
はじめに
二学期が始まって、同じ子に、同じことを、また言っていませんか。
先週も注意した。今週も注意した。
それでも変わらなくて、だんだん声が強くなっていく。
そんな毎日が続くと、担任のほうが先に疲れてしまいます。
しかも、叱るほどにその子と目が合わなくなります。
叱ったあとの教室は、少し重い空気になる。
それが分かっているから、また言うかどうかで迷ってしまう。
あなただけではありませんよ。
ここで多くの先生が、もっと強く言わなければ、と考えます。
けれど、強くするほど届かなくなるのが、叱るという行為のやっかいなところです。
変えるのは強さではなく、叱り方の順番のほうなんです。
この記事では、二学期に指導が届く叱り方の原則を3つお伝えします。
指導が届く 3つの原則
叱り方というと、どう言えば響くか、という言葉選びの話だと思われがちです。
けれど実際に効いてくるのは、どこで、どれくらいの長さで話すか、という設計のほうです。
同じ言葉でも、みんなの前で長く言えば反発が残り、二人のときに短く言えば届きます。
変えるのは言葉ではなく、その周りにあるものです。
そしてこの3つは、叱る回数を増やすための原則ではありません。
むしろ続けるほど、叱らなければならない場面そのものが減っていきます。
教室の空気も、担任の声も、少しずつ軽くなっていきますよ。
- 原則1:その場は、短く終える:ひと呼吸おいて、事実だけを伝え、すぐ授業を前に進める。
- 原則2:話は、二人だけの場所で:本当に必要な話は、まわりの目がないところで短くする。
- 原則3:叱る前に、認めておく:認める言葉を先に貯めておくと、叱る言葉が届くようになる。
ポイント1:その場は、短く終える
一つ目は、その場での対応の長さを変えることです。
言い方を工夫する前に、まず長さを削ります。
その場で決着をつけようとしないでください。
その場は、短く終えるのポイントを紹介します
言い合いになった時点で、教師の負けになる
挑発的な態度を取られると、つい売り言葉に買い言葉で返してしまいます。
やる気がないなら出ていきなさい、と言ってしまったことは、私にもあります。
その場は言い負かしたように見えますが、これは教師の負けなんです。
挑発してくる子が求めているのは、みんなの前で先生と張り合う舞台のほうだからです。
こちらが感情的に反応した瞬間、その子の目的は達成されます。
まわりの子も、先生を本気で怒らせられる、と学んでしまいます。
だから、勝ち負けの舞台には、そもそも上がらないと決めておきます。
売られたけんかを買わないことは、逃げではなく、いちばん強い対応です。
ひと呼吸おいて、事実だけを短く伝える
やることは単純です。
気になる場面を見つけたら、口を開く前に、心の中で一拍おきます。
深呼吸ひとつ。それだけで、感情の反射が止まります。
反応と対応は違います。反応は感情がそのまま出ること、対応はいったん受け止めてから動くことです。
そのうえで伝えるのは、事実だけにします。
それは、やらない約束だったね。
感情も説明も乗せず、短く言い切って、すぐ授業を前に進めてください。
境界線だけを示して流すと、その子の試しは空振りに終わります。
長引かせないことが、そのまま指導になっているんです。
全体への説教が、いちばん効かない
教室がゆるんできたとき、多くの先生が最初に選ぶのが全体への説教です。
けれど、初期の手としては、これがいちばん効きません。
理由は三つあります。
一つ目に、ゆるみを作っているのはたいてい一部なので、まじめにやっている大多数が、自分は関係ないのに、と感じます。
頑張っている子ほど、やる気を失っていきます。
二つ目に、中心にいる子は説教を自分のこととは受け取らず、先生の焦りだけを見抜きます。
三つ目に、説教が増えると、叱られないために動く教室になっていきます。
静かになったように見えて、実は関係が冷えているんです。
- 一拍おく:口を開く前に深呼吸をひとつ入れて、反射を止める。
- 事実だけ:感情も説明も乗せず、「約束だったね」と短く伝える。
- すぐ進める:その場で決着をつけず、授業や活動を前に進める。
ここまでで、教室での言い合いはほとんど起きなくなります。
準備するものは何もありません。
明日の一時間目から、口を開く前の一拍だけで始められますよ。
ポイント2:話は、二人だけの場所で
二つ目は、話す場所を変えることです。
言う内容は同じでも、場所が変わると届き方がまるで違います。
本音は、見ている人がいないところで出てきます。
話は、二人だけの場所でのポイントを紹介します
みんなの前だと、子どもは引けなくなる
同じ注意でも、教室のまん中で言われると、子どもは受け取り方を変えます。
まわりが見ているところで謝れば、負けたことになってしまうからです。
だから、内心では分かっていても、態度だけは強く出さざるをえなくなる。
反抗しているように見える場面の多くは、実はここで起きています。
大人でも、職員室の全員に聞こえる声で指摘されたら、素直にうなずくのは難しいですよね。
その子が守っているのは、正しさではなく、まわりの目の中での立場です。
立場を守らせたまま話を進めるために、場所を変えます。
