かせるところです。
部活動の中身に手を入れる必要はありません。
教室の側を少しずらすだけで、子どもの立ち位置は変わります。
そしてこの3つは、部活の熱が高い時期をしのぐためだけのものではありません。
居場所が二つある子は、片方でつまずいても立っていられます。
大会に負けた翌日でも、教室が崩れにくくなりますよ。
- その1:教室に出ている線を、見取る:休み時間・班・勝敗の翌日の三か所を、決めつけずに見る。
- その2:部活の外で、つながりを組み直す:班の顔ぶれと帰りの会の話題を、少しだけずらす。
- その3:顧問と、一往復だけつなぐ:叱る前に三十秒、事実だけを渡して判断は預ける。
ポイント1:教室に出ている線を、見取る
一つ目は、動かす前に見ることです。
原因さがしから入ると、あの部が悪い、という話になってしまいます。
まずは、事実を集めるところからです。
教室に出ている線を、見取るのポイントを紹介します
教室の中に、部活の線が引かれている
二学期に入ると、教室の景色が少しずつ変わってきます。
休み時間に集まる顔ぶれが、いつのまにか部活動ごとになっているんです。
同じ部の子は共通の話題が多いので、自然にそうなります。
けれど中学校の部活動には、先輩後輩だけでなく、レギュラーかどうかという上下も生まれます。
その関係が教室にそのまま持ち込まれると、班の中で意見を言えない子が出てきます。
本人たちは、部活の話をしているつもりはありません。
ただ、教室でも同じ立場のままになっているだけです。
まずは、そういう線が引かれていることに、担任が気づいておきたいところです。
見る場所は、休み時間・班・勝敗の翌日
では、どこを見れば分かるのか。
私が見ているのは三か所です。
ひとつ目は、休み時間の机の集まり方。
誰と誰が固まっているかを、五分だけ立って眺めます。
ふたつ目は、班活動のときに黙っている子。
話せないのではなく、同じ班に部活の上の立場の子がいると、口が重くなることがあります。
みっつ目は、大会や試合の翌日の表情です。
勝った日と負けた日で教室の空気が変わるなら、部活の比重がかなり大きいということです。
この三か所を、一週間だけ意識して見てみてください。
原因さがしはしません。事実を集めるだけで十分です。
名簿の横に、部活名を書いてみる
見取ると言っても、記録を取る時間はなかなかありません。
そこで私は、名簿の横に部活名を書くところから始めました。
かかるのは五分です。
書き終えたら、今の班の顔ぶれと見比べてみてください。
同じ部の子が三人以上いる班が、たいてい一つは見つかります。
そこが、教室の中で部活の関係がいちばん濃く出る場所です。
気づいたことは、名簿の余白に一行だけメモしておきます。
この子とこの子は同じ部で先輩後輩、といった短い書き方で構いません。
あとから席替えや班替えをするときに、この一行がそのまま材料になります。
- 休み時間:机の集まり方を、五分だけ立って眺める。
- 班活動:どの子が黙っているか、同じ班に誰がいるかを見る。
- 勝敗の翌日:大会や試合のあと、教室の空気がどう変わるかを見る。
ここまでで、教室のどこに手を入れればいいかが見えてきます。
準備するものは名簿一枚だけです。
今日の放課後から始められますよ。
ポイント2:部活の外で、つながりを組み直す
二つ目は、教室の側を組み直すことです。
部活の関係を断ち切るのではなく、別の線を足していきます。
変えるのは、顔ぶれと話題の二つだけです。
部活の外で、つながりを組み直すのポイントを紹介します
同じ部だけで固まらない顔ぶれにする
線が見えたら、次は組み直しです。
といっても、部活の関係を断ち切るわけではありません。
班や当番の顔ぶれを、少しずらすだけです。
私は、同じ部の子は一つの班に二人まで、と先に決めています。
大事なのは、先に決めておくことです。
班を作ったあとで組み替えると、外されたと感じる子が必ず出ます。
先に条件として出しておけば、誰かを狙った操作にはなりません。
二人までなら、知っている子がいる安心感は残ります。
けれど、部活の話だけで班が回ることはなくなります。
行事の実行委員や係を決めるときも、同じ考え方でそろえておくと安定しますよ。
教室にしかない共通の話題を作る
顔ぶれを変えても、話す中身が部活のままでは同じことが起きます。
そこで、教室にしかない共通の話題を一つ作ります。
私がやっているのは、帰りの会で今日の教室の出来事を一つだけ話すことです。
誰が誰を手伝っていた、掃除の時間にこんな場面があった、という短いものでいい。
これを続けると、部活を知らない子どうしでも共有できる話題が教室にたまっていきます。
学級通信に同じ話を三行だけ書けば、家庭にも届きます。
