
はじめに
技術の授業で、いよいよ木工の制作に入る。
そんなとき、いきなりのこぎりを握りたくなる気持ち、よくわかりますよね。
でも、ものづくりで一番大事なのは、実は作り始める前の「設計」なんです。
みなさんの身の回りにある机も、棚も、スマホも、すべて誰かが考えて設計したものです。
同じ「本立て」でも、お店によって形が違いますよね。
あの違いは、設計者が「何を大事にするか」を変えているから生まれるんですよ。
この記事では、中学1年生の技術で学ぶ「ものづくりの設計」を、できるだけやさしく整理していきます。
キーワードは「よい製品の4条件WSEE」と「トレードオフ」。
授業の予習復習にも、若手の先生の指導の組み立てにも役立つ内容ですよ。
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なぜ「設計」がそんなに大事なのか
設計をせずに、いきなり作り始めるとどうなるでしょうか。
多くの場合、途中で困ってしまうんです。
部品の寸法が合わなかったり、組み立てたらグラグラしたり。
しかも木は、一度切ってしまうと元には戻せません。
デジタルの作業と違って、Ctrlキーで元に戻すことはできないんですよね。
だからこそ、作る前の計画が命になります。
設計とは、失敗を作る前に防いで、むだな材料も減らしてくれる工程なんです。
「考えてから作る」。
この順番を守るだけで、完成度はぐっと上がりますよ。
ポイント1:よい製品の4条件「WSEE」
では、そもそも「よい製品」とはどんなものでしょうか。
これを考えるときに便利なのが、WSEEという4つの視点です。
W(願い)・S(安全)・E(経済)・E(環境)、この4つでチェックするんです。
頭文字を並べただけなので、覚えやすいですよね。
よい製品の4条件「WSEE」を紹介します
「使う人の願い」から出発する
最初のWはウォンツ、つまり「願い」です。
使う人が何を求めているのかを、一番に考えます。
本立てなら「本を立てたい」、ふみ台なら「高い所に手を届かせたい」。
この願いがはっきりしていないと、何のための製品か分からなくなってしまうんです。
安全とお金と環境も忘れない
次のS(安全)は、使う人がけがをしないかという視点です。
とがった角はないか、しっかり固定できているか。
そしてE(経済)は材料費にむだがないか、E(環境)は作って使って捨てるまで環境にやさしいか。
願いだけでなく、この3つも合わせて見ることが大切なんですよ。
- W(願い):使う人が何を求めているか。製品づくりの出発点になる一番大事な視点です。
- S(安全):使う人がけがをしないか。とがった角や不安定な構造がないかを確かめます。
- E(経済):材料費やむだはないか。限られた予算でつくれるかというお金の視点です。
- E(環境):作って使って捨てるまで、環境への負担が少ないかを考えます。
たとえば願いだけを優先すると、大きくて豪華だけれど、危なくて高い製品になってしまいます。
反対に4つのバランスを取ると、安全で手ごろな、ちょうどよい製品に仕上がるんです。
この4つの目を持つだけで、製品を見る目がぐっと変わりますよ。
ポイント2:全部はかなえられない「トレードオフ」
ここで一つ、大事な現実があります。
WSEEの4つは、同時に全部をかなえるのが難しいんです。
あちらを立てればこちらが立たない、この関係をトレードオフと言います。
設計者がいつも向き合っている、ものづくりの宿命のようなものですね。
トレードオフのポイントを紹介します
「あちらを立てればこちらが立たず」
たとえば本立ての収納量を増やそうとすると、どうなるでしょうか。
板の数が増えて構造が複雑になり、加工が難しくなってしまいます。
強くしようと板を厚くすれば、材料費も重さも増えていく。
このように、一つを良くすると別のどこかが犠牲になるんです。
「最適化」という考え方
では、どうすればいいのか。
答えは「全部100点」ではなく「全体でいちばんバランスのよい点」を探すことです。
これを技術科では「最適化」と呼びます。
正解は一つではありません。
何を優先するかを自分で決めて、納得できる妥協点を見つける力こそが、設計者の腕の見せどころなんですよ。
- 収納を増やす→加工が難しい:棚板が増えるほど構造が複雑になり、組み立ての手間も増えます。
- 丈夫にする→重く高くなる:板を厚くすれば強くなりますが、材料費と重さが増えてしまいます。
- 安くする→品質が下がる:材料を減らしてコストを下げると、強度や見た目に影響が出やすくなります。
ポイント3:設計は「問題解決のサイクル」の一部
設計は、それだけで完結するものではありません。
ものづくり全体の流れの中の、大切な一段階なんです。
技術科では「発見→構想→製作→評価」という流れを、ぐるぐる繰り返して進みます。
これは木工でも、情報のプログラミングでも、まったく同じなんですよ。
問題解決のサイクルのポイントを紹介します
アイデアを「図」にしていく
流れの中で、設計にあたるのが「構想」と「設計」の段階です。
まず構想で、頭の中のアイデアをスケッチにして紙に描き出します。
次に設計で、寸法まで決めた図面を作ります。
等角図や正投影図といった図の描き方は、別の動画でくわしく解説していますよ。
作って終わりにしない
そして忘れてはいけないのが、最後の「評価」です。
できあがった物を振り返り、次はどう改善できるかを考えます。
この「振り返り」が次の「発見」につながって、サイクルが回っていくんですね。
作って終わりではなく、次に活かすところまでがものづくりなんです。
- 発見と課題設定:身の回りの不便を見つけ、何を解決したいかをはっきり決めます。
- 構想と設計:アイデアスケッチを描き、寸法を決めた製作図に落とし込みます。
- 製作:安全に気をつけながら、計画どおりに切ったり組み立てたりします。
- 評価と改善:完成品を振り返り、次に活かせる改善点を見つけます。
本立てを「設計」してみよう
最後に、学んだことを使って考えてみましょう。
条件はこうです。
「本を10冊置きたい、でも予算は限られていて、安全であることも欠かせない」。
あなたが設計者なら、WSEEのどれをどれだけ優先しますか。
安全を一番にする人もいれば、経済を大事にする人もいるでしょう。
友だちと比べてみると、優先順位は人それぞれだと気づくはずです。
大事なのは、正解を一つに決めず、自分なりの最適な答えを見つけることなんです。
こうして考える経験が、みなさんを「使う側」から「創る側」へと近づけてくれますよ。
おわりに
今日のポイントを振り返りましょう。
設計は作る前の「命綱」であること。
よい製品はWSEEの4つの視点で考えること。
そして、全部はかなえられないトレードオフの中で、最適なバランスを探すこと。
この3つを意識するだけで、ものづくりの見方が大きく変わりますよ。
ご視聴ありがとうございました。
この記事の内容を動画でも解説しています。
ぜひご覧ください。
中学技術1年【ものづくりの設計】「よい製品」の条件WSEEとトレードオフをわかりやすく解説