場所を変えるだけで、同じ言葉が通るようになります。
呼び出しは短く、出口を決めて終える
二人で話すときも、長さは短くしてください。
責める時間を伸ばしても、伝わる量は増えません。
むしろ長く話すほど、その子の中に残るのは内容ではなく、叱られたという気持ちだけになります。
だから、話す前に出口を決めておきます。
今日は何を確かめて終わるのか。
最後は、明日はどこから直してみる、と聞いて、次にやることを一つだけ決めます。
一つに絞るのは、たくさん約束させても実行できないからです。
決まったら、そこで終わりにしてください。
短く終えるほど、次に呼んだときも来てくれるようになります。
決めたら、その日のうちに普段へ戻す
話し終えたあとを、そのままにしないでください。
叱ったあとは、お互いに少し気まずくなります。
その気まずさを解くのは、いつも先生の側からです。
子どもから歩み寄ってくることは、まずありません。
難しいことをする必要はなく、放課後に部活のことを一言聞くだけで十分です。
叱った日のうちに普段の会話へ戻すと、叱られたことは残っても、嫌われたという記憶は残りません。
ここを飛ばすと、次に指導が必要な場面で、話を聞く姿勢そのものが作れなくなります。
叱ることと、関係を切らないことは、同時にやれるんです。
- 場所を変える:教室のまん中ではなく、まわりの目がないところで話す。
- 出口を決める:次にやることを一つだけ決めて、そこで終わりにする。
- その日に戻す:気まずさは先生から解き、普段の会話へ戻す。
場所と長さを変えるだけで、同じ言葉が届くようになります。
叱る内容を考え直す必要はありません。
まずは、呼ぶ場所を決めるところからで大丈夫ですよ。
ポイント3:叱る前に、認めておく
三つ目は、叱る前の時間の使い方です。
ここが、実は叱り方の本体だと私は思っています。
叱る言葉は、単独では届きません。
叱る前に、認めておくのポイントを紹介します
叱る言葉は、認める言葉の貯金の上にしか乗らない
同じ一言でも、届く先生と届かない先生がいます。
違いは言い方ではなく、それまでにどれだけ認めてきたかです。
ふだんまったく声をかけていない先生に叱られても、子どもの中には反発しか残りません。
この先生はちゃんと見てくれている、という前提があるから、いざというときの一言が入っていくんです。
だから私は、気になる時期こそ、意識してプラスの声かけを増やします。
順番が逆になっていないかを、確かめてみてください。
認める言葉を貯めることは、叱るための準備でもあります。
叱り方に悩んだときほど、叱らない時間を見直すほうが早いんです。
名前を呼んで、事実をそのまま返す
認める、といっても、ほめちぎる必要はありません。
えらいね、すごいね、では、何がよかったのか伝わらないからです。
やるのは、見えた事実をそのまま返すことです。
今日のあいさつ、いい声だったね。
さっき、さっと動いてくれて助かった。
これだけで十分に届きます。
そのとき、必ず名前を呼んでください。
名前があるだけで、自分に向けられた言葉になります。
掃除や係の小さな仕事は、いちばん見つけやすい材料です。
認められていない子ほど、よくない行動でしか注目を得られなくなっていきます。
先に見つけて返しておくことが、いちばん静かな予防になります。
怒らないことと、許すことは違う
ここまで読んで、見過ごすということかな、と感じた方もいるかもしれません。
そうではありません。
線は、必ず引きます。
小さな逸脱を放置すると、境界線はじりじり後ろへ下がっていくからです。
ただし、引き方が違います。
感情的にではなく、静かに、はっきりと。
怒鳴らないけれど、やってはいけないことは、やってはいけないと伝える。
穏やかで、しかしぶれない。
この一貫性が、子どもにとっての安心になります。
次に何が起きるか予測できる大人は、それだけで教室を落ち着かせる力を持っているんです。
- 事実を返す:「えらいね」ではなく、見えたことをそのまま伝える。
- 名前を呼ぶ:名前があるだけで、自分に向けられた言葉になる。
- 線は引く:怒鳴らないが、いけないことははっきり伝える。
認める言葉が増えるほど、叱る言葉は短くて済むようになります。
強く言わなくても伝わる関係が、先にできているからです。
遠回りに見えて、いちばん近い道ですよ。
おわりに
何度叱っても変わらないと感じるとき、必要なのは、もっと強い言葉ではありません。
その場を短く終えること。
話す場所を変えること。
叱る前に、認める言葉を貯めておくこと。
この三つは、どれも担任の側で決められることです。
明日から全部やろうとしなくて大丈夫ですよ。
まずは、口を開く前に一拍おいてみてください。
次の日に、話す場所を変えることを足す。
認める言葉を増やすのは、今日からでも始められます。
叱る技術を磨くほど、叱る回数は増えていきます。
けれど、この三つを続けると、叱らなければならない場面のほうが減っていきます。
二学期は長い学期です。
担任の声が小さくなっていく学級を、これから作っていけますよ。
ご視聴ありがとうございました。
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