共通の話題は、放っておいて生まれるものではありません。
担任が毎日一つずつ置いていくと、いつのまにか教室の言葉になっていきます。
部活の成績を、教室の評価に持ち込まない
もう一つ、気をつけたいことがあります。
部活の成績を、教室でほめすぎないことです。
大会で勝った子を教室で称えるのは、悪いことではありません。
けれど、それが毎回続くと、勝った部と勝てない部という線が教室に引かれていきます。
部活に入っていない子や、途中でやめた子は、その場に居場所がなくなります。
だから私は、大会の結果は事実として一度だけ伝えて、そこで止めます。
教室でほめるのは、教室で見えた行動のほうです。
朝の準備を手伝っていた、班の話し合いで意見を引き出していた。
評価の軸を教室側に置いておくと、誰にでも出番が回ってきます。
- 顔ぶれ:同じ部は一つの班に二人まで、と先に条件として出しておく。
- 話題:帰りの会で、教室で起きたことを毎日一つだけ話す。
- 評価:ほめる材料は、部活の成績ではなく教室で見えた行動から選ぶ。
顔ぶれと話題が変わると、教室の会話の中身が入れ替わります。
大がかりな仕組みはいりません。
次の班替えのときに、条件を一つ足すだけで始められますよ。
ポイント3:顧問と、一往復だけつなぐ
三つ目は、大人の側のつなぎ方です。
ここが、教室で出す一言の届き方を決めます。
かかるのは、廊下で三十秒です。
顧問と、一往復だけつなぐのポイントを紹介します
叱る前に、顧問へ三十秒だけ確かめる
三つ目は、顧問の先生とのつなぎ方です。
教室で気になることがあったとき、私は叱る前に一度確かめるようにしています。
授業中に机に伏せている、提出物が急に出なくなった。
教室だけを見ていると、やる気の問題に見えます。
けれど部活の側では、朝練が始まった、レギュラーを外れた、という事情があることがあります。
知らずに叱ると、その子の中では、先生は分かってくれない、で終わってしまいます。
確かめるのにかかる時間は、廊下で三十秒です。
職員室で長い相談をする必要はありません。
この三十秒があるだけで、そのあとの一言の届き方が変わります。
一往復だけ、情報を渡し合う
渡し方は、型を決めておくと迷いません。
教室ではこうでした、部活ではどうですか。
これだけです。
事実を短く伝えて、判断は相手に預けます。
担任が部活の指導について意見を言い始めると、話が長くなり、次から声をかけにくくなります。
逆に、顧問の先生から教室のことを聞かれたときも、事実だけを返します。
一往復で終えるからこそ、忙しい時期でも続きます。
そして、返ってきた話は名簿の余白にメモしておきます。
この積み重ねが、進路の面談や保護者への連絡のときに、そのまま効いてきますよ。
子どもの前で、先生同士を否定しない
最後に、いちばん大事なことをお伝えします。
子どもの前で、顧問の先生を否定しないことです。
子どもは、担任と顧問のどちらが自分の味方かを、けっこう鋭く見ています。
ここで担任が、あの先生は厳しすぎるね、と言ってしまうと、その子は逃げ場を一つ手に入れます。
楽になるように見えて、実はどちらの指導も届かなくなります。
私が言うのは、先生たち、ちゃんと話しているからね、の一言です。
大人同士がつながっていると分かるだけで、子どもは落ち着きます。
そのうえで、教室でできることを一緒に決めていきます。
- 先に確かめる:叱る前に、廊下で三十秒だけ部活の側の事情を聞く。
- 型で渡す:「教室では〜でした。部活ではどうですか」で、判断は預ける。
- 否定しない:子どもの前では「先生たち、話しているからね」で止める。
先生同士がつながっていると、子どもは逃げ道をさがさなくなります。
特別な会議はいりません。
次にすれ違ったときの三十秒からで十分ですよ。
おわりに
部活の人間関係が教室に出てきたとき、必要なのは、その関係を消すことではありません。
教室に出ている線を、見取ること。
部活の外で、つながりを組み直すこと。
顧問の先生と、一往復だけつなぐこと。
この三つは、どれも担任の側だけで決められることです。
明日から全部やろうとしなくて大丈夫ですよ。
まずは名簿の横に、部活名を書いてみてください。
五分で終わります。
そのあと、今の班の顔ぶれと見比べるだけで、手を入れる場所が見つかります。
部活動は、その子にとって大事な世界です。
取り上げる必要はありません。
教室が、部活とは別の顔でいられる場所であればいいんです。
九月の大会シーズンに入る前に、班の顔ぶれだけ見直しておくと、二学期の教室がずいぶん軽くなりますよ。
ご視聴ありがとうございました。
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